※中途半端に始まり中途半端に終わります※
※過呼吸ネタ※

始まりはなんだったのか覚えていない、ただ、いつものようにラグナスがシェゾの素行を注意した、そんな感じだったと思う。
あまり勝手な行動をするなとか、そんな類の。

「お前らはどうしてそうなんだよ!人の気も知らないでいつも好き勝手に…!」

それにシェゾが、反発する様に吠えたのだ。いつも、自分を責め立てる、光の勇者に。

「俺が…、俺は……っ!!」



ひぅっ。








.何が罪ですか.






此方を睨みつけて吠えたシェゾの、息遣いが、一瞬変わった。
それに気づいたか否かのタイミングで、続いてかたかたと、かすかに指先が震えだすのをラグナスは見た。
同時に、彼の表情が見たことの無い、今にも泣きそうなそれに、歪む。
まるで、己の身体の変調に、自分自身を嫌悪するような。

瞬間の展開だった。

かくんと膝が落ちる。
シェゾがかすかに震える右手で、強く胸を押さえて方膝をついた。
強く、強く押さえて。
思わず、反射的にラグナスが伸ばした手は激しく拒まれた。

「お、おい…?!」
「…ぅ、る、…さっ……っ、はっ!」

何かが、おかしい。
シェゾが手を払うと同時に吐きだした言葉は最後まで紡がれることはなく、呼吸がさえぎった。
呼吸が、おかしい。シェゾのそれは明らかに呼吸回数が多い。

途惑うラグナスの前で膝をついたシェゾが荒い呼吸を繰り返す。

「はぁっ、ざ、け…はぁ、んっ、な…っ」

右手で胸を抑えたまま、左の手で乱暴に自身の髪をつかむ。
焦点の定まっていない瞳が滲む。
荒くなる呼吸を無理矢理押さえ込むように、しかし止まらず激しい呼吸を繰り返す。

激しい呼吸、激しすぎる。
これは。

ラグナスも膝をつき、シェゾに視線を合わせるように覗き込んだ。
この症状に覚えはあった、この症状自体は別段珍しいと言うわけでもない。
だが、ただ。

(過呼吸?…シェゾが?)

ただ、まさかシェゾがその症状を引き起こすとは思わなかったのだ。

症状の正体に気づいたラグナスがゆっくりと、肩で息をするシェゾに近づいて肩に手を置いた。
今度は拒否されなかった、のは、今の彼に周りを気にする余裕が無いからなのだろう。

「シェゾ?」

口元に顔を近づければ彼の荒い呼吸の間から、不規則に言葉が震えていた。

「はっ、俺だっ…はぁ、なか…っ、好きで…っ、こん、なっ」





(だって、しかたがないじゃないか)(コレが運命なんて信じたくないけれど)

(既に自分の魂は人間としてはどうしようもないほど穢れてしまっている)
(光の下を歩くことに弱いわけでは決してないが、既に闇に染まらずに歩くのは不可能な身体だ)
(それなのにいまさら何をどうして、人としてまっとうな道を生きることが出来るというのか)

(否定しても否定されてもだってこの生き方しか残ってないから、もう諦めたんだ)
(自分のために生きるんだ、自分のためにしか生きられないんだから)
(諦めたんだ諦めざるを得なかったんだ今更今更今更)

(今まで生きてきた人生を)
(否定しないで)





「ひとりっ、で、…はぁっ」

生理的な、ものだろうか、荒い呼吸の収まらないシェゾの額を流れる汗と共に、陰った瞳から一筋透明なそれが頬を流れた。
肩で呟きながらも、自力で二酸化炭素の足りなくなった脳を抑え、無理矢理呼吸を整えようとしている。

弱いことを恥とする彼だから。

何が何でも自分でなんとかしようというのだろう。
おそらく過呼吸に陥った自分を恥じている。
だから自分の呼吸の変調を悟ったときにあんなに泣きそうな顔をしたのだろう。

弱いことを罪と思う彼だから。

「…無理しすぎなんだよ、シェゾ」

それがあまりに居た堪れなくて、ラグナスはシェゾの肩を押さえて、強引に唇を重ねると己の口から直接シェゾに二酸化炭素を送り込んだ。
呼吸が安定した彼から平手打ちが飛んでくることは予想できたけれど。

だけど手を貸さずにはいられなかった。

(君は決して弱くない)
(だから)



(この感情がたとえ同情であったとしても)



抱き寄せた身体、縋るように伸ばされた手が弱く、けれどもきつく、ラグナスの胸を掴んだのをきっかけに、もう一度唇を重ねた。





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.BACK.
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あえて特別コメントはいたしませんがまぁ過呼吸って萌える!ということです。



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