1.君ってかわいいね
がらんと広い教室内に、机を挟んで二人きり。
ふざけた男。
うさんくさい糸目。
最初にエドワードがリンと言う男に感じた第一印象がこれだった。
「えーと…アンタが入部希望の、リン オウ?」
「読み方が違ウ。リン ワン」
「あぁそか、悪い悪い。リン ワン、な」
学年は一個下の今年の新入生は、人気なんかないに等しいこの『科学部』に入りたいと、突然入部届けを突き出してきた。
普通なら部長として喜ばしい事である。
だが…
「…なんで此処なんだ?一年のリンったら、俺でも噂聞いた事があるぞ」
「ヘェ〜、どんなウワサ?」
わざとらしく楽しげに小首を傾げられるが、そんな事大の男がしても可愛くない。エドワードは半眼で相手をねめつける。
異国からの入学生だと言うだけで目立つこの男。
入学から半年、どこの部にも入らずフラフラ仮入部してはやめるを繰り返す変わり者だ。どこから聞いた噂だったか…そんな事を小耳にいれた事がある。
「あぁ、仰る通リ」
「あと、スポーツ万能でこぞってスカウトしても一向
に靡く気配がないとかも聞いたな」
こちらはついこの間、知り合いの部長に聞いた話だ。ただ気の抜けた目の前の顔からは想像が出来ないが。
「そんな奴がなんで今更科学部なんかに入るんだ?ひやかしにしか思えねぇ」
ズバッと切り捨てると、今までヘラヘラしていた笑みが一瞬苦笑へと変わった。エドはそれを見逃す事なく、あからさまに嘆息する。
「やっぱりか…」
「いちおう、動機はしっかりしてるんだヨ?あんまり部活の内容には興味ないケド」
人数こそ少人数の弱小部だが、それでも自分の部だ。それを貶されたような一言に盛大にエドは眉を潜める。
「動機ってなんだよ」
「君が、可愛いから」
目が点になる、とはこの事だろう。サラッと即答された言葉に耳を疑った。
「…は、ぁ?」
なんだコイツと言わんばかりの視線。それを受けてもリンは笑みを崩さない。
「君に一目惚れなんダ」
笑みをうかべた表情から覗く漆黒の瞳は、まさに肉食獣のソレだった。
end
続くです^p^
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