とりあえず息があることを確認して部屋に運び入れてみたが、一向に目を覚ます気配がない。
そもそもこれはなんなのか。
見た目はなんら人間の子供と変わりないが、唯一みみ、耳だ。 
ちょっと好奇心に負けてつついたり引っ張ったりしたが、どうやら付け耳やカチューシャの類ではないようだった。
病院に連れて行こうともしたが、普通の病院でいいのかそれとも獣医に見せるべきか判断がつかなかった。
それに、もし未確認生物だったら実験に使われて解剖されるんじゃないかと考えたのだ。







『……それで、どうしてんだよ』
久しぶりに聞いた旧友の声にはなぜか盛大な呆れが混じっていた。
「なんだよ本田! こっちゃ大事件なんだぜ!? なあ俺はどうすりゃいいんだ?もしホントに宇宙人とかだったら……!」
『馬鹿か』
間髪入れずに突っ込まれた。
『いいか城之内。そりゃウサギだ。あと携帯で叫ぶな』
「んだとぉ!? 馬鹿はそっちだ!人の話きいてねぇじゃねぇか!どこに人間の姿した兎がいるってんだよ!」
だからさぁ……。
本田がため息をつく。なんだこいつ。事の重大さが全然わかってねぇ。
『とりあえずさ、今は寝かせてんだろ?』
「おう」
寝かせて、というか毛布に包んである。
実はダンボールには真っ裸で詰められていた。
あんな狭いとこにこの雨の中、小さな身体も冷え切っていて可哀相だった。
―――それに。
『じゃあさ、お前、隣に確かオタクが住んでるって言ってたよな?』
「オタク?獏良のことか?」
なんでそこであいつが出てくんだ?
獏良というのは俺の左隣りの隣人だ。
白髪で綺麗なカオをしてるし悪い奴じゃないが、いまいち考えてることが読めない。
確かにあいつの部屋にはなんかちっせーマスコットとか人形とかでけーマネキンやらポスターやらあったりしたが。
そうかあいつオタクだったのか。
『それそれ。多分そういう奴なら俺より詳しいはずだからさ。』
「へ?」
詳しい?未確認生物に?
そんなことあるのかと言い返そうとして、あいつなら有り得るかもしれないと思い直した。
『じゃあ俺明日早いから。ウサギのことはそいつに聞け。あとお前新聞くらいとれ。』
じゃあな。そう言って電話は突然切られた。
なんなんだ。
こっちは真面目に相談してんのに馬鹿にしやがって!
兎じゃねぇつってんだろ。トモダチ甲斐の無いヤツめ。
しかしそう思いながら、昔の悪友も今はもう社会人なんだと思い出して、そんな中この夜中に電話をとってくれたのだと少し胸が熱くなった。
「って、センチに浸ってる場合じゃねえ!獏良呼んでこねぇと」
玄関を勢いよく飛び出そうとして、ふと後ろの居間に寝かせた子供を振り返る。
起きる気配はなさそうだ。
……でも、まだゆっくり寝させたほうがいいかもしんねぇ。

軋むドアをなるべく音を起てないように、俺はそっとドアを閉めた。


 
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