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パンパンと何回も音を聞いた気がする。


慌しく準備のために走っていく他のクラスの人たち


でも一つ角を曲がったドアを開けたその教室は


暇そうに何もせずにいたり、何処かへ行っていなくなっている


文化祭に参加しない僕らのクラスだ。






04 少年の狂いと闇鴉







「では、今からプリントを配るので終わった人からご自由に帰ってくださいね。
直、文化祭がもちろん行われているから絶対にこの教室のすぐ隣の階段から降りて
速やかに帰ってください。参加している者を僕が発見したらどうなっても知りませんので」


そう言いながらさわやかに言う江西先生を他所に他の人たちは全員暇そうにしていて
もちろん隣にいる淵志は呑気にアクビをしながらシャーペンを動かしていた。


(今日はセールで卵が一人2パック100円だからゲットしたいしな〜)


早く帰りたかった僕は目の前の真っ白の現国の問題を悩ませながらも合っているかどうかの
全然自信のない答えを書いていると肩を指で叩かれていた。


『おい、音恩』

『どうしたの?』

『おまえ、問5の答え分かるか?』

『・・・分かったけど・・・まさか』

『こんなの分かるわけないだろ?頼むっ!あと出来れば全部教え』



「随分と堂々とした大声のカンニングですね〜?」



「しゃーねーだろー、ぜーんぜん分かんねーし・・・あ、だったらお前答え教えてくれよ」

「担任の私が生徒に問題の答えを教えて点数を上げる・・・確かにそれは私の今後にも有利になりそうですね〜」

「だろ?だろ?だから教えてくれよ」


そう言いながら悪巧みのようにニヤリと笑う淵志は先生に必死に答えを聞きだそうとしていて
僕は呆れながら見ていると先生は僕と淵志の間に突然大きなダンボールを挟んだ。


「手を貸し手やしたい気持ちも分かるのですが、あなたにもたまには考える力、と言うものが
必要だと思いますから頑張って皆と同じように一人で解答を探し出してくださいね、神楽君?」

「〜・・・ちっ・・・分かったからダンボール退けろよ」

「いいえ、コレはカンニング防止の為なので気にせずプリントに励んでください」


そう言われた淵志は数秒間悔しそうに先生を見ながらもまたプリントと睨めっこしながら
真っ白の解答用紙に必死に答えを書こうとしていて、僕はまた歩こうとする江西先生を引き止めた。


「あの・・・先生」

「ん?鳥空くん、どうかしましたか?分からない所がありますか??」

「えっと、綾瀬くんは・・・?」

「あぁ、彼なら今日は欠席ですよ。なぜなのかは全然分かりませんがね〜」


そう言いながら先生はニッコリと笑っていた。

いつもは休まず来ていた筈なのに今日はなぜか来ていない彼に驚いているのか子分の人たちも
少しそわそわとした感じの様子の人が多数いた。


「あ、そろそろプリント授業終了ですね。皆さん名前の書き忘れのないよう」


――ガラッ・・・!!


扉が突然開かれて入ってきたのは小さなフリフリとした服装の女子で江西先生に何かを伝えると
先生は素早く教卓へ歩いてきた。


「突然ですがプリント授業は中止とします。神楽君と鳥空君は申し訳ありませんが残ってください」


そう言うと僕たちを引っ張るかのように連れて行き、出し物で喫茶店をやっていたクラスの
全員は廊下に出て何人か殴られたのかグッタリと倒れていたが江西先生の指示によって僕たちのいる
3階は誰もいない状態になって、なぜか他の先生達には知らせるなと言っていた。


「大丈夫ですかっ?」


ドアの近くに倒れている警備員を起こすとその人は教室のドアの先を震えながら指差していた。


「あっ・・・・・あ・・・れ・・・化け・・物・・っ!!」


教室を淵志と覗いてみると全てがグチャグチャになって立っていたのは
闇のような暗くて透き通りすぎて怖い瞳をして小さなナイフを持った綾瀬くんの姿だった。


「あなたには本当に困りますね、V組は今日はプリント授業なんですけどね〜体育じゃないですよ?」

「江西・・・神楽・・・あんたち・・・父様に・・・何か言ったか?」

「いーや、生憎だが俺はお前の父親には会った事もねーよ」

「でも・・父様は言った・・・鳥空の両親が・・・闇鴉の子孫だと・・」

「・・やみ・・・からす?」

「!!・・いいえ、密告したのは私ですよ、これ以上あなたに甦らされては困りますからね」

「おまえが・・・父様にあんなことを言ったのかっ!!」

「僕の、両親・・・?」

「音恩、後ろに隠れてろ」

「でも」

「あいつはもう、自分の心が安定されてないんだよ!・・話はその後だ」

「僕は・・今まで、あの家にいるためにっ・・・何人も消したし・・何人も・・・拷問した・・
なのに・・・昨日、父様が言ったんだ・・この家から出て行けって言ったんだ――!!」

「!!」


そう言って向かってくるのは僕の方で、淵志は素早く綾瀬君の両手首を掴み押さえたけど
自分の心を見失っているのか視点の合わない狂ったような瞳で僕をジッと見つめた。


「おまえのせいなんだよ」

「綾瀬く・・ん?」

「おまえと神楽たちが出会わなければ僕はこんな事に何かならなかった!!全部、全てお前達が
出会って下らない記憶が蘇ったからっ――!!!」


ギリギリ音を立てながら僕に淵志を押さえながら乗り越えてくる綾瀬君が怖くて
声が出ない状態で震えているといつの間にか僕は強く、淵志に突き飛ばされていた。


「音恩は何も悪くねーんだよっ!!だいたい自分で知りすぎたてめーのせいだろっ!!」


そう言いながら投げ飛ばすとさらに壁を蹴ってそれから少し離れた僕の首を絞めた。


「おまえのせいだ・・・悪魔の子・・・おまえのせいだ・・・・ヒトゴロシの子・・!!」


そう言われながら首を絞められた瞬間、目の前がまた前の記憶が蘇った時のように
視界が真っ赤になってそこでも僕は首を絞められていた。


『かぁ・・さぁ・・・んっ・・・』

『うう、うっ・・ごめんなさい、おまえは残してはいけないのっ・・闇鴉はもう消さなくてはならない
ごめんね、お願いだから・・分かって頂戴?・・ね・・おん・・ううっ・・・ごめんなさい』

『くる、しいよっ・・か・・ぁ・・さっ・・・ん・・・やめっ・・は、ぅぁっ・・』


涙を僕の頬が濡れるほどに落としながら泣き続け首を絞める母親が僕の中で蘇る。

でも母親の後ろに何か黒い小さなモノが微笑みながら迫っていて教えたいけど
苦しくて声が出せず教えられずにいる僕。



「かぁっ・・さ、ん・・うし・・ろぉ・・・っ!!」



「!!・・・江西、後で説明してもらうからなっ」

「分かってますよ」


――ドゴッ!!


ただ、その音だけは聞いた。

淵志が思いっきり蹴り飛ばしてスローモーションかのように綾瀬君は飛ばされて机の中へと
大きな物音を立てながら埋もれていったのは分かった。

僕は起き上がって、母親と重なっている綾瀬君の方へ走ろうとしたら淵志に止められ

綾瀬君が抱き上げられ先生が行くのも分かった・・・





*





アレから僕たちは綾瀬君が先生に運ばれるのを見送り背中合わせで散らばったりしている
机と椅子たちの空いた真ん中の一つの机に座って背中合わせになっていた。


「・・・ねぇ、淵志」

「・・・なんだ」

「昨日言ってくれたことは・・・全部じゃなかったんだね・・」

「あぁ・・・確かに全部じゃない」


そうはっきりと言う淵志の言葉が胸に大きな槍を突き刺す感覚になる。


「どうして・・全部じゃないのかな?・・・綾瀬君の言ってた闇鴉って何?何人も殴って拷問ってどういうこと?」

「・・・」





「僕って・・そんなに信用ない?」





もう、これしか言えなかった。

言えなかったんじゃなくって、言葉が見つからなかった。


「信用無いわけないだろっ!」

「じゃあ、僕の記憶を操ろうとしてるの?それとも、思い出したら・・・淵志は僕を捨てるのっ?」

「!!・・違うっ!!お前に言った事は全部本当だし嘘はついてないっ!!・・だからっ・・」

「だから、何?」

「・・音恩」

「淵志は僕の全部を知っているのに・・・どうして僕は淵志を全部知っちゃ駄目なの?
・・どうしてそうやっていつも江西先生と二人で隠そうとするの?卑怯だよっ・・・卑怯すぎるよっ・・・」


そう言ってドアを開けようとしたとき、勝手にドアが開いて驚いていると江西先生が立っていた。


「お話は終わりましたか?」

「立ち聞き・・ですか?」

「たまたまですよ」

「・・・」


僕はそんな先生の言葉さえも信じられず、すり抜けて廊下を走っていった。


淵志の何も知らないのが悔しいから?


僕の何もかもを淵志が知ってるから?


違う、きっと・・・


僕が淵志を分かってあげてないからっ・・・――!!


「僕だって・・・淵志を支えないと駄目なのにっ・・だめ、なのにっ・・・」


小さい頃の微かな記憶が思い出させてくれる、その中の淵志だって・・・


全て僕に嘘をつかずに僕を恐れないでいてくれたから・・だから・・・


僕に頼ってもらえないのが悔しいから・・


職員室で先生に僕はある場所を聞いた、先生のボールペンで適当に小さく書かれた地図のメモを手にとって





*






音恩が江西を抜け出して走って行った後、教室に残った俺と江西はただ無言で立っていた。


「随分鳥空君には嫌われてしまったようですね」

「あぁ、お前のしょうもないミスのせいでな」

「・・・まさか予想もしてませんでしたからね、ここにやってくるとは・・・出て行けと奴隷のように
命令を下す父親に言われれば、どこかに去ってくれると思ったのですがね」

「あいつなら絶対的存在の父親が出て行けと言われたらそれを言った原因に復讐するに決まってるだろ」

「しかし鳥空くんに闇鴉の名が知れたことは予想外でしたね・・・」

「音恩は思ってもいないさ・・自分の親たちが闇鴉に関連した人物だなんてよ」

「私達はその秘密を守るためにある者・・・」

「そして・・・音恩の両親は・・・闇鴉の中心で・・始末するもの・・か」

「今は双子の弟の詩恩が中心ですけどね・・どこで監視されているのかも分からないですしね」

「アイツだけは絶対に許せねぇ・・どんな理由があろうともな・・・」


そう言いながら俺は両手でギュッと手を握っているとヌルリとしたものが少し滲ませる。


「・・鳥空君が動いたようですね・・綾瀬の入院している病院に着いたようですね」

「!!・・本当か?!」

「私の後追い紙をなめないで欲しいですね」


そう言いながら片手に破られた紙を握っている。
江西の能力は自分の破った紙の片方をどんな形でも相手に持たせると、持っている限り追いかけたり
静止したり守ったりなども出来る守り術なのでもちろん嘘ではない事は分かっている。


それを聞いた俺は江西の車に乗って綾瀬の病院へと向かった。



04 少年の狂いと闇鴉
(ただ、彼の負担にはなりたくはなかった、僕の弱さ)













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