.不快指数3割増.






「シェゾ…泳がないの?」
「何で」
「何でって…せっかく海に来たんじゃないか」
「おまえらが無理矢理連れてきたんだろうが」
「んもぅ…」

付き合い悪い、と。
ぷぅと可愛らしく頬を膨らませるアルルの隣で、しかし上着を羽織ったまま頑として動こうとはしないシェゾは、頭痛と目眩が押し寄せる頭を押さえてパラソルの下の椅子に腰を下ろした。視線をずらせば、太陽の光をうけてギラギラ輝く海が此方を笑っているような気がした。

ジリジリと太陽が照りつける砂浜を遠巻きに見送ってため息をひとつ。

「頼むから、他の奴と遊んでこい」

正直この灼熱の下ではしゃぐなど勘弁願いたいのだ。此処までは周りに連れられて渋々ついては来たものの、事実それだけでもシェゾとしては大したものだった。

実は、とかく彼は暑さに弱い。
闇の魔導師だからなのか、生まれの問題なのかは分からないが。

本来なら、宛がわれた部屋で一日中、冷却魔導の効いた中で寝ていたいくらいな、のに。

今でも自分で服に冷気魔導をかけて熱の調整はしている。だが、空間自体が暑いのは正直どうしようもないのだ。サタンの様に馬鹿みたいなポテンシャルと技術とがあればあるいは、この中での体感温度の設定も可能ではあるだろうが。


「弱いわね、これだから魔導師ってやつは」
「うっせ」

隣でその豊満な身体を余すことなく太陽に晒したルルーが鼻を鳴らして言った言葉に言い返す気力もない。

とにかく、暑いのだ。どうしようもなく。

何とでも言えというシェゾの態度に、笑いながらサタンが去り際に口を挟んで行った。

「さては御前カナヅチだろう」
「五月蝿い黙れ死ね貴様」





(不快指数3割増)

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.BACK.
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暑いですね、という夏の日に書いたものをいまさら格納してみました。



あきゅろす。
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