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「三井、なんかいいことあった?」

突然かけられた言葉にどっか遠くへ飛んでいた意識がバチっと脳へと戻った。

「え、何が?」

ぱちぱちと数回瞬きをして、目の前の男を見つめる。
同じ学科でよく一緒にいる友達だ。

「お前なんか嬉しそうだよ、すごく。」

「そうか?」

意識しているつもりはない。
いつもと何も変わらないと本人的には思っている。

「朝からニヤニヤしてんだよ、気持ちワリィよな。」

そう言ってケラケラ笑うのは隣にいたトシキだ。
気持ち悪いとは失礼な…と無言でトシキを睨みつける。

「いつもは一限なんて機嫌悪くて最悪なのに。」

「ほんとだよなー。…さては女でもできましたか、三井クン?」

目の前の友達はグッと顔を近づけて意地の悪い笑顔を浮かべた。

「ンなことねーよ。別に今、女とかいらねーし。」

「これだからイケメンはやだよな…まぁそれはトシキもだけど。」

急に怒りの矛先を向けられたトシキは声を上げて笑っていた。
その顔を真横で見つめる。
自分で言うのもなんだけど、どうやら俺はイケメンの部類らしい。そしてトシキもきっとその枠に入るだろう。
しかし俺とはまたタイプが違って、切れ長の細い目で韓流スターにいそうな顔立ちをしている。
スタイルも抜群で色白なためよくモテるものの、女を作る気はないらしい。

「お前らは一生合コンに誘わん。じゃ、俺もう今日は帰るから。」

「おー、またな。」

片手を上げて挨拶をすると、トシキも立ち上がった。

「俺も今日は帰るわ。」

「え、トシキ授業は?」

そう問いかけると満面の笑みが返ってきた。

「代返お願いしまーす。」

「ったく…」

笑顔でひらひらと手を振るトシキが教室から出るのとほぼ同時に次の授業の教授が入ってきた。

(一人じゃつまんねーな。)

これは寝るしかないだろうと開始一分もしないうちに寝る体勢に入る。
しかしなかなか眠気は訪れる気配がしなかった。

昨晩はよく眠れたのか眠れなかったのか分からない。
むしろ昨日の出来事の全てが未だによく分からない。
全部夢だったんじゃないかと今でも頭の片隅で思っている。
今思い返せば信じられないことばかりだ。

(今頃宮城は何してんだろーな。)

頬杖をつきながらぼんやりそんなことを考える。
すると次の瞬間、自分の目の前にパッと影が落ちた。


「呼んだ?」


「え!?」

突然の宮城の登場に思わず大声を上げると、教室中の視線がこちらに向けられた。
ふざけんじゃねーよ、バカヤロウ!と心の中で暴言を吐きまくる。
このままここにはいられそうもないことを悟り、電話がかかってきたかのような素振りでケータイ片手に教室を後にした。



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