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ちりばめた羽は吐息に揺られ月へ心を運ぶ。愛し合った夜と朝は夢を産み、かなしみは露に溶けた。表は裏と背中合わせ。闇は光と背中合わせ。帰る場所を得た少年の瞳には、明日を知らぬまま眠った乳飲み子の希望が潜み、路地裏の女は聖なる絶望に己が命たちを嘆く。 交わされた杯には英雄になれなかった兵士の愛する人の涙が流れ、子守歌を奏でた母の手には痛みを吸って輝く指輪。乾いた唇が紡ぐ世界への睦言は大地を呪う音とよく似ている。流れる水に癒されれば、猛る炎は血をも焼き尽くし、緩く躯を撫でた風は海を荒らし、 たくさんのひとが還っていった。砂漠に落ちた雫を探すならば亡くした幸せを求めにゆけと、自由を失った足は十字架にその骨を捧ぐ。掘り返した墓に美しい女が眠るなら、空は息を止めるのだろう。父は永遠に大いなる砦のまま在り続ける、手を繋いだ事は確かに愛だったのに。それは幻、それは夢、それは無、それは昨日。



 




title 摂理の謳 

 


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