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いつもすごく怖い夢を見る。



いつも、朝起きると大抵僕は泣いていた気がする



でも、今日は怖い夢も何もなくって



朝、目が覚めると隣で神楽君が熟睡していて



何となく寝顔が可愛いって思えて、頭を撫でていた。



その後、もちろん目が覚められて怒られたのは言うまでも無くで・・・






02 微かな覚醒






「今度、俺の寝顔見て笑ったら怒り狂うからな」


そう言いながら不機嫌そうに歯を磨く神楽君に何度も謝りながら僕はいつもより
量の多い二人分の朝ごはんを作っている。


「ごっ・・ごめんね・・・あ、神楽君。家に電話しなくていいの?」

「あー、安心しろ。ここに住むから」

「へぇ、そっかぁ・・・・・・・・・え?」


僕は今、聞き間違えをしたような気がして・・・もう一度さっき言った言葉を聞き返してみる。


「今、何ていったの?」

「は?だから、ここに住むって言ってんだよ」

「えぇっ?!・・・おうちの人心配するよっ・・・それに・・何で?」


正直戸惑いが隠せない僕はオドオドとしていると歯磨きをしながら神楽君は僕の頭を撫でる。


「さっきから、家とか言ってるけど俺、家なんかねーからな」

「え?・・じゃあ、今までどうしてたの??」

「小学生の時に両方親が亡くなって、親戚にたらい回しにされながら中学の時に
住み込みバイトとかでかなりフラフラしてたな」

「そうなんだ・・・」

「まぁ、今じゃ慣れたことだけどな?」


僕も幼い頃、両親に捨てられてあるお兄さんに亡くなる中学三年生まで育てて貰っていたけど
それ以上に苦労していると物語る背中の傷などが痛々しくて背中に触れながら涙が込み上げてきた。


「!!・・ちょっ??!なに、泣いてんだよ」

「ごめっ・・・なんか、・・自分が・・馬鹿みたいで・・」

「あぁー・・・わりぃ、何か朝から暗くしちまったな」

「ううんっ・・・そうだ!僕、どうせ一人だし・・たまにこうして泊まってよ」

「たまにじゃなくてずっとの間違いだ」

「あ、・・・クスッ・・・そうだったね」


そして昨日の事があったからなのか、綾瀬くんからの朝の脅しもなく教室に行けてホッとしていると
複雑そうな顔で神楽君は校門を眺めていた。


「・・・神楽君?」

「そろそろ、文化祭の時期なんだな」

「うん、他のクラスは・・決まったかもしれないけど・・・ウチのクラスには関係ないよ」

「関係ない?」


去年まではV組も参加していたが、金銭盗難事件があってから今年からV組の文化祭での
参加は禁止されているため何もやらなくて良かった。
それを説明すると「じゃあ、サボれるな」って、神楽君は楽しそうに言っていた。


「でも、残念だけど・・サボれないよ」

「何でだよ??やることねーんだろ」

「ううん・・あのね・・・その代り」

「私の授業を受けていただくんですよ」

「「!!」」


そう言われて、後ろを振り向くと僕達の会話を聞いていたのか間に入って見る
笑顔の江西先生の姿があった。


「え?・・でも江西先生は・・文化祭の見回りじゃあ・・・」

「私もそうだと思ったんですが、今年は警備員をその時は入れるらしいので暇なんですよ
ですからV組の授業を引き受けたって訳です」

「ってことは、お前だから理数地獄じゃねーかよ」

「いえ、プリント授業なので私も何の教科かは知りませんよ?」

「じゃあ、今年は・・・何も問題なんか無いですね」

「それはどうでしょう」

「だな」


そう言いながら僕を見る先生と何かに思い詰める神楽君の二人の姿に「?」としか
頭には浮かばなかった。


「・・・?それってどういう」


――・・・キンコーン、カーンコーン


「おや、チャイムが鳴ったようですね。では、私はこの辺で」

「・・・何だったんだろうね、神楽君」

「さーな」

「・・・」


何か二人に秘密にされた事に嫌な気持ちが込み上げながら、先に教室に入り僕が座った後
机の上に誰かが座って見てみると、見下すように見つめる綾瀬君の姿があった。

「あ・・やせ・・くん?」

「話があるんだけど、サボれる?」

「・・・うん・・」


そう言って綾瀬君の後について行きながら屋上に上がるといつも子分さんがいる筈なのに
その姿もどこにも無くて一人屋上に捨てるように置いてあるベンチの上に座って
少し距離の離した場所に僕も座ったけど、恐怖から心臓がバクバクとしていて苦しかった。


「あんたって本当に神楽のこと何も知らないの?」

「昨日・・・初めて、会ったばかり・・・なので・・」

「じゃあ、昨日が初めてじゃないとしたら?」

「え?」

「昨日、あんなボコボコにやられたことが正直、気に喰わなくて調べてみたんだよね
神楽のこと・・・そしたらあんたと神楽は昨日で初めてじゃないことが分かった」

「それって・・・どういう・・」

「それにあんたの両親が行方不明って言われてるけど行方不明じゃないよ
この記事見たら分かると思うけど」


訳が分からなくて混乱している僕にそう言いながら投げ渡されたのは小さな記事だった。
記事に書いてあった両親の名前とそして、記されていた神楽君の名前に呆然とした。


その記事内容は両親の突然の謎の自殺?


――幼き長男の片手に握られた、両親の血のついた包丁

――神楽淵志くん、腕など数箇所の怪我

――次男の詩恩くん、行方不明?!


「それってさ、あんたが殺したんじゃないの?」

「コロ・・・した・・・?」

「弱気な感じにいたから油断してたけどまさか、そんなやつだったとはね」

(・・弟・・・?・・・自分の・・?・・なんで、かぐら・・くん、の名前?)


・・・ドックン、ドックン、ドックン・・・・・


黒い影の中から僕のほうへ走る一人の少年の顔がよぎる・・・


・・し・・・お・・・・ん・・・?


『兄様ーーー!!!』


自分の目の前が全部、赤くなって心臓は高く高くと鳴り響き僕の中を誰かが支配する感覚に
なりながらフラフラとしていると、音を立てて扉が開いてこっちに向かって走ってくる。


「音恩っ!!」

「かぐ、らくっ・・・」


僕の手にギュッと握られていた小さな記事を見た神楽君は目付きはさらに鋭くなり
素早く綾瀬君の胸倉を掴んで殴り飛ばしていた。


「人には知って欲しくねー事があるぐらいてめーにだって分かるよな?」

「はっ・・・あいにく、そう言う情報を探し出して教えるのが・・・ウチの家業なんでね」


そう言いながら神楽君に挑発のように笑う綾瀬君。

僕はそんなことよりも自分の片手に死んだ両親の包丁が握られていたという事に
呆然としているだけだった。


「てめぇっ・・!!」


綾瀬君を殴り飛ばそうと向かう神楽君の制服を僕は掴んで見上げる。


自分の全ての記憶が壊れそうで怖かった。


もし、この今の僕の記憶がウソならば・・・作られたものであるのなら・・・


――・・・ホントウハボクハダレ?


「神楽君、本当なの?僕がっ・・・」

(ソウダヨ、キミガヤッタンダ・・・フフフッ)

「誰なの?どこかに誰かいるの?」


そう言いながら僕が周りを見渡していると神楽君に両肩を掴まれ壁に押し付けられて
ジワジワとその痛みが体中に響き渡る。


「痛っ・・」

「・・!!音恩、落ち着けっ!とりあえず俺の話を」

「お父さんや・・・お母さんを・・刺し・・・僕はっ・・・ボクハ・・」

(ソウ、キミハヒトゴロシ、スベテカラニゲテルヒトゴロシ)

「音恩っ!!」


神楽君の顔が近づいて唇を合わせられて驚いていると、突然首筋に深く、刺されたような
痛みがした後、僕の視界は真っ暗になっていた。

その時、小さな声で耳に何かが囁かれた気がした。


『まだ、君は知る時ではない』と・・・――





*







江西に手刀をされて音恩は静かに眠っていて、俺は綾瀬を睨み、自然に睨みあう
形となっていたがすると、その俺達の間に江西が入った。


「困りますね、綾瀬君・・・いくら自分の家の家業だからといって神楽くんたちに持ち込まれては
そろそろあなたの家のその情報の家業を潰さないといけない事になりますね・・・」

「フンッ!あんたらに、潰されるほどウチの親父は弱くはないねっ!」

「その余裕で言った言葉、家で言ってみた下さいね・・・いくらあなたがその家の息子で
あっても恐らく軽くは許されませんよ?」

「どういう意味?・・・意味不明な脅し何てやめて欲しいんだけど」


そう言いながら綾瀬は体に巻かれた紐を下ろし


「江西は意味不明に脅したりなんかしねーよ」

「意味不明な脅しと言われたのは初めてですね、ではちゃんとお答えしましょうか」

「俺も賛成だな、一緒にやってもいいか?」

「いいえ、あなたは音恩君をお願いします。ちょっと久々に私の怒りに触れたので」


そう言って一瞬笑う凶器な笑顔に少し震えている自分がいた
屋上の空は大きく曇り、風がまとう様に吹き、江西は眼鏡をかけなおし白衣を脱いだ。



02 微かな覚醒
(思い出してはいけない、どうして君を皆目覚めさせるんだ?)











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