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拍手、どうもありがとうございますっ!
もはや誰も覚えていないであろう黒槍盾、漸く続きを書けました……^^;
……何ヶ月ぶり?←










『忘却の末路』(黒槍×盾B) 





「盾くん、ほらっ!起きなさい」
「うぅ……」
「こら、もう九時よ!いつまで寝てるの」
「………」
「んもう、盾くんったら……えいっ!」
「んぎゃあぁぁ!!」


重い瞼を持ち上げる事ができずに唸っていると、母さんは無理矢理オレの布団を剥ぎ取った。途端に窓から燦々と差し込んでくる日光に晒され、目の前が真っ赤に染まる。柔らかい眼球を焼け付くされるような感覚に陥り、オレは思わず悲鳴を上げてしまった。


「うぅ……め、目が……」
「もう、盾くんってば。ホント、朝は弱いんだから」
「目が……む、無理……」
「まったく……。ホラ、とっくに先生がいらしてるわよ」
「……先生……?」


起き上がってゆっくりと目を開けると、チカチカする視界の端に見慣れた金髪が映り込んできた。日光を反射するそれを不快に思い、オレは目を眇める。すると、鋼野は何故か上機嫌な様子でこちらに近づいてきた。


「やーっと起きたか、盾!待ちくたびれたぞ!」
「………」


寝起きに会いたくない人物No.1が目の前に。休日の朝から、最悪の事態に見舞われてしまった。


大体、母さんもこんなヤツをホイホイ家に上げるなよ。コイツに関わると、いつもロクな目に会わないんだ。今日もまた、毎度に違わず非常に嫌な予感がする。


「……何で、鋼野がここに……?」


気乗りしないが、一応訊ねてみる。至極当然の疑問であるはずなのだが、何故か鋼野はあからさまに驚いた様子で目を丸くした。いや、全然可愛くねぇから。


「何言ってんだ、盾。昨日約束しただろー?一緒に出かけよう、って」
「……は?」
「忘れたとは言わせないぜ、盾。オレ達は、あの日あの時あの場所で……」
「っていうか、約束してねぇよ!」


勝手に人の記憶を捏造するな!大体、どうしてオレが鋼野なんかと男二人で休日に出かけなくちゃならないんだ。いくらなんでも寂し過ぎるだろ!?


しかし鋼野は全く悪びれる様子もなく、涼しい顔で窓の外に目を遣っている。いつもの事だが、かなりイラっとくる。ホント、もうヤダこいつ……。


「盾、早く着替えろよ。さっさと行くぞ!」
「……ドコに」


そう言うと、鋼野は『待ってました』と言わんばかりに床に置いていた大きなリュックを背負い、笑顔で言い放った。


「冒険しに!!」
「行かねーよ!!」


嗚呼、聞くんじゃなかった!





* * * * *





「はぁ……」
「楽しかったなー盾」
「いや、全然!?」


結局、オレは例の如く鋼野のワガママに振り回される破目となってしまった。


冒険と称した単なる散歩に付き合わされること、数時間。鋼野はある程度満足したのか歩き疲れたのか腹が減ったのか、突然『そろそろ帰るか』と言い出した。


時刻は大体午後三時。案外早く帰ることが出来そうで、オレは内心ホッとしていた。


「やっぱ、盾と一緒だと楽しいなぁ」
「……?い、いきなり何だよ……」
「でも、盾は盾だよな〜」
「?」


鋼野はふと立ち止まると、そんな事を呟いて己の瞳にオレを映し出した。


柔らかい表情でオレを見つめる鋼野、困惑しつつも視線を外す事が出来ずに見つめ返すオレ。え、何このシチュエーション。


何だよ、そんなにジロジロ見んなよ。『盾は盾』って、一体どういう意味だ。地味だ、って言いたいのか?まぁ確かに、オレは何処にでも居そうなフツメンだ。それは認めるけど。つーか鋼野のヤツ、ちょっとオレよりイケメンだからって調子に乗るんじゃねぇぞ。


そんな事を考えているうちに、だんだんと腹が立ってきた。しかし鋼野は、いつまでも微笑んだまま視線を外そうとしない。


何だかバカらしくなり、オレはくるりと鋼野に背を向けた。


「帰るわ」
「……盾」
「っ!?ちょ、何……?」


一歩前へ踏み出そうとしたが、身体が動かない。ほんのりと背中が温かい。誰かの両腕が、ゆっくりと上体に絡み付く。


「……ぁ……」


もしかして、いやもしかしなくても……オレ、鋼野に抱きしめられてる……!?


「や、やめ……っ!」
「やっぱり盾は、可愛い」
「っ!?」


腕をバタつかせて振り解こうとした瞬間、耳元でそっと囁かれた。


「可愛いよ」


何も言葉が出てこない。何か言いたいのに、言わなきゃいけないのに、頭の中は真っ白で。だけど、これだけは理解できた。オレ今、顔すげー熱い……!


暫くの間抵抗もできずに呆然としていると、ふわりとした余韻を残しつつあっさりと鋼野はオレから離れていった。


そして未だ放心状態のオレの正面に回り込み、まるで子どものようなとびっきりの笑顔をオレに見せる。


「んじゃ、また明日な!」


鋼野は爽やかにそう言うと、走ってどこかへ行ってしまった。


「……ってオイ鋼野、ちょっと待て!」


明日もオレに付き合わせる気かよ!?


「……はがねの……」


……つーか、今の……何なんだよ……?


「はぁ……」


オレは熱い頬を何とか冷まそうとさすりながら、自宅への道をトボトボと歩き出した。


───その時───。


「……い、痛っ……!?」


突然背後からものすごい力で肩を掴まれ、オレは身体を硬くした。


「何処へ行っていた」
「……え、や……やりざき……?」


恐怖のあまり首だけでゆっくりと振り向くと、険しい顔をした槍崎が至近距離からオレを睨み付けていた。


いつもの槍崎なら可愛らしい顔で、『やぁタテ君』と小首を傾げながら挨拶しているところだ。しかし、そんな様子は微塵も見せない。


「誰と、何処へ」


凄む様な槍崎の声音に、思わず背筋が凍りつく。


「タテ君……」
「……ぁ、」


そうだ。


思い出した。


オレは、槍崎と約束していたんだ。


一緒にお昼を食べよう、って。


(……ヤバ、すっかり忘れてた……!)


そうだよな。いくら温和な槍崎だって、約束を破られたらさすがにキレるよな、うん。


オレは身体中からだくだくと流れる冷や汗を遠くに感じながら、謝罪の言葉を口にしようとした。


「あ、あの、ごめん、槍崎……オレ……」
「質問に答えてくれ、タテ君。わしとの約束を破ってまで、一体誰と何処へ行っていたんじゃ?」


ジリリとにじり寄られ、思わず後ずさる。ヤバい、目がマジだ。この様子からすると、槍崎は相当怒っているらしい。これは嘘など吐かず、正直に白状したほうが良さそうだ。


しかし、それは何故か裏目に出る結果となってしまった。


「……鋼野と、散歩を」
「鋼野だとッ!?」
「うわっ!」


ドン、と何かが強く胸に当たった。同時に、背中に痺れるような痛みが走る。


「……いっ!痛い……やりざ、きっ!」


何が起こったのか理解するのに、数秒掛かった。オレは声を荒げた槍崎に突き飛ばされ、電柱に背中を強打したのだ。


「……どうやら、お仕置きせんといかんようじゃの……」


オレを冷たく見下ろす彼の目は、もはや何の光も宿していないように見えた。


(こ……怖い……っ!)










TO BE CONTINUED…
────────────────────
続きます!(また……。
漸く黒槍の本性がデタ───(゚∀゚)!!そして鋼野、出すぎ……。いや、好きだから良いですけどっ!!
原作であまり出なかった分、ここでは出したい……(おま
槍崎が鬼畜に見える><;

拍手、どうもありがとうございました!!!

2008/11/09









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