リンの前には紙切れが一枚。 ただ今格闘中… 「ホラ、早く書けって…」 「だって緊張するんだもん!」 「バーカ!そこは住所だぞ」 「え!?やばっ!」 名前、住所欄、提出日、 その紙切れ一枚、リンと一緒に居る景色が、何だか全てが愛しく感じてしまうのだから可笑しな話だ。 目の前のリンは真剣な顔をしてこう言った。 「ねぇ!修正液って有り?」 「いや、ねーだろ。二本線引いて修正印押さなきゃダメだろ」 「うー緊張する」 「ったく…俺が引くから」 リンのドジっぷりで、住所欄に名前を書いた。 綺麗に書かれた文字に二本線を、書くのは何だかいたたまれないが、こういう大事な書類に修正液はだいたい使えない。 俺が定規を使って、真っ直ぐに引くとくすりとリンが笑った。 「何か性格出るね」 「リンは大雑把だからな〜どうせ、この二本線もフリーハンドだろ」 「む〜そりゃ普段だったらそうだろうけど…」 「こんな大事な書類にフリーハンドなんかで書かないよ」 リンは俺から書類を奪うと、しっかりと名前欄に名前を記入した。 最後の文字を書く時、綺麗な字が少しだけ、揺れていたのは見なかったフリで。 「書けたっ!」 「おー」 書き終わった瞬間にリンを抱き上げる。 リンは不服そうに俺に抱き着いてきた。 「ね、ホントにこれ提出するの?間違えちゃったし、新しく貰って書き直そうよ」 「いや…何か俺達らしくていいんじゃねぇ?」 「確かにね!」 ふふっと笑ってほっぺにキスをされる。 こんな紙切れ一枚だが、俺達にとっては大切な一枚だ。 何ていったって… 「んじゃ、提出しに行くか」 「えっ!もう!?待ってよ、まだお化粧だってしてないし」 「あ?必要ねーよ、可愛いから」 さっきのお返しと言わんばかりにほっぺにチューをする。 顔から火が出そうなリンが可愛くてしょうがない。 手を繋いで。 外へ出てさっきとは違う、空気を共有する。 リンが隣りに居る景色は悪くない。そう思ったら、嬉しくて思いきる腕を振り回してやった。 「これと、対になる紙に書かないようにしたいね」 「当たり前だろ」 振り回した手はしっかりと握られてる。 やっと捕まえたこの手を俺は絶対離しはしないだろう。 「よろしくな、奥さん」 恥ずかしいから小さな霞むような声で、 俺達の記念日は、雲ひとつない快晴だった。 〜〜〜〜〜 ご察しの通り、紙切れは婚姻届です(^ω^*) 対になる紙は離婚届けですね! 自分の文才力の無さでわかってもらえるか不安(>ω<;) またリベンジしたいです 読んで下さってありがとうございました! モドル [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |