[携帯モード] [URL送信]
あの温もりのあった口付けから目が覚めると


蒼かった空は曇っていた


風は止まる言葉を知らずなびくだけ


誰かに抱えられているのは分かった






03 過去とこの先






「おう、気づいたか?」


そう言ったのは神楽君、こっちを見てニコッと笑ってる。

曇った空はどこにも無くてただ、自分の家の古びた天井しかなかった。

服が着替えてあって、おそらく神楽君が着せ替えてくれた事が分かったし額に乗せられたタオルからして
恐らく熱が出てたんだと思った。


「何で・・・あれ?・・僕・・・」


屋上に来た事までは覚えている。

綾瀬君に言われた事も・・・多少は覚えているけど、先生と綾瀬君がどうなったのか意識が遠かった
僕には全然分からない。


「色々ありすぎて混乱してるかもしれねーけどな」

「あっ・・・ううん、大丈夫っ・・・」


とりあえずは分かってる。

今、目の前にいるこの人に聞かないといけないこと。

そう決心しながら神楽君を見つめると、察しが着いた神楽君もこっちを複雑な表情で僕を見ていた。


「神楽君、聞きたいことがあるんだけど」

「あぁ、分かちまったら仕方ないな・・・お前にはあのまま閉ざしていて欲しかったのにな」

「ううん・・・逆に今まで記憶を閉ざしてくれていた・・神楽君に感謝しないといけないよ」

「いや、俺は結局お前の所まで間に合う事は無かった。」


そう下を向きながら言っていて、僕は自然に体が動いて神楽君を抱きしめると
少し驚いた顔をした後、僕を抱き寄せた。


「お前、こーするってことは分かってんのか?」

「うんっ・・・分かってる・・・つも・・り・・・」

「顔がすごい赤いぞ?」


そう言われるとさらに恥ずかしくなって顔が熱くなり誤魔化す様に目を逸らしながら離れようとするけど
神楽君の力が圧倒的に強くて離れられずにいる。


「っ・・・僕のことはいいの・・!・・それよりも・・・」

「あぁ、そうだったな。何で俺が関わってるのか?・・・だろ?」

「・・・うん」

「あれは・・小学二年生の時だった。お前と俺は仲が良くて公園とか色々な場所に遊びに行ったり
俺の親とお前の親が仲良く話してた・・・
あの日だって変わりなく話してた、だけど・・双子のお前の弟の詩恩が突然、どこにも姿がなくて
俺の親とお前の親は探しに行って俺はお前と待ってろって家で待たされていたんだ」

「それで・・・?」

「・・・・・」


僕にこの先を話すのが辛くなったのか抱きしめる力がさらに強くなってその痛みが
神楽君の辛い悲しさに感じた、でもギュッと手を握って続きをと神楽君の瞳を見た。


僕だけが何も知らないのは嫌だったから。


「そしたら、突然詩恩が俺達の目の前に現われてこう言った」



『何で、お兄ちゃんは僕を探してくれないの?

何で、お兄ちゃんは・・・そんな淵志みたいなクズと一緒にいるのっ・・!!!』



「・・クズって・・どうして神楽君が・・・?」

「あぁ、詩恩は俺とお前が一緒にいるのが気に入らなかったんだ・・・それで包丁を持ち出して
お前と詩恩は揉め合って俺も助けようとした時体に何かが絡んで両腕をズタズタにされてた」

「!!」


そう言いながら捲り上げられた神楽君の両腕にはその話の事実かのように生々しい傷痕が
沢山あって、僕は自分の弟の記憶が無くて顔も覚えてない詩恩に恐怖を抱いた。

体は自然に震え上がり下を向いていると神楽君が優しく頭を撫でてくれていた。


「すまね・・・もう、俺が覚えてるのはココまでだ・・・」

「え?」

「ズタズタにされた時に大量出血して気を失ったんだ。そして大家のようなやつが警察を呼んでいて・・・
目の前で見たのはお前の両親の死体と・・・」


また下を向いて辛そうな顔をしていてハッとした、というか分かってしまっていた。


「僕が・・目の前で包丁を持っていたんだね・・・」

「・・・あぁ、だけど俺はお前がやったとは思ってないからな」

「神楽君・・」

「淵志でいい、昔みたいに呼べよ」


そう言われたながら髪に触れられ肩に手を乗せられ、僕の頭の中で昔に呼んでいた呼び方が
頭をよぎっていって無意識に口が開いていた。


「淵ちゃん・・・」

「それはやめろ・・いくらなんでも俺もう16だぞ?!」

「あ、・・ごめんね・・えん」

「ちゃんって言ったら押し倒すぞ?」

「・・そのっ・・呼びやすくて・・・ごめんね、淵・・志・・・?」


そう言いながらなぜか名前を呼ぶのが恥ずかしくて僕が目を逸らすと淵志は
突然顔が真っ赤になりながら僕の片腕を掴んでた。


「どこ行くのっ??」

「お前、晩飯食ってないだろっ!コ・ン・ビ・ニ・だっ!!もちろん全額お前のおごりでなっ!」

「ええっ?!・・なんで??それだったら外、寒いし僕何か作るよ??」

「頭を冷やしに行くって言う意味でもあるんだよっ!お前のせいでこっちまで恥ずかしいっ!!」

「僕何か言った??」

「〜っ!あぁ、絶対に言ったな!!」


そうしながら外に出ると淵志の握る手の体温がとても暖かくてギュッと握っていた。


そんな姿を一人の小さな少年が見つめている事も知らずに。





*








『あのクズ、またしーの音恩兄様に近づいたんだ・・・色々邪魔したけど駄目だったなんて・・・壊さなきゃっ・・
あんな穢れを音恩兄様に触れさせちゃいけない!』


ビルのの屋上に少年は座り足を組んで苛立ちながら見ている。

フリルのついた黒服に白髪の髪がなびいた時のその顔は音恩とまるで同じ。


『長かったよ音恩兄様・・・もう少しでこの僕が穢れを祓ってあげるからね?』


そして、もう一度見つめると音恩と淵志は笑いあいながら家へと帰宅している。

横の壁を殴るとヒビが広がり朽ちた部分が崩れ落ちる音が響き渡る。


『・・くせに・・・クズのくせに・・クズのくせに・・・クズのくせにっ!!!』

「コラッ!君、何勝手にこのビルに上がりこんでいるんだ!」


警備員の男はそういいながら少年の肩を掴み外へ追い出すため捕まえようとした。


『丁度いい、あんたでとりあえず解消させてよ?』

「は?」

『おいで、ラビちゃん』


少年がそう言うと影から黒いウサ耳の少年が現われ気味が悪くなって逃げる警備員を黒兎耳の少年の
片手は大きくなってが捕まえた男の折れる骨の音が響き崩れ落ちた。


・・・ドサッ――


『フンッ、雑魚がしーに触れてもいいわけないじゃん』


そう言いながら少年は何も無かったのように黒い兎の少年と手を繋いでビルから飛び立った。


『フフッ、会えるのがすごく楽しみだよ・・・音恩兄様・・・★』


闇を照らす月だけは知っている。


この二人を出会わすことは消して許されないと


今この魔物が近づく時を知っているのはただ照らす月のみ。



03 過去とこの先
(このままのでいたい、このままでいさせない)













第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!