兄貴なんて呼べない
※親が再婚同士というパラレルです。
「あ、あ、あの…っ、駅まで、一緒に」
「約束あるから」
すがりつくような顔から目を逸らして、ありもしない約束を盾に先に家を出る。
寂しそうにうつ向く姿が脳裏をちらつくけど、無視。
先週、おふくろが再婚した。相手には息子がいる。
ふわふわのくせ毛と下がり気味の眉毛が新しい親父そっくりの、幼くて可愛いらしい顔立ちをしていてとても2つ上には見えない、『三橋廉』という名前の義理の兄貴だ。
でも正直言って、兄貴なんて絶対呼べない。
オレより小さくて華奢な体や大きな瞳、おどおどした言動はとても年上には見えないし、何より、その、可愛いんだ。色々と。
……一緒にいたらヤバいくらいに。
「はぁ」
溜息を吐いて、とりあえず駅前のファーストフードの店に入る。流石に真っ直ぐ学校に行くには早すぎる時間だった。
モーニングセットを食い終わって、そろそろ店を出ようと席を立ったところで、窓の向こうに廉が見えた。
誰かに話かけられてる。
友達……にしては、様子が変だ。
廉は怯えた風に体を縮込ませているし、相手は薄笑いを浮かべて肩に手を回してくる。
「…っ!」
思わず店を飛び出して男の腕をひっつかむ。
廉が驚いたように目を見張った。
「た、隆也、くん?」
腕を振り払って逃げていく男の背中を睨んでから、視線を廉に向ける。
大きな目がじっとオレを見ていた。
「や、約束あるって…さ、先に行ったんじゃ…」
「そこでメシ食ってたんだよ。つーか、さっきの何?」
「あ…、た、たまにある、んだ。し、知らない人に声、かけられるの」
「…まさかとは思うけど、電車の中で痴漢にあったりしてねぇだろうな」
「う…」
目を逸らされた。
「た、たまたま手が当たっただけ、だと思う」
ぜってえ嘘だ。それも、多分この様子じゃ一回や二回じゃない。
こんな危なっかしいヤツ、一人で満員電車に乗せれるか!
「…行くぞ」
手を掴んで歩き出すと、戸惑いながらも大人しくついて来る。
弱々しくではあったけど、握り返された手はあたたかった。
「あ、あのっ、助けてくれて、ありがと!」
「別に。……今日からは毎朝一緒に行くから」
「い、いいの?」
「あぁ。それから、学校終わったらメール入れろよ。迎えに行くからさ」
「え」
パチリと瞬きした廉が、次の瞬間ふわりと笑った。
「隆也くんと一緒…嬉しい」
花が咲いたみたいなその笑顔に、思わず見とれてしまう。
一緒が嬉しいって、それって……
「オレね、ずっと弟と一緒に登校したり、夜遅くまで話したりするの、夢だったんだ。だから、隆也くんがそう言ってくれるの、スゴく嬉しい」
……そっちかよ。
内心肩を落としながら、それでも繋いだ手をギュッと握る。
――まぁいいや。
ゆっくり距離を縮めていけばいい。
この手を離すつもりは毛頭ないんだから。
-END-
幸運にもキリリクさせていただいたアベミハパラレル。
まさか、まさか二人が義理の兄弟になろうとは…!
GJえむこ様!!
こんなに萌える兄弟、初めてです!
大好きです!!
是非、続編をお願いします!!
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