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 偶然会った友千香と、一緒にショッピングへ行くことになった。

 アイドルとして、歌も演技も完璧なものを目指している友千香の話は、刺激を受けることも多かった。

 特に、一人で最初から売り出している苦労もあるみたい。でも、めちゃくちゃ頑張ってるんだって。すごいな。

 友千香とのトークはいつも、テンポがよくて、それでいて楽しいのは、学園の頃もだったけれど。

 今あって、さらに会話上手になっている気がした。

 授業では、俺も友千香も、『バラエティに向いてる』って、りんちゃんに評価を貰ったくらいだから、やっぱりそうなのかも?


 渋谷の東急百貨店につくと、ホワイトデーの特別イベントブースへ向かう。

 友千香はおしゃべりをしながら、手元にあったブーケを見せてくれた。
 
 そのブーケは、白とピンクのバラで作られた、プリザーブドフラワーでできていた。

 トキヤなら、飾って大事にしてくれそうだけれど、あげるのに気に入った色合いのものがなかった。

 化粧品コーナーで、売れ筋商品のヌーディーリップを見掛けた。


 「ねえ。神宮寺さんのCM観た? 無防備なリップでキスをしよう、ってコンセプトのやつ」


 そういえば、レンから協賛で、特別に貰ったこれを一つ譲って貰ったっけ。

 それで、その日のうちに、確かトキヤにあげたんだ。

 いつのまにか少し離れて歩いていた友千香が、飾られたテディベアを持ち上げている。

 テディベアの黒い目は大きく、きらりとしていた。

 
 「お返しって、難しいよね。ほんの気持ちなんだけれどさ」


 一日中、付き合ってもらった友千香に、エキナカの居酒屋で夕飯を奢った。



 木曜日。

 昨日帰りに買った雑誌を読みながら、午後に入るスタジオへ向かう。

 駅で捕まえたタクシーに行き先を告げて、窓の外を見ていた。

 背の高いビル、行きかう人……でかでかとした電光掲示板を眺める。

 ふと、車内のカーステレオから流れる曲に、七海を思い出して、メールを送った。


 『元気? ちょっと相談したいことがあるんだけれど、時間のあるとき、電話してもいいかな』

 
 七海からの返信は、ほんの5分ほどしてからだった。

 OKを貰えたことを確認すると、さっそく電話をかける。

 2コールを鳴らし切らないうちに、七海は出た。


 『もしもし』


 七海の声は、心なしかいつもより、こわごわとしている。

 よく聞けば、カミュ先輩と一緒に居るらしい。

 先輩との打ち合わせを邪魔するのもなんだし、俺が慌てて電話を切ろうとしたら、引きとめられた。

 カミュ先輩の声が遠くで聞こえて、ちょっとビックリしたけれど、それならと手短に済ますことに。


 七海には率直に、ホワイトデーのお返しで何を喜ぶかを聞いた。

 七海は、少しだけ考えたあと、こう言った。


 『わたしは贈ったものを受け取って貰えて、喜んで貰えたら十分なんです。けれど、心をこめて選んでくれたお返しを貰えたなら、それで幸せすぎるくらいだと思います』  






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