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夏の香りが色濃く残っている。

容赦ない光をその身に反射する屋上は、照りつける眩しさに思わず目を手で覆いたくなるほどだった。今日から九月のはずなのに、肌を刺す熱は昨日までのものと変わらない、もしくはそれ以上の気さえする。夏休みだって練習に大会に、まるで休みじゃなかったからな、などと苦笑いを浮かべたところで、腹の虫が鳴いた。この暑いのにここにきたのは、先にいるはずの彼に会うためで。

「みずたにー」

温い風がドアを閉める音を聞いた。辺りを見回しても、肝心の水谷の姿は見あたらない。
あまりの暑さに、ひとまず日陰になっている給水タンクへ足を向ける。ドアからタンクまでは約20メートル。ふぅ、と一息吐いて、手で目の上に日除けを作ってから歩き出した。


眩しさに目を細めた先に、タンクの日陰から横たわった人の足、それも左の膝下だけが覗いているのが見えた。その足は自分のよく知っている、踵が履き潰された靴を履いている。


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