春、桜舞い散る。
あの後帰ってきたリンには努めて明るく振舞った。
自分の汚い感情なんて何にも気づかず。
最高の笑顔を俺に向けて。
もう、リンの傍には居れない。
自分では隠したつもりでいたこの感情が。
爆発しそうだったから。
桜舞うこの良き日から、
俺はリンを避けるようになっていた。
「よー!レン同じクラスになったな〜」
「・・・・・。」
俺の隣の席に、カイトが乱暴に荷物を置く。
新学期、無事に2年生になった俺らは何故かバンドメンバー全員が同じクラスになった。
「ミクも一緒だし、最高のクラスだな!」
「・・・・。」
「なんで黙ってるんだよ、レン?」
別に、カイトの声が聴こえていなかったわけじゃない。
ましてや、同じクラスが嫌な訳ではない。
「そういえば、リンも一緒なんだよな!良かったじゃん!」
カイトがそういった瞬間、俺の前の席に見慣れた鞄が置かれる。
猫のぬいぐるみが付いた・・・
「よ!はよ!リン」
「おはよ、カイト。ねぇ、レンここに座ってもいい?」
「・・・・・・。」
「あ、何か、こいつ変なんだよ。俺のことも無視するし・・・」
カイトが言い終わるかのところで俺は席を立つ。
冗談じゃない。何の為にリンから離れたと思ってるんだ。
窓側の席から、反対側の廊下側の席へと移動する。
「何かあったのか?」
「うん・・・。最近レンと話してないんだ」
そんな会話が聞こえてくる。
嫌だ、聞きたくない。
音楽プレイヤーの、電源をつけボリュームを上げる。
そうやって俺はリンから逃げ続けた。