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夕日に照らされた病院の廊下


まばらな人の中を入っていく


独特の消毒の匂いが自然に広がった場所


いくつもの部屋がある廊下をさらに歩き進む


ある部屋の扉を開けると片目を包帯で覆った子の姿があった。





05 不平等な1/2







「・・鳥・・空・・・?」

「ごめんね・・あのっ・・・ちょっと聞きたくて・・・」

「そんなこと言いながら今まで苛めてきた分、哀れみにでもきたの?」

「違う、そうじゃ」

「じゃあ、聞きたいことって何?それとも・・・親に僕も捨てられたから同情?」

「ううん・・・その親について聞きに来ただけ」

「僕の方の?」

「ううん、僕の方の」


そう僕が下を向いて言うと綾瀬君の飽きれる様なため息が聞こえた。


「神楽が必死に隠してやってんのに聞いてどうすんの?」

「闇鴉の子孫」

「それが何?」

「・・・自分の両親が関わってるってことは、その子供である僕も関わってると思うんだ・・・
何も知らないで終わるんだったら・・・知って終わった方がいいんだ・・・」

「・・・また、僕が殴られる事なんてない?これでも片目失明同然の怪我してるんだから」

「しつめ・・い?」

「神楽が殴ったとき、こっちの目が直撃しただけさ」


そう言いながら指差す瞳は包帯が何重にも巻かれていて痛々しかった。


「・・・ごめなさい・・・」

「・・?あんたが謝る必要は無いけど、今回はあんたから聞いたんだから
だいたい、もう3回も殴られるのはこりごりだからね」

「3回?」


僕の中では1回、綾瀬君が過去の事件のことを僕に話して淵志が怒って殴ったのは覚えてる。
そして文化祭での2回目だと思っていたから3回目の中の、残り1回目が分からず
考えていると綾瀬君はベットから出て廊下へと歩き始めたので僕はついていった。


「江西に殴られたんだよ・・しかも神楽の時より痛いし性質が悪かったしね」

「江西先生に?」

「あんたは気を失ってたから仕方ないよ、でもまさか父様との・・・もう父様じゃないか・・
真宮寺家との関係があるとは思わなかったよ・・・」

「ねぇ、綾瀬君の家は何をしてたの・・・?」

「俺は真宮寺家に孤児院で拾われて始末屋のプロの仕事を嫌ってほど仕込まれた・・
闇鴉とは上下関係だったらしいし、これも聞いて分かった事だけどね・・・
それに神楽と江西も元闇鴉の一員だしね」

「・・・闇鴉って・・何?」


いつの間にか屋上へと上っていた階段は最上階へいて、綾瀬君は缶ジュースの缶を揺らし
それを見つめながらしばらく無言になっていた。


「・・・闇を鴉のように飛びまわり光へ決して振り向かない集い」

「光へ・・・振り向かない・・」

「人を食う鴉とその鴉を護る人で結成された今も続く始末屋のプロたち・・・成功率は99%失敗は無く
確実に動く集団って言われてるのを僕も聞いた、その中でもあんたの父親はそれをまとめる
ボスのような人物だったらしい」

「母さんは?」

「母親は普通の人間だったらしいよ、まぁ普通って言っても何も知らないって意味のね
それでアンタのあの小学二年生の時に起こった事件の時には闇鴉はもう解散に近くて
逃亡生活をしていたらしいけどね」

「じゃあ、僕の両親を殺したのは・・・」

「メンバーの人間の誰かなのか・・それだけは、分からなかった」


『あははっ!綾瀬 凛、みーつっけた!』


「「!!」」


突然、声がして二人で振り向くと給水タンクの上に座っているもう一人僕

フリルのついた服を着て熊のヌイグルミを大事そうに持ちながら笑っていた

後ろには白髪の髪をした黒いウサ耳の男の子が隣に無表情でいる


同じ顔に同じ髪の色・・・特徴を見ただけですぐに誰かが分かった。


「し・・おん?」

「そうだよ・・音恩兄様の大事な、だ〜いじな弟だよ♪すごく会いたかったよ・・・
あれから数年、すぐにでも音恩兄様を連れ去りたかったんだけど、色々邪魔されてね」


そう言いながら詩恩はギュッと僕を抱きしめた、けど僕は力いっぱい突き飛ばすと
白髪の男の子が素早く受け止めながら僕を睨んでいた。


「僕は、君と行かない!」

「どうして?音恩兄様が不満に思わないよう迎えるつもりなのにっ・・・」

「帰って!それにもう僕の所へ来ないでっ!!淵志から全部聞いたんだっ・・・」


そう言いながら真っ直ぐな瞳で詩恩に向かって話すと微笑んでいた詩恩の表情は
苛立ちの顔へと変わり下へと軽々と降りて僕を見た。


「まさか、音恩兄様、実の弟を差し置いてあんなクズといるつもり?」

「淵志はクズじゃない!!それに、父さんと母さんを殺したのも」

「そうだよ、僕だよ?だって・・・あいつ音恩兄様を殺そうとしたもん」


あっさりと笑いながら言う詩恩に僕の頭の中は真っ白になっていたけど口は勝手に開いていた。


「どうしてっ・・・」

「どうして?」

「・・どうして殺したの?」

「あははっ♪・・・そんなの僕の大切な音恩兄様を殺そうとしたからに決まってるからじゃんっ!!」


見つめる詩恩の瞳は殺気立たせるように大きく見開き大声で僕へ叫び、抱きしめていた
熊のヌイグルミを力いっぱいコンクリートの地面へ叩きつけた。


「それに、父様は僕だけには闇鴉の跡継ぎは絶対にさせないって言って殺そうとするし・・・
さらに二人は音恩兄様しか見なかった!!」

「っ!!」

「母様が音恩兄様を何も言わずに両手で首を絞めて殺そうとしたのは深い愛情だったよ?
・・・でも殺さなかった僕はどうでも良かったんだよっ!!双子なのに・・・

どうして僕達は双子なのに平等じゃないの?!!

どうして・・どうして音恩兄様も僕を愛してくれないのさ!!」


そう言いながら何度も、何度も地面に叩きつけられた熊のヌイグルミはボロボロになり
自分がボロボロにしたのに用がないかのように力強く壁へ投げつけると
大きな爆発と共にヌイグルミは焼け焦げ、気がつくと綾瀬君が僕を守ってくれていた。


「クズの次は裏切りのゴミまでもが音恩兄様に近づく気?」


そう言いながら詩恩の後ろにいた黒いウサ耳の男の人は近づいて両手のヌイグルミのような
フワフワした兎の手が大きくなって綾瀬君を捕まえようとしたのでとっさに押すと
僕が捕まり高々と持ち上げられ締め付けられた。



「くあぁっ・・・!!」

「鳥空っ!!」

「えん――・・っ!!」


頼らないために一人で来たのにっ・・・

結局また淵志を呼ぼうとしてる、助けを求めようと初めに考えてしまってた

僕だけなんでこんなにも無力なの?



・・・――なら、お前に力を貸してやろう



突然、僕の頭の中で違う聞いたことの無い声がして蒼い華の草原が目を瞑ると広がっている。



・・・――誰?どうやって、僕に力を貸してくれる?



・・・――お前はただこの勿忘草の中で少しの間眠るがいい、鳥空音恩よ





*





「?!!・・・黒兎!!音恩兄様が死んじゃう、何やってるの?!離してよっ!」

「これ以上詩恩様を侮辱するのは例えあなたのお兄様であっても許せません・・・」

「コレは僕の命令だぞ!!言うとおり離してっ!!」


さらに締め上げられ、潰れそうになった鳥空を包むものにピアノ線を絡め切り裂こうとした
瞬間、ピアノ線と黒兎というやつの手が同時にバラバラに崩れ煙幕が広がり僕は一歩後ろにさがり
詩恩は黒兎に抱き上げられさらに後ろに下がっていた。


「一体何っ!?」

「詩恩様、もしかしたらっ・・目覚めてしまったのかもしれませんっ・・!!」

(目覚める・・・?)

「そんなっ!だってまだ音恩兄様には何も言ってないから無理なはずなのに・・・!!」


煙幕は消えて、歩いてくる鳥空の姿を見て僕は固まってしまった。
黒い瞳は血のように赤い瞳なり、黒い髪はさらに漆黒になり、彼の存在はどこにも感じず
新たな別の人間という感じがした。


『我は闇鴉の長の心の中の勿忘草で全ての記憶を集め忘れ、護る者・・・そして』


突然言葉を止めて詩恩の方へ振り向き、どこからか現われた短刀を手にして走り向かっていったが
黒兎がまた詩恩を抱き上げながら翻し着地した。
詩恩は何かに恐れるかのように白い兎のヌイグルミを出して短く何かを唱えると黒兎と同じ
もう一人の白い兎の少年が現われた。


「なんやねんな〜、黒兎だけで十分って言ってたくせにやな〜」

「状況が大きく変わった。鳥空音恩が突然変化し、力を得てしまった・・・詩恩様、申し訳ありませんが
あの方の命令どおり二人であの者を処分させて頂きます」

「やだっ!!やだやだやだやだやだやだぁっ――――!!あんなの音恩兄様じゃない!
きっと違う場所で眠ってるんだよ・・違うよっ・・違っ!!」


いつの間にか詩恩の目の前に音恩は移動していて、詩恩の体に短刀を振るうと服は破れて
さらに、白兎と黒兎を蹴り倒してトドメを刺そうとしていた鳥空を見ていると
俺はなぜか人を殺して欲しくないという気持ちが現われてしまっていたからか線を絡めていた。


『離せ綾瀬、貴様の敵は我ではなくこの目の前にいる三人だ』

「生憎だけど、僕は命令されるのは嫌いだし・・本当の鳥空音恩に人を殺して欲しくないって言う
馬鹿な気持ちが体中にある・・・だから止めさせてもらうよ?」

『片目が見えないまま我と戦うというのか?』

「あぁ、片目でもそれなりに戦えるからね」


そう言いながらさらにキツク縛り付けようとすると簡単に抜けて線を切り僕の方へ走ってきて
殴られると思って目を瞑った瞬間、白い白衣が目の前でなびいた気がした。



05 不平等な1/2
(僕達はどうして平等にいられなかったんだろうか?)


















あきゅろす。
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