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 連結席にありつけた二人が並んで腰掛けると、男同士の肩幅で、少しだけ肩が触れ合うくらいの狭さだ。
 
 後方に続いて乗り込む客で席が埋まり、立ち客も出てきたかと思うと、バス車内はぎゅうぎゅう詰めに満たされた。

 いよいよエンジン音が鳴り渡り、震えと同時に車内アナウンスが流れる。


 『コンベンションセンターまで15分ほどで着きます、車内安全のため、停車したからの移動をお願いします。まもなく発車……』
 

 外にいる誘導スタッフが、合図の笛をピーッと鳴らすのが響いて、横揺れをしてからバスが前進した。


 トキヤは、窓側に座った音也の横顔と、その外の景色を眺めた。

 電工掲示板には、新潟6℃、東京9℃と本日の気温が表示されている。

 なるほど、暖かな日当たりの割りには、通りで寒いわけだと納得した。

 出発前に、ホテルのラウンジで新聞の気象情報をチェックしていたものの、改めて数字を見ると身震いしてしまう。

 それと同時に、東京に比べれば多湿な土地柄と合わさって造られたという、新潟の育てた日本酒が楽しみになる。

 ちょっとした笑いを口の端に浮かべていると、前方に向き直った音也が気づいて不思議そうな顔をしたので、トキヤは咳き込んだ。


 走ってたバスが停車し、再びアナウンスが流れた。


 『ご利用ありがとうございます。ただいまコンベンションセンター前に到着です。乗車料は210円となります――』


 立ち客が続々と支払いを済ませていくのを待っていると、音也がこっそりと耳打ちしてきた。


 「意外に若い人もいるんだね」


 音也の視線の先には、楽しそうにお喋りしている女性集団が居た。

 集団でありながら、かたや暖かそうなコートを羽織っていたり、マフラーを巻いただけのニット姿であったり、私服にはばらつきがある。

 東京で見る、精錬されたコーディネートの女性とは一味違う、しかしどこかあどけない女性たち。
 
 皆が、肌が瑞々しい張りと艶だ、とトキヤは思った。

 雪深い地方の女性は、全国的に見て日照時間が少ないせいか、やはり色白な人が多いような気がした。

 加えて、冬季はこの寒さで室内にこもりがちになることで、紫外線を受けにくいのかも知れない。

 
 トキヤが思考をめぐらせながら、黙って観察していたのを、音也は投げかけへの肯定と取って続けた。

 
 「日本酒のイベントっていうから俺、てっきり年配の方ばかりかと思った」

 「ん? まあ、……馴染みがありますからね」

 「俺達みたいに他県から来てる人も居そうだなぁ」

 「好きな方には堪らないでしょうね。酒造が蔵元から持ってくる限定品も売り出すそうですから」


 バス車内がはけてきたところで、二人はそれぞれ支払いを済ませて、下車をした。  






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