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   誰にでも、醜い性癖の一つや二つはあるだろう。
 いかにカマトトぶった淑女であろうと、清潔感な紳士であろうと、所詮上辺だけだ。
 間違いなくそういう側面を秘めている――この事に関しては、断言できる。

  実のところ、この行為において最も重要なのは、視覚的な刺激である。
 大抵の男にとって、扱かれる方がよほど効果があるというものだ。
 舐められることに対しては、どちらかと言えば鈍感な方だと思う。
 
  だが口は、生きるために食べるときに機能する大事な部位だ。
 言わば聖域ともとれるソコに、温かく包まれるとき、ほの暗い支配欲が満たされる。

  かくいう私は、音也に舐められることが好きだった。
 
  今まさに、音也の舌が別の生き物のように私の男根を舐めている。
 張った筋をなぞり、括れの敏感な箇所をいたぶっている。
  まだ荒い所作はあるが、初めて行ったときから、音也は格段にうまくなった。

  股間に顔を埋められ、熱く猛ったモノを慰める音也の没頭っぷりは、堪らない。
 表情も、男っぽさを備えて、かつ淫靡なのだ。
 どこのカメラフィルムにも収められていない、一十木音也。

 「なに、考えごとしてるの」

  音也は私の亀頭をねぶりながら、片手で玉袋を転がした。
 紛れもない男性の急所を弄られると、危機感を抱く傍ら、スリルを味わえる。

 「何でもありません」
 「うそ」
 「本当です」
 
  喉の奥まで咥えながら、音也が「ふーん」と言った。
 その振動が、陰茎に伝わり、生温かさや擽ったさに、己の先端が更に湿めった。

 「すげー濡れてきたよ」
 
  ちゅ、っと鈴口を時折吸い上げられ、一気に射精感が高まる。
 後孔がひくついて、早く触れて欲しいと言っているみたいだった。

 「ずっと処理してませんでしたからね」
 「やっぱり」
 「此処のところ忙しくて」
 「……そっか」

  聞かれたときは答えないでいた事を、ついに己から言い出してしまった。
 でも、音也は笑うでも、素っ気なくでもなく、褒めてくれるみたいに手にキスをくれた。

 普段の音也は、こういうことをいかにも面白がりそうなのに。
 不思議といつも追及して来なかった。

  暫くの口での愛撫で、もうこれ以上にないくらい下腹部の膨張は切迫した。 
 ここまで来ると、思考が途切れとぎれで理性を保てず、怪しくなってくる。

 「辛そうだね、一回出そうか」

  返事の代わりに私が頷くと、音也は口を離して身体を起こした。
 そして、私の股を抑えて、でんぐり返しをさせて根元から掴み直した。
 そこから、縦横無尽に陰茎が扱かれていく。

  亀頭を覆い隠す位、皮が持ち上げられて、括れが擦れるともう、堪らなかった。
 足先を立ち上げられずに居られないし、太腿が勝手に震えてくる。
 刺激は与え続けられると、到達した瞬間の解放感を求めて辛いものがある。
 早く、はやく――と焦る気持ちで音也を見つめると、微笑み返された。

  音也は、私を先に楽にしようと動いてくれている。
 その優しさにいつも甘えてしまって、でも心地良くて、止められない。

  脳みそに酸素が足りなくなって、肺に深く吸い込んでは吐き、私はぜぇぜぇと息をした。
 ふいに、下腹部で大きく脈が打った。
 掴んでいる音也も悟ったのだろう、ストロークを緩めずに、一気に畳み込む様に速度を上げた。
  
 「あっ、おとっ……い、イきそう、っ」 

  音也は私の先端を、親指の爪先で割入り、溢れ出る汁を柔い箇所へ塗りたくっている。
 そこに爪が擦れると、意識が分断されていくみたいに、甘い電流が流れていった。

 「いいよ、いつでもイッて」

  いつのまにか音也が私の顔の真横に来ていた。
 耳朶を甘噛みされ、囁かれ、幸せに浸る間もなく快楽の波が脳みそに押し寄せた。

 「く、うっ……んっ!」
 
  鈴口から何度かに分けた吐精だった。
 全身の筋肉が張り詰め、痙攣している。
 というか、絶頂に達したと言うのに、断続的に白濁が溢れて腹部を汚していく。

 「あっ、えっ? うそ……とまらな……」

  恥ずかしい光景に、思わず泣きそうな声をあげる私に、音也はキスをくれる。

 「大丈夫。ね、トキヤ。ゆっくり息して?」
 「は、はい……」

  耳、頬、鼻のあたり、そして唇と順に口付けてくれた。
 その間も、腰がびくびくと跳ねていたが、音也のお陰で気が紛れた。
 キスが落とされるのと合わせて、呼吸を繰り返していた。
 
 「はぁ……は、すみません……」

  そう口に出来た頃には、恥ずかしさで頭が沸騰しそうだった。
 複数回に分けて達することは今までにあっても、今回は嫌に長かった。

 「大丈夫? ちょっとストレス溜め過ぎだよ」

  音也が腰を引き寄せて、尾てい骨のあたりを撫でてくれている。

 「だいじょうぶです、あの……音也の、」
 「んー……そりゃシたいけど、ちょっと休憩入れてからにしよう」

  あてられた額の湿っぽさから、私が尋常じゃなく汗をかいていたのがわかった。 
 今ほど失態を見せたばかりで、ぐうの音も出なかった。

  音也は後ろ手でベッドのサイドテーブルを探り、ペットボトルを掴んだ。
 器用にも歯でキャップを抑えて、回して取っている。
 一口水を含むと、私にも一口飲ませてくれた。  




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