.青春を謳歌せよ.
ガタン。 軽いざわめきと共に教室のドアが音を立てる。幾名かの女子が小さく騒ぎ立てるのでそちらを見なくても誰がいるのかわかった。 チラリと目を向ければ案の定、学生服のボタンを閉める気すらない着方で立っている学年首席が、ドアにもたれ掛かって此方を見ていた。 「……制服はちゃんと着ろ、シェゾ、生徒会として示しがつかない」 「会長さんがつけてくれるだろ?ラグナス」 ああ言えばこう言うのは魔導科3年、こんな不良じみたなりをしながら成績優秀、運動神経も兼ね備え、下級生(主に女子)の圧倒的支持を得た生徒会副会長、ついでに言うなら今年度文化祭ミスター最有力候補とも言われているシェゾ・ウィグィィだ。 全く天は万物をコイツに与えたかと思うような肩書きだが、しかし残念ながら性格と態度が宜しくない。 「珍しいな、学校に来てるなんて」 「……サタンの奴が出席日数ヤバいって言ってきやがるから」 そう、コイツの生活態度ときたら制服はマトモに着ない、サボり魔、教師に対しても態度がでかい(ちなみにサタンの奴とは校長先生だ)と色々宜しくないのだが、如何せん成績がいいものだから教師も手を焼いているらしい。 「……で、何だよ?」 何はともあれ魔導科の彼がわざわざ別棟の剣術科の教室までくる目的と言えば十中八九自分しかない。 聞けば彼は軽く目を細めニッコリと、(それこそ男の俺でも見とれてしまうような)口元で甘い微笑みを浮かべた。 「……ラグナス」 案の定教室の後ろでキャーキャー黄色い声が聞こえていたが、俺は知っている。 シェゾがこう言う笑みをするときは大抵ろくでもないことをふっかけてくるときだ。 彼はその白い指をゆっくり此方に差し出して、まるでダンスのエスコートをするような滑らかな声音で。 「金くれ」 言ってのけた。 「……ダイレクト過ぎるだろ」 「じゃ、奢って、昼飯」 そんな平和な昼下がり。 −−−−−−−− ← −−−−−−−− 学パロネタです。実は設定だけ無駄に作り込んであるのですが中々出す機会がなくて宙ぶらりんのものを一本救済。 [管理] |