sideM
「ぁの…先輩!」
辺りを見渡しても、今話しかけてきたコ達と俺以外は誰も居なかった。
もしかしてこれは、俺に話しかけてるっ…!?ぇ、ど、どうしよう…女子に話しかけられた!ぉ、俺なんかに何の用ですかぁ……?
「あの、先輩は矢崎先輩と付き合ってるって、ホントなんですかっ?」
……………
………ハァ(゜Д゜)ノ??
あまりにも突拍子の無い質問に、暫く俺はフリーズしてしまった。
「えっと、そ、それはどういう意味ですか…?」
年下相手に敬語っていうのも何だか情けない。
「あれ?違うのかな?」
「いや、きっと言いづらいんだよ。」
「じゃあ質問変えてみる?」
一年の女子達は俺の前で何やら話し合いを始めた。何だか落ち着かない。
「じゃあ、何処までいったんですか?」
「ちょっとっ、ストレートすぎだって!」
「大丈夫だって、ぁ、ちゅーとかしました?」
!!?それなんで知ってんの!?
「な、なんでですか…?」
俺の反応に、女子達が満面の笑みを浮かべた。
…なんなんだよ……
「だって、学校中で噂になってますよ?」
「噂?」
「隠さなくて良いじゃないですかぁ。この前廊下で手繋いでるとこ見ましたよ?」
「いやあれは……え、じゃあ、噂じゃ俺達が付き合ってる事になってるんですか?」
「はい、結構有名ですよ?」
「…はぁ、そうなんだ……」
―――……
確かに、なんとなくおかしい気はしていた。
最初は、俺がこんな性格だから気遣って優しくしてくれてるのかと思ってた。にしても優しすぎる。休み時間の度に俺のとこ来てくれるし、男同士で手繋ぐのだってやっぱり変だ。あれじゃ疑われてもおかしくない。
でも、変だとは思っても、あの綺麗な顔でふわっと微笑まれたら何も言えなくなるんだ。
もしかして…わざとやってんのか?俺、からかわれてる……?
「あー、松井ー!」
ネガティブシンキングに陥りそうになった時、何処からか声がした。そっちに目をやると、矢崎君と仲が良い岩瀬君が居た。
走ってこっちに来る。俺の目の前に来ると、彼の身長が俺より低いせいもあって、上目使いで見つめられた。
そ、そんなチワワの様な目で俺を見ないでくれっ!!君の目が汚れちゃうよ〜っ!
岩瀬君は滅茶苦茶可愛い。本当に女の子みたいだ。いや、その辺の女子よりずっと可愛いかもしれない。肌は白くて凄く綺麗だし、何も塗ってないのに唇はいつもピンクだし。まつ毛なげぇし、爪楊枝三本ぐらいは乗っちゃいそうだ。そんな彼が俺に話しかけてくるなんて、さっきの女子達もそうだったけど、やっぱ矢崎君と仲良くなってからだよなぁ……
前までは考えられなかった。俺なんか気にする奴は居なかったし…居ても気持悪がられるか、馬鹿にされるかで、殆ど俺は空気みたいな感じだった。
今は何だか、戸惑いはあるけどちょっと嬉しい。矢崎君と居ると心強くて、暫く手首も切ってないし、傷も癒えてきた。
でも、もし俺が矢崎君に裏切られたら、どうなっちゃうんだろう…俺には矢崎君しか居ないのに……
さっきの不安が蘇った。
「…つい、松井?」
「あ、ごめん。」
考え事をしていたせいで、岩瀬君の声が耳に入らなかった。
俺のバカっ。岩瀬君をシカトするなんてありえないぞっ。
「矢崎が探してたぞ?」
「…ぁ……」
「ん?喧嘩でもした?」
「いや!してないよ!」
「…そう。なぁんだ、つまんねぇ。」
「…?」
「ねぇ松井、ホントに矢崎でいいの?」
彼は何が言いたいのだろう。
「あいつマジで変態だよ。襲われちゃうよ?滅茶苦茶にされちゃうよ?いいの?」
「何、それ…」
「だからぁ、松井は矢崎のものになった訳じゃん。」
「……あぁ」
「あ、やっぱ意味解ってない?変だと思ったんだよなー。」
本当にさっきから岩瀬君の言葉が理解出来ない。
「あぁあ、あいつバッカだぁ。全然相手にされてねぇじゃんww」
「そんな、俺の方が…!」
「あー、違う違う。想いの種類の話。」
「種類?」
「松井ってあいつのこと友達って思ってんだろ?」
「違うの?」
「ッハハハハwwww」
爆笑された。面白い事言ったっけ俺。
「矢崎は松井の事彼女って思ってるよ。」
「…俺、男ですけど。」
いやいやいやいや!!だから違うんだっての!俺、からかわれてるだけなんだよ。あんなカッコイイ人が俺みたいなゴミ野郎好きになる訳ないだろ。皆騙されてんだ。そう考えるのが一番しっくり来る。もしくは皆グルなのか…?なんなんだよ、もう誰も信じらんねぇ……
「嫌ならちゃんとふってあげなよ。どうせ男と付き合うならお前みたいな変態より岩瀬君が良いですってさ。」
「………へ?」
「だからこれから俺は岩瀬君のものです、って。」
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