.一致団結.
(太陽の君のために)

(過去を繰り返しながらボクらは前に進む)




謎の頂上。それが、この空間の名前だ。

「いやぁ懐かしいなぁ」

塔の最上階でサタンは腕を組み、空を見上げた。

天気は快晴、風は微風、季節柄多少の暑さは否めないが、そこはそれ、サタンの膨大な魔力で張った障壁で、余計な熱と女性の敵である紫外線を綺麗に遮断している。
吹き抜けにいながらにしてこの快適さ、流石は無駄なことに浪費を惜しまない魔王様だ。

向かいに佇むルルーもそれに幸せそうに微笑みを返しながら、空を見上げて頬を撫でた。

「そうですね、思い出しますわ」

言いながら側を歩いていたカーバンクルを抱き上げる。
思い出すのは過去、この塔で自分達が繰り広げたぷよぷよ地獄のこと。あのころも自分は頂上にいて、サタンの前で少女を待っていたのだ。

あれもそれも今となってはいい思い出だ。

そして今、この場に、カーバンクルと共にサタンの側で過去に想いをはせている、それは、ルルーにとって至福の喜びであった。




この男さえ、いなければ。

「…今、5階に到達したとさ」

そう、不機嫌そうに伝令を伝えるその邪魔な男、シェゾに、さらに不機嫌そうな視線を送るルルー。シェゾはその視線には慣れたらしく、ため息と共に黙殺した。

そんな無言のやり取りに気付いているのかいないのか、サタンは楽しそうに視線を下ろすと、この頂上に続いている唯一の扉を見て笑う。

「そうかそうか、では直に来るか」
「これ迄の換算から言うと12分後らしいぞ」
「1階層12分か、腕を上げたな」

満足気に頷くサタンと、何で俺がこんなことを、と、毒づくシェゾを見て、ルルーも意識を半分飛ばしていた夢の世界から現実へと引き戻す。
そう、このカーバンクルは別に自分がサタンの妃と認められたからここにいるのではなく、この塔も二人の住みかというわけでもない。残念だが至福の時は終わりだ。

「何言ってんのよ、アンタも少しは何かやるべきなのよ」
「だから何で…」
「乙女心がわかんないのね」

やれやれと肩を竦めたルルーの後ろで、サタンが言葉を継いだ。

「私は企画をし、場所を用意した。ルルーは料理と会場を。ならお前も雑用くらいはやれ」

そう、これは、過去のぷよぷよ対戦を模した、盛大な、アルルの誕生会なのだから。





『我が妃アルルへ
 カーバンクルちゃんは預かったので、返して欲しくば否が応でも、何がなんでも、今日中に私のところに取り返しにくるのだ
  サタンさま』

全てはこの文面が始まりであり終わりである。

カーバンクルを囮(?)にし、アルルを招待する。
かつての塔を完全再現し、何だよサタンネタ切れかよと思わせたところで、頂上についたらハッピーバースデーという作戦だ。

その企画と塔の再現をサタンがし、ルルーは誕生会のための料理を手配した。
そして同じ頂上仲間(?)のシェゾにはカーバンクル誘拐と他の雑用を頼んだと言うわけだ。

「階下はアルルとぷよで勝負するっていう仕事があるのよ、アンタだけ何もなしってわけにはいかないでしょ」

そう告げるルルーの言葉は正論ではあるのだが、だがしかしもう少し何か無かったものかとシェゾは顔を顰める。というかそもそもなんで自分はアルルの誕生会なんかにいるのかという疑問がよぎるが、もはやそれは考えないことにした。

どちらにしてもそろそろ12分が経つ。すなわち、アルルがこの会場に到着する頃だ。

アルルのらしき魔導力が、いまちょうどここに通じる階段に移動したところだ。シェゾは本来の位置(順当でいけば次にアルルとあたるのは自分な訳だから)、扉の近くへ移動する。
サタンも気づいたのだろう、ルルーに、配置に付くように命じた。

カーバンクルは待ちきれないのか、頂上の扉の前に、主人か来るのを今か今かと待つように、既にちょこんと位置していた。

運命の瞬間というほど大げさなものでもない瞬間が、今、訪れる。




太陽の光を受けながら、ゆっくりと開かれる扉。おいしそうな料理の香りが鼻をつく。
睨むように扉に視線を送りながら、今更ながら。

(サタンは)
(ルルーは)
(シェゾは)

なんて平和なんだろうかと。
今更ながらに、感じた。



(ボクらの愛する彼女の、ために)


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無駄に二部構成。
平和な感じが出したかったとかごにょごにょ。
こういう馬鹿なことを全力でやるのが彼らの魅力でもあると思っているのですよ。
因みに1階層12分てゲームで言えばあきらかに時間かかりすぎなんですが実際移動時間とか階段登ったりとかあるので多目に見てくださいな。(笑)
あ、シェアル落ちです、一応。




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