(クレア×シャーネ)
人は、いずれ死を迎える、
と世間は言う。
昨日の夢が怖かった。
どんな内容だったかは、覚えていない。でも、とてつもなく悲壮的で惨い夢だった。最悪だった。怖かった。
ああ、これは夢だったんだ。と、目覚めて実感した時。私は、初めて涙を流した。
あの、堪え難い恐怖が、現実に有るのかもしれない。もしかしたら、近辺に散らばっているのかもしれない。実は、もうベットの下に潜んで居るのかもしれない。
そうだ、それは、
(彼を傷付けるかもしれない)
「いや、それは無い」
彼は、手を否定の意として左右に振る。
彼は、笑う。
彼は、人を馬鹿にしたように、ため息をつく。
この店の茹で麺は、上出来。彼は、私の味の好みを知り尽したらしい。
けど、その態度は、とても好みでは無い。
何故、伝わらないのだろう。
(有り得る話かもしれないのに)
「それは、シャーネが怖かっただけの話だろ」
(貴方だって怖いはず)
「俺は、今まで一度も恐怖した事は無いよ」
(私だって、そう)
「今、怖がってるだろ」
言葉は読めるくせに、どうして感情は伝わらないのだろう。彼は、不思議だ。
私は、知らない間に茹で麺を食べ終わっていた。最後の一口まで、これは最高の味付けだった。
(もう、良い)
走り去る時、葡萄酒が溢れて、服の裾に付着。彼がくれた服だ。
この服に、しなければよかった。
雨が降っていた。
すぐに洗えば、この汚れも取れるかもしれない。と、思い、雨が止むのを待たず飛び出した。
そういえば、行き先を考えてはいなかった。
適当に、近くの公園で居る事にした。
気付けば、自分が座ろうとしたベンチに。彼の姿が見える。
もう見慣れてしまった黒くて大きな、ただそれだけの傘を差していた。
呆然と、立ちすくんだまま、その場に動けない。もちろん、動く気もない。
雨は、止むどころか、段々強くなっている気がする。
彼が、私の前に来た。
傘を差し出される。即座に、傘の中に入った。
「今日行った店のパスタ、美味しかったな」
(うん、良かった)
「また、行こうな」
(うん、また行く)
会ってすぐの会話は短かった。
いつもは、適当に相槌をうっていたら話が進むのに。今日は、なんだか上手く話が進まない。相槌しか出来ない自分が腹立たしい。
彼が、歩き出した。それに合わせて、歩を進めた。
あの話は、無かった事にされているみたい。
それは、それで良いけれど、虚しくなる。彼は、本当に忘れてしまっているのだろうか。
「あ、そうだ」
いきなり止まられた。
前髪あたりが、少しだけ外に出て湿った。
「ちょっと失礼」
彼は、しゃがんで私の服の裾を眺めた。そこは、丁度染みの着いた所だ。
無言で、そこに手をそえられ。次の瞬間、服は染み一つ無い純白へと逆戻った。
純粋に、すごいと思う。
「ん、これで良し」
満足そうに、また歩き出す彼に、心の奥で「ありがとう」と言った。
頭に、暖かい掌が乗せられる。それは、彼なりに照れている証拠なのかもしれない。
「これ位の事なら、何万回でもしてやれるんだけどなぁ。俺は、まだまだなんだろうなぁ」
彼は、続けてこう呟いた。
「お前の不安とか、全部なくしてやれない訳だから。まだまだ未熟だよな」
その言葉は、私に言ってるのだろうか。それとも、私の恐怖そのものに言ってるのだろうか。
彼は、やっぱり不思議。
今、思えば。
あの夢の中の恐怖は、本当の所。彼が、作り出したのかもしれない。
そうすると。私になかった、感情は、全部彼が作っているのかもしれない。
(彼は、本当に凄い人だから)
じゃあ、これはどういう感情なんだろう。
私は、まだこれの名前を知らないので、今度、彼に聞いてみよう。と思った。
あと、この傘は、二人で入れて便利だと、思った。
(俺達は、死なんて迎え入れない)
(と、彼は言う)
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申し訳ない文になりました・・・
意味不明で、すいません。
このような素敵な企画に参加させてもらい、ありがとうございました!
成田万歳!
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