【ジャックランタン】
「トリックオアトリート、ハレルヤ」
「おい待て、結局してんじゃねぇか」
遠慮無しに自室に上がり込んで来たライルを渋々向かい入れ、俺はライルが被っている安物のカボチャの被り物を取ろうとした。
しかし俺のその行動を、ライルは「おっと」とか言いながら阻止する。
「これは取ったら駄目だぜ」
眉を思いっきり寄せ、真正面からライルを睨み付ける。
そうしたらくつくつとライルは笑った。刳り貫かれ作られた両目の部分の奥で、ライルの翡翠が俺を嘲る。
「ジャックランタン。地獄にも天国にも行けなくなった、馬鹿な男の話を知ってるか?」
背筋を何かが走った気がした。
ライルは面白そうに続ける。
言うなと言っても、きっとこいつは口を動かすだろう。
「きっと兄さんも、こうやってこの世をぐるぐる彷徨ってるんだろうな」
「ライ、」
「ロックオンだ、ハレルヤ」
いつもの軽い声調が、ぐっと重みを持った。不覚にも思い出したのはニール・ディランディで、俺は自己嫌悪に目を瞑る。
「お前ほんっと死ねよ……」
「死ねるもんなら死にたいね」
その台詞が役作りから来たのか、それともライル自身からだったのか、俺には全く判別できなかった。
ロックオンを馬鹿にするライルは大嫌いだ。
ただ、ジャックランタンとやらの話をかなり強引に解釈して、こうして俺に甘える隙を作ってくれるライルは嫌いじゃない。
「……ロックオン」
「ハレルヤ、」
俺を抱き締めるロックオン・ストラトスの両手は相変わらず大きくて。
被り物が邪魔でキスは出来なかったから、肩に顔を押し付けてやる。
「ハレルヤ、好きだ」
耳元で、ロックオンの声がした。
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【ジャックランタン/-081030-】
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