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※ギャグです。



背の高いしっかりした緑。それをやっとのことでアジトに持ち込むことができ、一息つく。狭いドアも少々力ずくで抜けてきたのであたしが通ったあとには葉っぱが散らばっている。

「いやぁ、いい汗かいた。やっぱ悪いことだけじゃなくて、たまにはいいこともしないとね!」
「…聞きたくありませんが何してるんですか。」
「あ、ランス様とラムダ様!ちょーどいいところに…」
「俺にはどー見ても良いタイミングには思えねぇけどな。」

散らばった葉っぱをうっとおしそうに避けて歩くランス様と、少し呆れたように笑うラムダ様。

「どうですかこの立派な笹!わざわざ切って持ってきたんです!みんなで短冊飾りましょう!」
「あー、そういや七夕か…。すっかり忘れてたな。」
「そんなもの、暇人のする行事でしょう。願掛けするくらいならその願いを叶えるための努力をしなさいよ。」
「そういう夢のないこと言わないでください。ランス様もほら、願い事を…」

びりびりっ…。用意しておいた短冊を渡すと、それは受け取られて一秒もしない間に二つに割かれた。せっかく可愛らしいヤドンカラーのピンクを選んであげたのに!!

「ちょ!なんてこと…」
「結構です。大体、あなたはアジトにこんなもの持ち込んでいいと思ってるんですか。」
「いいじゃないですかー!アポロ様だったらきっと許してくれるのに!アポロ様とアテナ様呼んできて下さい、抗議してや…」
「あら、呼んだ?」

声のする方を見るとアテナ様が居た。その後ろにはアポロ様も一緒だった。

「随分と騒がしいわねぇ、遠くまで聞こえてたわよ。」
「ランス様が分からず屋なんです!七夕のお願いするくらいいいですよね?」
「いいんじゃないかしら、おもしろそうじゃない。」
「ラムダ様もアポロ様もいいと思いますよね?」
「まぁ、別にいーんじゃねぇ?」
「この床と、後始末さえちゃんとするのならいいでしょう。」
「やった!じゃあ今から皆さんも書きましょう!短冊どうぞ!!」

ペンと短冊をそれぞれ手渡す。ランス様には目を見てしっかりと手渡すと今度は割かずにいてくれた。不本意そうではあったけど。



「皆さん、書けましたか?」

数分後、全員が願いを書き終わり後は笹に飾るだけ。…ここが一番肝心!自分で飾り付けをして、なんとか自分の短冊を見られないようにしなければいけない。そして、飾り付けをする時に、幹部の皆様がどんな願い事をしたかを見る!

「じゃあ、飾るんで短冊あたしにください!」
「お前は背が低いし危ないでしょう。私がやりますから大丈夫ですよ。」
「え…いや、アポロ様にやらせるわけにはいきませんから!あたしばっちり飾れますから大丈夫ですよ!?」
「いいから、ここは私に任せなさい。」

なんて優しいんですかアポロ様。でも、その気遣いは今はいりません。その素敵な微笑みも今はいりません。

「ここはアポロに任せましょ。女はこういう時、楽してりゃいいのよ。」
「うっ……、はい。」

アテナ様の言葉もあり、もう短冊を飾るのは諦めるしかなかった。でも、あたしの短冊は皆さんに見せちゃ駄目だっ…!!

「おや…お前の短冊は?」
「え、いやー…その、ちょっとインクが滲んじゃって…?」
「とか言って、本当は見られたら困る願いでも書いたんじゃないですか?」
「…!!」

ニヤニヤと意地の悪い笑みでランス様が言う。無理やり短冊を書かされた腹いせだろうか、余計な事を!

「それは本当ですか?」
「う……」
「…その短冊を渡しなさい。」
「…はい。」
「四枚もあるんですか。」
「アポロさん、全部読み上げて下さいよ。」

横からランス様が付け足す。まだ言うかこの野郎!ラムダ様も、アテナ様も心なしかおもしろそうにしている。止めて下さいよ。

「一枚目、『アテナ様とまた一緒にお茶できますように。』」
「あら、可愛い願いじゃない!またおいしいケーキでお茶しましょうね。」
「はい、ありがとうございます!」


「二枚目、『ラムダ様がいい加減ドガースの自爆戦法やめてくれますように。』」
「俺の勝手だろ!?あれが一番なんだよ!」
「でも、下っ端のみんなは、あの爆風に巻き込まれて困ってるんですよ!」


「三枚目、『ランス様が自分で冷酷(笑)って言わなくなりますように。』」
「…あなた、私を馬鹿にしてるんですか?」
「だって、笑えちゃうんですもん!あれはネタにしか聞こえません!」


「最後……は読み上げなくていいでしょう。」
「何でだよ?この流れでいくとお前のことじゃねぇか、アポロ?」
「見せて下さい、私が読み上げます。」
「あっ、止めなさいランス…!!」

最後の一枚をアポロ様からランス様が取り上げる。それが一番危ないやつだから!だめ!やめてー…



「…『アポロ様の前髪が生えてきますように。』」



「……………」
その一瞬で音が消えた。しぃん…と部屋全体が静まり返る。…が、それはたった3秒に過ぎなかった。

「…ぎゃはははは!!やばいだろ、それ!!叶うといいな!!」
「あははははは!そうよねぇ、きっと叶うわよ、あはは…っ」
「ふふ…、あ、あなたもたまにはまともなこと考えるんですね…!」
「…うるっさいですランス様!全部ランス様のせいですよー!」

あぁ、もうこれだから見られたくなかったんだ!!一番高い誰にも見られないような位置にそっと飾っておきたかったのに!!ちらりと下を向いたまま動かないアポロ様を見る。本当に申し訳ない…。

「あ、あの…アポロ様?本当にすみませんでした…。あれはからかってるんじゃなくて、真剣に…」
「…です……」
「え?」
「…お前たち、全員下っ端からやり直しです!!!」
「「「えーーーっ!!?」」」
「もう決定事項です!」

腹を抱えて笑っていた三人は一斉に声を上げた。アポロ様の目はマジだった。けれど、そのマジな目に涙がうっすら浮かんでいたのを見て、もとから下っ端のあたしには何の痛手もないことを突っ込めなかった。よく見たら瞬きするたびに滴がきらきら光ってました。





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