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口の中をかじると、血がぶわって出る感じ。

あー止まらない、
好きなんだわ。


「受験生って感じだな」


放課後の生徒会室で勉強中の私に、声をかけてきたのは阿久津。
あまりに突然のことで、持っていたシャーペンの芯を折ってしまった。


「なっ、なななんで阿久津がここにいるのよ!?」

「生徒会室に行けばホッチキスを借りれるって聞いてな」

「あ、そう…」


あー残念。
私に会いにきてくれたなんて、図々しいこと考えちゃった。

「ホッチキスはそこの棚、あと貸し出しノートにクラスと出席番号と名前を書いといて」
とだけ言い、教科書に目を向けた。
もっといろんなことしゃべりたいのに。
でも、これが私の精一杯。

教科書越しにホッチキスを見つけた阿久津を覗く。
すごい好き。すごくすごく。



「矢射子、ありがとな」


ノートに書き込み終わった阿久津が顔を上げ、私を見てそう言う。


「別に、生徒会として当然なことよ」


あー私のばか。
なんでもっと可愛い返事ができないんだろう。


「それじゃあな」


私に背中を見せ、ドアまで歩く阿久津。
こんな時、なんて言えばいいのだろうか。
好きな気持ちは止まらないのに、いつも空回りで終わってしまう。

近づきたいのに、追いつけない。



「あ、あ阿久津!」

「ん、何だ?」


呼び止めたら、振り向いてくれる。
それはあなたにとって普通のこと?

でも私にとっては特別で幸福。


「ホッチキス、絶対に借りた本人が返しにくるのよ」


また生徒会室を訪れるであろう阿久津に今度は何を話せるだろうか。




■あとがき
阿久津が好きな矢射子と、矢射子をどうも思ってない阿久津との温度差の話。

いつか両想いになーれ!






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