ほんと短いつまんないお話ですが…せめてものクリスマスネタを(笑)
◆恋人はサンタクロース
聖なる夜に
大切な人との
ロマンティックな祝福を
「………さむ…」
携帯を片手に、受信された広告メールを一通り読んでそのまま削除ボタンを押す。
真っ先に浮かんだ相手との間に、ロマンティックなんて言葉はどうにも合わない気がする。
消えたメールを確認して、パチンと携帯を閉じた。
電車に揺られ、窓から外を眺めると、横切った街並みは見事なイルミネーションで飾られていた。
「……もう、10時か…」
もう一度開いた携帯の時刻を確認して、窓に寄りかかる。
今日は、クリスマスイブ。嫌と言う程聴かされたクリスマスソングも、イルミネーションも、明日を過ぎれば消えていく。
毎日を忙しなく生きていると、そんな日すらこうやって普通に過ぎていくのだと、この同じ車内にいる社会人達に変な仲間意識すら抱いてしまった。
そんなものは、関係ないのだと。
「……ん?」
すると、鞄の中で静かに携帯が震えた。取り出すと、一通のメールが受信されていた。
―仕事お疲れ!
気をつけて帰ってこいよ
お前のサンタさんが待ってるぜ〜\(`▽')/
愛してる
―
「………ばっ…」
思わず、顔が熱くなるのを感じた。何だか無性に恥ずかしくて、それを隠すように、急いで窓の外を見た。
過ぎて行く景色を目で追いながら、急に早くなった鼓動がヤケに全身に響いて落ち着かない。
こんなメール一つで、こんなにも簡単に乱される人間だっただろうか。
そんな自分が信じられなくて、でも、この感情は、確かに彼に対してでしか感じない特別なものだ。
―
ばぁか
俺も だし
―
こんなたった二つの単語でも、家で待つ彼の喜ぶ姿が、思い浮かんだ。
鉢屋はそんな彼を小さく笑って、ソッと送信ボタンを押した。
家までの距離は、あと二駅と、数百メートル。
さぁ、早く、帰ろう。
きっと、サンタクロースが待っている。
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