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飼い犬Lの散歩

今日は晴れ。
だから、昼食後に出掛けることにした。
犬の散歩。
いや、デートかもしれない。



「アッシュ〜、遅い」

「あまり先に行くんじゃねぇ」

呼ぶ声と張り上げる声。
一人と一匹。
いや、二人。
先走る駄犬と、置いてきぼりの主人。

アッシュは飼い犬を連れ、散歩していた。
とはいっても、運動不足解消などの大層なものではない。
ただ、近所をぶらついているだけ。
まるで、ルークはリードを引っ張る犬のよう。
好奇心そのものとも言うべき、飼い犬。

アッシュの服装はラフなものだ。
灰色のパーカーに、黒色のジャージを着ていた。
家を出たときは肌寒さを感じたが、今では丁度良かった。

一方、ルークの服装はいつも通りだ。
白いコートに黒いズボンという、腹出しの格好。
主人曰く『駄犬』の名に相応しく、外界に対する感覚は皆無なのだろう。

ふと、ルークがこちらに駆け寄って来る。
外界への興味心は、今では主人が勝ったらしい。
何よりも、アッシュが大好きな犬なのだから。

ルークはアッシュの前で立ち止まった。
そして、素肌の腹部を押さえ、言う。

「腹、減った」

「……さっき、食ったばかりだろう」

表情をげんなりさせたのは、アッシュだ。

昼食はオムライスだったのだ。
勿論、アッシュの手作りだ。
食後というよりも、むしろ直な食後だ。
拾ってやったのはいいが、ルークの食欲は凄まじいものだった。
それと性欲だけが構成要素のような犬だった。

当然だが、それらを与えるのは飼い主であるアッシュの役目。
だが、今食べ物なんて持ち歩いていない。

それを察したのか、ルークは口を尖らせる。

「動物虐待。愛くるしい愛犬を飢え死にさせる気かよ」

「……語弊があるぞ」

帰るまで我慢しろ、とアッシュが制するのを見越したかのようだ。
実は、アッシュもルークには甘い。
しかし、家に戻るのは面倒だ。
それから、駄犬のための食事の用意など、なおさらだ。
さらに、アッシュはげんなりする。

そんな折だ。
パーカーのポケットに、何かの感触があった。
アッシュは思い出す。
財布を持って来たことに気が付いたのだ。

「もう少し歩いたら、飯食わせてやる」

「やた!」

飛び跳ねる犬。
眺める主人。
もうちょっと、散歩は続きそうだ。


END

さりげなく、シリーズ化。
さりげなく、さわやか(笑)
早く、ガイを出したいな〜!!


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