音也が包装したリボンをゆっくり解くと、蓋を開けた。
赤いハート型のチョコレートが顔を出す。
その瞬間、音也は目を輝かせ、ハートチョコレートをまるで壊れ物を扱うようにつまんで眺めていた。
「うわぁ……可愛い。きらきらしてるし、ハートの形がすごく綺麗」
「でしょう?」
「食べちゃうのが、勿体無くなっちゃうね」
「だから、貴方に、と思ったんです」
「……俺に?」
聞き返し、目を見開いてぼんやりしているその頬に手を伸ばす。
「ええ。貴方を見ていると、心臓が早鐘を打つので……私の心を贈ってみました」
額を合わせると、視界が音也の肌で染まる。
絡んだ視線が解けて、赤い双眸が伏せられたことで、全貌は見えなくても照れているのは手に取るようにわかった。
睫毛が肌に掠めては、何かいいたげに口を開いて。
えさを求める金魚のようにパクパクしていた。
普段甘ったるい台詞を無自覚に言うくせに、音也は言われるのにめっぽう弱いのだ。
紡ぐ言葉が思いつかないのか、ただただ喘ぐ唇を、私は塞いだ。
「んっ……」
小さく吐息が漏れるが、拒まれる気配がない。
私はそのことに気を良くし、柔らかい表面をちろりと舌先で舐めた。
途端に、音也がぴくっと肩を震わせて瞼を瞑る。
いつもしている筈の口付けだったが、音也は私の暫しされるがままになっていた。
唇の隙間から時々声にならない音が漏れる。
その音色が扇情的で、むくむくと欲望が擡げる。
肩肘をつき、シーツを背にして後頭部を撫でると、腹部へ上乗った。
さらなる口付けを求めるように音也も腕を伸ばしてくる。
「ときやぁ……」
「何でしょうか」
「あのね……ふぁ、ん」
答えようと口を開いたところへ舌を滑り込ませ、歯茎の裏側を右から左に辿れば、綺麗に並んだ歯列にカチカチと舌先があたった。
唾液を送ると、強い力で背中を抱き締められる。
私との口付けに応えて音也からも舌を絡められたので、それを吸い、時には甘く噛み。
だんだんと水音と互いの息遣いしか、聞こえなくなっていく。
「……さわって、もう、ここ、いたい」
恥ずかしそうにしながらも、下肢を摺り合わせて私の太腿に、熱を宛がってきた。
パジャマのズボンを盛り上げた音也のソレは、服越しでもわかるほど堅く、染みている。
音也の愛らしさに堪らず、髪を掻き撫で、首の角度を変えながら、口付けを深める。
「あっ……ンン、はふ」
「ふ……音也、可愛い」
私は、手を衣服の下のほうへ滑り込ませ、腹部を撫でた。