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何人かに囲まれての脅しもなれた。


上靴を隠されて笑われるのもなれた。


トイレから出してくれない事もなれた。


――・・・もう、どうなってもいいって思ってる。


ボク一人がどうしてこんなことに?って毎日思った。


こんな男子校にどうして通ったんだろうって何度も悩んだ。


別にどうでもいいって思えば良いって思った。


ボクを守ってくれるものなんて何もないんだから


01 序章







「鳥空、早く金出せよッ!」


今日もボクは誰も助けが無いこの数人の男達に囲まれて見飽きた裏庭で謝っている。


「ごめんなさい・・でっ、でも今月はもうお金は・・・」

「うるせえっ!家から持って来ればいいじゃねえか!」

「無駄だって!こいつ親に捨てられたやつだしよっ!」

「だったらおまえ万引きでもして来いよ!」

「・・ボク・・そんなこと出来ないです・・・」

下を向いて言うと皆は足を組んで僕たちを見ているこのグループでの一番上の綾瀬 凛君を見ると
睨むようにタバコを出しながら僕の瞳を見る。


「殴って分からせればいいんじゃない?」

「・・っ!!」


子分さんの手が振り上げられ殴られ眼を瞑るとなぜかいつものあの痛みが来ない。


「・・・?」


そっと、眼を開けるとニット帽子を被った大きい男の人が綾瀬君の片腕を浮かんでいたからだ。


「てめぇっ!俺を誰だと思ってこんな事しやがるんだ?!」

「さぁな、転入生の俺にはさっぱりお前たちの事なんか分かんねー・・・が」


そう言うとボクの手首を掴んで自分の方へその人は引き寄せ、抱きしめる。


「こいつを苛めてるって言うのは気に入らねーな」

「えっ?」

「・・・ねぇ、調子に乗ったそいつもついでに殴っといてよ」


そう綾瀬君が僕達に指を指して子分の人たちに命令すると、飛び出すようにこっちにきて
ニヤッとまた笑いながら回り込むように軽々と飛び出してきた五人を倒してしまっていた。


「で?」

「てめぇっ!俺の部下をよくもっ・・・!」

「降参か?・・・それともまだ俺と殴り合うか?」


そう言うと綾瀬君は逃げるように子分と走っていき、状況が掴めないボクは呆然としていると
ニット帽の人は頭をぐしゃぐしゃと撫で始めた。


「大丈夫か、チビ?」

「なっ・・ボクはチビじゃなくて・・名前が・・・」

「聞いてないから仕方ないだろ?」


ニット帽の人はムスッとしながら見下ろすように
僕を睨んでいて慌てて声を出す。


「・・・とっ・・鳥空・・音恩・・」


ボクが小さな声で名前を言うと納得したのかフムと言いながら楽しそうに笑っていた。


「俺の名前は神楽 淵志で、ここの転校生だ、宜しくな」


そう言うと授業をサボるぞと、突然言われてやって来たのはいつもボクが隠れる屋上だった。
青空を見ながら神楽君はごろ寝したので僕はその隣に座った。


「あの・・・でも・・・ボクなんか助けてよかったの?」

「あ?」

「・・・多分、神楽君も・・そのっ・・・一緒に苛められちゃうよ?」

「だ〜れが、苛められるかオタンコチビ助っ!」

「痛っ?!」


バシッとでこピンをされて両手で額を押さえていると隣で笑っている。


「俺とお前はダチになったし・・それに、あんなクズどもに苛められてたんじゃあ魔王っていう名がガタ落ちだ」

「魔王?」

「いや、なんでもねーよ・・兎に角、今日からお前は俺の隣にいたらいいんだよ」

「でも、折角初めての友達になってくれた神楽君を巻き込むなんて」

「もう一発いくか?」


そう言いながらでこぴんの準備を目の前でされてボクは両手で慌てて額を押さえた。


「巻き込まれるから嫌だなんて離れるそんな程度のヤツはダチでもねーよ」

「・・・でも」

「でも、でも、うるせーな!じゃあ、お前はずっと脅されたいのか?」

「ボクはいいよっ、もう馴れちゃってるから」

「・・・あのな、そんなの馴れるものじゃねーんだよ」

「え?」

「そんなのに馴れたんだったら、何で泣いてるんだよ」


そう言って、起き上がった神楽君は手を伸ばして、指で優しくボクの涙を拭ってくれた。


「あはは、何で止まらないんだろ・・・いつものことの筈なのにっ・・・」

「・・・・・俺が救ってやるよ・・・」

「え?」

「いや、取り合えず教室案内してくれよ」

「そう言えば、神楽君は何組?」

「俺は2−Vだな」

「あ、ボクと同じだね。じゃあ沢山案内が出来るね♪」


そう言いながら僕が笑うと神楽君はさっきとは違う優しいふんわりした笑顔になった。


取り合えず、授業で使う場所と食堂などを案内していくと色々話してくれて
照れて上手く話せなかったけど、ずっと憧れていた友達という存在と話せれるだけで
ボクはすごく嬉しい気持ちで沢山だった。


「で、ここが僕達の・・クラスだよ・・」

「入りたくねーのか?」

「そんなことは・・・ないこともない・・・かな・・ほら、綾瀬君もいるし・・」


そう、ボクが言っているのに堂々とガラリとドアを開けて入っていくので小走りでついて行くと
やっぱりさっき神楽君が殴った子分の人たちはいた。


「なんだ、てめーも同じクラスかよ」

「ちょーどいい!綾瀬さんもいねーし、さっきのお返しをしてやるぜ・・鳥空、おまえもだからな」


そう言いながら近づいてきてどうしようかボクが悩んでいると、神楽君は近づいた子分の人たちを
思いっきり蹴り飛ばしていた。


「音恩、俺の後ろにいろ。」

「駄目だよ、神楽くん・・・」

「さっきから今まで苛めた分までボコボコにしてやりてーから丁度いいんだよ」

「・・・え?」


どうして転入したばかりのはずなのに昔から苛められている事を知っているのか分からなかった。


「後ろにいろよ」

「あ、うん!・・・でも、殴り合いはやっぱり駄目だよっ・・・」

「お前、そんなこと言ってたらその内、殺されるぞ?」

「・・・そうだけど・・でも・・・」


――・・キーン・・コーン・・・カーン・・コーン・・・


ガラッ!!


「全員、席に着け」


そう言いながら入ってきたのは担任の江西塵夜先生で暗いけど怒ると一度入院するまで
殴られた生徒がいる恐怖のため皆、素早く席についてしまった。

もちろんそう言うことだから、ボクがやつらに苛められている事は口封じされてるから先生は知らない。


「えー、今日転入してきた神楽淵志くんです。」

「どーも」

「じゃあ、鳥空君の隣が空いているから座りなさい」

「はいよ」


そう言いながら座ると退屈そうに両腕を頭の後ろに組んでHRを聞いていて、話の内容は最近のいじめが
多発しているため見回りを休み時間にするという話だった。

それを聞いてホッとしていると神楽君は目付きが鋭くなりながら何かを見つめていて
その視線の先を追うとボクを獲物のように見ている綾瀬君と目が合った。


(放課後が・・・怖い・・)


その後、休み時間になるとなぜか、神楽君の姿は無く僕は一人で震えていた。

そして、最後の終わりのチャイムの鐘の音が鳴り響いてどうしようか下を向いていると頭に手が乗り、見上げると神楽君だった。


「かぐ・・ら、くん?」

「何ボーっとしてるんだよ、帰るぞ」

「でもっ・・」


もしかしたら、見たのがたまたまだったのかと思い伝えようとしたらそれを無視して僕の手を繋ぎ引っ張るように
校舎の外へ出て門に近づくと何人にも囲まれ裏庭まで連れて行かれると綾瀬君が楽しそうに笑っている。


「さっきはよくもやってくれたね」

「何人も一緒にいないと何も出来ねーおまえじゃねーんでな」


そう言いながら挑発するかのように見つめる神楽君の後ろに僕は隠れていて、少しだけ情けないような
気持ちにもなっていた。


「何言ってるんだこのクズ?」

「こーいうヤツって馬鹿だからしかたねーんだよ」

「何人も連れるのは当たり前だろ?この学校の支配者様なんだからよっ!」


子分さんの一人が神楽君に近づくと素早く顎を下から力強く拳で殴られ高く飛び上がり小さな悲鳴と共に倒れて
僕は眼をそらしていたけど綾瀬君はピクリともせず神楽君をただジッと見ているだった。


「で?お前達の自慢を聞くために俺達は呼ばれたのか?」

「まかさ?それだけで帰らせれるほどこの学校での決まりは甘くないんでね」


そう言いながら綾瀬君が口笛を吹くと次々と色々な物を持った人たちが現われて僕はゾッとした。


「殴り暴力の武器暴力かよ?せこいにも程があるんじゃね?まぁ、殴られてねーけど」

「フン、何とでも言えばいいよ・・・ただお前を平伏すだけで僕は満足だしね」

「あのっ・・逃げよ?・・・僕、謝るから・・・ね?神楽君・・・」


周りからの恐怖からか服を握って見上げるとグシャグシャと頭を撫でて耳元でボソリと僕に伝えた。


(今から俺が戦ってるうちに走ってお前の担任呼んで来い)

「江西先生を?・・・なんで?」

(呼びゃあ、分かるから絶対行って来いよ?お前だから信じるんだぜ?)


・・・――お前だから信じるんだぜ?


その神楽君の言葉が胸に響いて温かい何かが体中に伝わって僕は首を縦に振って
背中を押してくれた勢いに乗って走り出した。





*






「逃げるかてめ」


・・・ドゴ・・・ッ――!!


音恩を追いかけようとしたやつを片足で軽々と蹴り飛ばして両手を組み鳴らす。


「一つ行っとくが、ここから先は誰も通すつもりはねぇぜ?」

「君はどうしてそこまでしてあんなのを守ろうとするの?僕たちのほうにいた方が確実に得なのにさ」


そう言いながら綾瀬は体中に巻きつけていた紐を解き両手に持ちながらコッチヘ歩く。


「薄汚ねーお前らより確実に居心地がいいんでな」


そう俺が言うと立ち止まって、少し無言になりながら力強く睨む。


「悪いけど・・・今のその言葉取り消してくんない?」

「は?何様のつもりだおまえ?」

「君こそ何様のつもり?」

「俺はもちろん俺様に決まってるだろ?そうだな、お前は誰かがいないと不安な弱虫様か?」


その言葉が合図かのように、素早く走り綾瀬は俺に紐を伸ばした。





*






「鳥空君、どうして今まで言わなかったのですか?」

「あの・・口封じ・・されてて・・・」


江西先生と共に走っているけど、素早すぎて着いていけず大声で離れた距離での会話となっていた。


「しかし不覚でしたね。まさかそんなことがあったとは思ってもいませんでしたよ」

「・・・すいません」


突然立ち止まり窓から先生が何かを覗いていて僕も続けて覗くと、子分はボコボコに倒され
綾瀬君の紐を両手で持って殴り飛ばす神楽君の姿だった。


「鳥空君、間に合わないから少し我慢して下さいね?」

「へっ?」


先生は窓を開けて僕を抱き上げ二階から軽々と降りると、僕を降ろして素早く二人の
合間に入って神楽君が一発殴る寸前で止めていた。


「まー随分と、暴れてくれましたね?」

「ケッ・・まぁ、言っとくがちょっかいを出したのはあっちだぜ?」

「あぁ、それは鳥空君から聞いてるから本当でしょう・・・しかし本当に相変わらずな暴れ方をしてくれましたね?
この始末書書くのめんどくさいんですよ?」


そういいながら苦笑いのように笑っている先生の笑顔からは殺気が潜んでいる。


「いつも馴れてるお前だったら朝飯前だろうよ」

「そろそろ離してくれませんか?これ以上暴れられても困るんですよね」

「そうは行かねーんだよ、今まで音恩が苛められた分殴り飛ばさないと気がすまないんでね」

(どうしようっ・・・)


僕は慌てて神楽君の方へ走ると小石につまづいて後ろから抱きしめてしまっていた。


「鳥空?」

「神楽君、もうやめて・・殴り飛ばさなくていいから」

「お前馬鹿か?!今までされてきたことを忘れたのかよ?痛くて、苦しくて散々辛かったんだろ?何でそんなこと言えるんだよっ!」


そう言いながら両肩を掴んで、怒りながら言ってくれる神楽君の言葉は痛いほど分かる。

今まで本当に辛かったし、悔しかったし、怖かった毎日だった、でもそれを経験したから・・・


「辛いのが分かってるからから言えるんだよっ!」

「・・音恩?」

「痛みも苦しみも分かってる、だから繰り返したくないから言えるんだよ!
・・・それを初めて僕のことを友達って言ってくれた神楽君にして欲しくないからっ・・・」

「・・・!!」


ギュッと痛いほど力を込めて抱きしめられて最初は驚いたけどそっと背中に手を回すと耳元で神楽君は『ごめん』って謝ってくれていた。


チラッと見ると、帰ろうとする綾瀬君がいて僕は小さな声でいった。


「明日、また学校でね」・・と。





*






鳥空の小さな声で言った言葉を聞いていて居づらくなり去ろうすると江西が呟いた。


「しかし、さすが魔王と言われただけの力はありますね・・・」

「?」

「あなたは彼の正体を知らなかったから今回のようになっても仕方ないんですよ」

「何言って」

「あなたたち、聞いてなかったから仕方ないですよ、他校での最近の暴行事件を」

「あぁ、何かきいたことあるね。数人に喧嘩売られて、一人で全員倒したって・・でもそんなの噂だろ?」

「いいえ、『単なる噂』何かだったら私達、教師全員が見回りなんてしませんよ。面倒な」

「でも、あれは俺達の苛めがあるからってアンタ提案したんだろ?」

「それもありますが、もう一つあるんですよ」

「もう一つ?」

「・・とある学校で一人の少年が転校して入った。
もちろん生徒達は、その一人の生徒に恐怖を分からせ怯えさすために呼び出したのですが
殴り飛ばされたったの一日で従わせ、その人は『魔王』と呼ばれて振るえあがらせたんですよ。」

「まさか、『孤独の魔王』って・・・」

「えぇ、今目の前でたった一人の小さな少年を抱きしめるあの男ですよ・・・そしてなぜか鳥空音恩を探し続けていたらしいです」


そう言いながらやつを見つめる江西の眼は本気だった。

僕も自然に見ていたら目が合い男は挑発するかのように楽しそうに笑っていた。


正直、それなりの力が自分にあると思ってたけど全身がゾクッとした。


・・・これが、殆どの学校の長の殆どに知られた『孤独の魔王』の正体かもしれない。



01 序章
(魔王と呼ばれるものに探された弱き少年の物語)














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