あけましておめでとうございます。世間はこんなに新年の喜びで色めき立っているっていうのに。

「何で新年早々こうなの?」

呆れたことに私が今お邪魔している万事屋銀ちゃんの主、坂田銀時は、年末にこじらせた風邪を翌年にまで持ち越してしまったのだ。

「馬鹿は風邪ひかないっていうよね」
「お前銀さんのこと馬鹿だと思ってたの?…そいつぁ勘違いだ」
「無駄にかっこつけても全然かっこよくねーよ病人」

正月特番ばかりのテレビと、燃費のいい電気ストーブ1台。新八と神楽ちゃんと定春はお妙ちゃんと一緒に初詣に行っている。8畳の寝室に敷かれた布団に、マスクして氷枕ひいて体温計くわえてる銀髪モジャ。酔っ払いみたいに顔ほんのり赤くして。現在の奴の温度は37度8分だ。「結構辛いんだよーコレ。足寒いのに頭あっついもん」「はいはい、たかが風邪くらいであんま重病ぶんない。」

私は銀さんの口から体温計を取り上げて表示されている温度を見る。

「あ、8度2分…」
「上がってるしー!」

布団をがばっと被り直して叫ぶ銀さん。

「いい大人が…めずらしいね、こんな高いの」私はため息をつきながらそう言って、新しい氷枕を取りに行こうと立ち上がる。はずだった私の身体は、動かなかった。

「………」

毛布と掛け布団の下から出た銀さんが、私の腰を掴んでいたから。

「何してんの?」
「行くなよ」
「一々大袈裟だなー、氷枕取りに行くだけだよ」

言いながらどんどん腰に巻き付けられてく銀さんの腕。「ちょ、」そして気づけばぐいぐい布団へ引き寄せられていく。「やめやめ!なしなし!」「いーから」「いくない!」後退させられる全身を前進させようと必死にもがくのに、僅かな抵抗のため前に伸ばした腕さえもがしっと掴まれてしまい、やばいって頭の中が叫んだから、ばっと銀さんの方へ振り向いた。そしたら、やっぱりいつものニヤケ面がそこにはあって。

「………っ」

その間も私の身体は引きずられて、いつの間にか銀さんの布団の中だ。

「捕獲ー♪」背中に銀さんの体温。いつもより熱い。ぬるくなった氷枕が少しだけ頭に触れた。「熱あるんだから大人しく寝てなきゃだめだよ」「大人しく?無理ー」「じゃー特別に糖分買ってきてあげるからさ。何がいい?あ、冷蔵庫にプリンあったよね」「いーっていらねって。今お前しか欲しくねーもん」「………」やばい、今のキタ。「あ、でも3日に大江戸ストア開くじゃん、そしたらいちご牛乳買ってきて。もうないから」「それまでに治して自分で行けっ」「あらやだひどい子ー!」「わっ」銀さんが頭を動かしたから細い銀髪が首筋にふわりと触れた。くすぐったくてつい身体をよじる。

「つーかね」

急に。
銀さんの声色が変わった。

「やーっと新八も神楽も定春も、下のババアたちもいなくなったんだから」
「え、ちょっ…」

銀さんは私の身体の向きをぐいっと動かして、仰向けにさせた。自分はその上に跨がって、その上にがばっと布団をかけ直した。真っ暗になる視界。

やばい。

「うつすぜ、風邪」

暗闇の中耳元で吐息とともにそんな声。

「……っ!」

途端に始まる、重なる。絡む。そう、銀さんのこれは、私にはだめなんだ。
この人はどうしてこんなときだけ、いつもみたいじゃなくなるのかって。

「……ん、ふっ…」

角度を変えて。だめだ、くらくらする。
おかしくなる。

「…っは」

口唇が離れて、どっちのかわかんない銀糸が引いて、交じる吐息。銀さんが笑っているのがわかる。悔しい。いつもこうだ。

「マジでうつる、こんなの」

鼻に、額に口唇を降らせる銀さんに、口を尖らせてそんなことを言う。すると銀さんはふっと笑ってこつんと私と額どうしをくっつけた。

「いーじゃんいーじゃん銀さんの風邪菌だぞ、ありがたく受け取れよ。さっちゃんだったら鼻血吹いて欲しがるよ」
「じゃあさっちゃんにあげてきなよ」
「いやー銀さんの風邪ウイルスはお前専用なんで〜。すんませんね〜なんか」
「いーっていらねって。…今銀さんしか欲しくないもん」
「おま…ッ」

見えたかどうかしらないけど、べっと舌を出してやる。私なりの小さな仕返し。
すると銀さんはチッと舌打ちしてまた私にちゅっとキスをした。

「こんの野郎ォォ」
「何でしょう」
「今年も全力で大っ好きです!」
「アホか。アホの坂田か」

まあ、何はともあれ。

「「今年も宜しくお願いします。」」










ジャジー・ミケ・ロック!


「大江戸マート」を「大江戸ストア」に直したのは、マートはコンビニでストアはスーパーだからです!当時から気になってたんだけど直す暇がなかった…
20081219
20100101
※2009年の年賀状企画にて50名の方に送らせて頂いたペーパーの大幅加筆修正版です(゚ω゚)





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