「もらうって、なんかお嫁さんみたいだね」
獏良は端正な顔を綺麗にほころばせた。
こいつはいつも突拍子もないことを言い出す。おかげでハァ?と変な声がでた。
「だって城之内くん、さっきからこのウサギのこと人間みたいに言うから」
「そりゃあ……」
情が移ったと言ったらそうなのだが、こいつのことをペットとして飼う気はなかった。それ以前に、これはヒトに似過ぎている。
ヒトの姿をしているものをペット同等に扱うなんて……俺には無理だ。
そう言うと獏良は頷いた。
「まぁね〜。思考回路や行動以外、人間みたいなものだもんね」
「そうなの?」
「だよ〜、しゃべるし笑うし学ぶし。動物を人間に育てていく感じかなあ。でもお嫁さんとすると……そっか」
「アン?」
上目使いにちらりと目線を投げてよこす。
つか、嫁じゃないっての。
どこまでも思考が読めない。
「大丈夫!ボクそーいうの気にしないから」はい?
ギュッと両手を包まれて「頑張ってね」って、何を?
「ボクは城之内くんがどんな異常嗜好を持ってたって、いいお隣りさんでいるよ」
そう、いいお隣りさん……て、え?
俺達ダチじゃなかったのか?離れていってね?異常嗜好って誰のことだ?
獏良は真摯に前を見つめている。
ちょっと俺は後ろを向いてみた。
当たり前だが誰もいない。
「なに見てるの?城之内くん」
うん。お前の言う異常嗜好者って誰かと思って。
前に向き直る。
獏良と目が合う。
目が………………
「……って俺か!」
「え?」
うるさいよ城之内くん、ってそうじゃねぇ!待て、獏良、誤解。それ誤解。だいたい嫁じゃない。その発想がわからない。
俺は一生懸命首をふる。
獏良はニコニコする。
涙がでてきた。
その時。
「……ン………」
「「 ! 」」
俺達の間の毛布のかたまりがもぞもぞと動いた。耳がピクピクと反応している。
「起きたか!?」
苦しげに眉を寄せる顔に頭を近づける。
額を合わせるが熱くはない。
途端、ニュッと手が伸びたと思うと、それは俺の背中にまわった。
同時にカッと目が開く。
「ヒ……」
思わず身を退くと、逆に床に押し倒された。あたたかいものが上にのしかかる。
何が起きたかもわからない俺の横で「あれぇキミ男の子だったんだね」なんてのんきな声が届く。
ドコ見てんだ。助けろ。
「じゃあロリコンじゃなくてショタコンだったんだ。うわぁキツイなぁ」
正直ひくよ〜。
それでも獏良の笑顔が崩れることはない。
そうじゃない。そうじゃないんだ。
俺は脳震盪でも起こしそうなくらい首を振った。
本気で泣きそうだ。
すると腹に顔をうめるウサギの手がさらにシャツをぎゅうと握った。
ピンピンの耳が俺の胸元をかすめる。

「ま す、たー」

少年らしい高めの声。
ひょこりとあげた顔には紫の瞳が微笑んでいた。


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