ぜってぇおかしい。
何だって今、氷帝学園中等部男子テニス部の次代を担うこの俺日吉若が、跡部部長主催の"バレキス2010年世代交代パーティー"にメインで出席してるんだ…!

『んんーっ…寂しいけどエクスタシー!引き継ぎや!

跡部ッキンガム宮殿の冠婚葬祭用広間に呼ばれた歴代バレキス経験者+ギャラリー。ステージ上では2009年のバレキス担当、四天宝寺中の白石さんが、自分のバレキスを高らかに歌い上げたあと、悩ましげな表情でそんなことを言って髪をかきあげる。

「なぁんかお前さんとこの俺様部長と同じ匂いしとるぜよ。プリッ」
「………」

そして何故かギャラリーから隔離されたステージ前アリーナ席、俺の隣には立海の仁王さんがいて、さっきからことあるごとにプリプリ話し掛けてくる。俺は返事しないけど。
歴代バレキス担当が全員自分のバレキスを歌い終わった。すると跡部さんが白石さんからマイクを受け取り、いつものようにビシッと人差し指を高々掲げて言い放つ。

『つーわけで、2005年俺様から始まったバレキスもとうとう5年目。今年の担当は氷帝の次代を背負って立つ、日吉若に決定した!』

ざわめく会場。

「ほーう…」
「………、……………え?」

一瞬意味がわからなくて硬直。

「今年はお前さんらしいナリ。まっ、せいぜい頑張りんしゃい」
「ぇ、え!?俺!?何で俺!?!?」

慌ててガタンと椅子から立ち上がって部長を見ると、

『そんでもって今年は5周年記念!特別に真田の要望で仁王も担当が決定したぜ!』

「ぁあ゙!?!?!?」

仁王さんが隣で焦ったように立ち上がった。

『あー、よく聞け仁王!』

立海の真田さんが至極真面目な顔して、跡部さんからマイクを奪い取って言った。

『バレキスはアルバム収録も数えて、今まで氷帝3人、立海1人、比嘉1人、青学1人、四天宝寺1人が担当している!しかし今回で氷帝4人と圧倒的に差をつけられてしまうのだ!だから今年のバレキスでお前のバレキスが売れれば、来年はまた立海に順が回ってくるかもしれん!』
「ほたえなや真田!じゃったら先に赤也か幸村にでもやらせんしゃいよ!どう考えてもあいつらのが適任じゃきに!」
『いや、幸村は嫌なんだそうだ』
「はあ?」
『なんでも、「たとえ死んでもあのだっさいボーダーパーカーに、だっさいポーズしてジャケットなんて飾りたくないな」だそうだ』
「それ全力で俺らの台詞じゃ!!」

珍しく詐欺師のポーカーフェイスが崩れている。コレは見物だ!肩で息をする仁王さんを横目で見て、俺は密かに今こそ下剋上のチャンス…!と思った。
そして俺はニヤリと笑い、どよめくギャラリーを背に右手を挙げて跡部さんと目を合わせた。

「部長」
「あーん?反対意見は認めねぇぞ」
「いえ、寧ろ逆です。俺今年のバレキスやります」

ええっ!?と会場中がざわめいた。まあ当たり前だな…普段の俺じゃありえないからな。
跡部さんは話のわかる人だ。俺の顔を見詰めたあと、いつもみたいに鼻で笑って、「よし、決まりだな。」と腕を組んだ。

「…おまん、どーいうつもりぜよ」
「それをあなたに言う義務はありませんよ」
「………」

仁王さんの言葉をさくっと切って、部長に呼ばれるままステージに上がり、騒がしい会場の中、白石さんからデカイ薔薇の花束とともに『俺らと一緒に、歴史築き上げてこや』とシチュエーションさえなければホロッときそうなコメントを貰った。まあ、この人が残念なイケメンであることくらいテニス界では周知の事実だ。

「ありがとうございます。頑張ります」

下剋上を、と心の中で呟いたとき。

「なーるほどのう…」

ステージ下で聞き慣れた詐欺師の声。

「何ですか?」
「いや。おまん2年のくせによーやるの。気に入った」

仁王さんを睨むと彼はニヤッと笑って、ゆっくり階段をのぼりステージ上へ上がる。
俺の隣に並び、「しゃーないぜよ、今回は真田に付き合うナリ」と言って両手を制服のズボンのポケットに突っ込んだ。
そして横目で俺を捉え、

「おまんだけには負けんぜよ」

そう、低く、呟いた。

「………」
「プピーナ♪」

前では白石さんが『せやったら仁王のぶんも花束贈呈したるからな!』とか言って、裏方からまたひとつデカイ薔薇の花束が現れる。ん、なんか仁王さんて地味に薔薇が似合う気がする。

「………」

ていうかこの下剋上、無謀過ぎるにも程があるんじゃ………!?!?!?










どうなる日吉の下剋上人生!笑
20100215




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