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竹♀くく



腰にまとわりつく小さな恋人を、当然無理に払い退ける事などできる訳もない。
竹谷は、観念したように動かす手を止めた。

すると、見上げてくる大きな瞳が嬉しそうに輝き出した。



「こ〜ら、兵助。…飯作れないだろう?」
「……ん」
「…ははっ、どうした、腹減ってるんじゃないのか?」


甘えモード全開なのだろうか。腰に抱きついて離れようとしない彼女の髪を、優しく撫でる。
サラ‥と髪が揺れる度にシャンプーの良い香りが鼻を掠めて、思わずドキリと心臓が揺れた。

可愛い可愛いと思わせる反面で、見え隠れする彼女の色気が本当に堪らない。
夜は特に、だ。
この手で、その華奢な身体に触れる度に響く甘い声とか、柔らかなそことか。
涙で濡れた瞳が、全てで欲しいと訴えてくる瞬間がもうどうしようもなく、愛おしい。

髪にソッと口付けを落とすと、花のような笑顔が、目の前に可愛らしく咲いた。



「…今は、はちがほしいの」

「………っ」
「……?」


顔が、一気に熱くなるのを感じた。
全く、不意打ちは本当に勘弁してほしい。

また君を、好きになってしまう。
これ以上惚れさせて、一体どうしてくれようか…。


もう、これでは一秒足りとも離せないではないか。



「……はち?」
「……っ、ああもうっ!」


小さな身体を、思いっきり抱き締める。

ああ、もう、これはどうしようもない。



「……好きすぎて、どうしよう」
「……えへへ、私も、すき」

「……っもおぉ…可愛すぎだろぉ…」



今更、もう遅い。
だって彼はとっくに、彼女の虜なのだから。












鉢♀雷



この距離が、憎い。こんなもの、直ぐにでも無くす事はできるのに…、それを許して貰えないから一層憎い。

今すぐ、あの柔らかな身体を抱き締めて、そして、あの優しい手にいっぱい撫でて貰いたい。
彼女の優しい香りに包まれて、思いっきり甘えたい。


何て事を友人の前で言ったら、きっと、本気で頭を打ったのかと心配されるのだろう。
何て言ったって彼は、他人に全く興味を抱かない、冷血な人間とさえ言われているのだから。


しかし、彼女の前では、そんな性格さえも見事なまでに逆転してしまうのだ。



「…らいぞぉ」
「…ダメ!それ以上近付いたら……今日は口もきいてあげない!」
「…!…そんなぁ…」



こうなってしまった原因は、勿論彼にあった。


まぁ所謂、彼女にかなりの無理をさせてしまったのだ。
毎回の事と言えばそうなのだが、昨晩は特に、テスト開けの解放感もあって、歯止めが利かなくなってしまった。

その間にお預けを食らっていたのだから、仕方がない。


しかしそれのせいで、今朝から雷蔵に触れさせて貰えないという拷問にあってしまったのだ。
はっきり言って、既に我慢できない状態が続いているのだから、一日も耐えられる訳がない。

しかしこのまま欲に任せてしまっては、本当に嫌われてしまう。それだけは、絶対に嫌だ。


仕方なく鉢屋は、泣く泣く雷蔵から離れてソファの隅に座り込んだ。
側にあったクッションをぎゅっと抱き締めてみても、彼女の温もりには到底かなう訳もない。


柔らかくて、温かくて。いつも凄くいい匂いがする。
そして優しく、頭を撫でてくれるんだ。可愛らしい声で、いっぱい名前を呼びながら。




「……っ」

いつから自分は、こんなにも女々しい男になっていたのだろうか。
彼女に嫌われたかもしれないと考えるだけで、本当に涙腺が緩むなんて……情けない。



「……三郎?」
「……っ」

「…ちょっ、三郎?…まさか、泣いて…」
「……うぅ゛〜」

「……さっ…三郎…」



その、まさかだった。

まさか、本当に泣き出すなんて…と、雷蔵は暫し唖然としてそんな彼を見つめた。
そして小さくため息を吐いて、彼の隣に座った。


全く、本当に仕方のない子だと、それでも愛おしいんだからどうしようもない。
所詮、自分も、彼にはかなわないのだ。


「…ふふ、三郎」
「……」
「……泣き虫」
「…っ、らいぞぉの…前っ、だけだ」


涙に濡れた声で必死にそう漏らす彼が、本当に可愛くて。
雷蔵はとうとう、張っていた気を緩ませて両手を彼に向かって広げた。



「…もう、仕方のない子だね。三郎は」
「……らいぞ?」

「……ほら、おいで?」


そう言って微笑む彼女は、いつもの優しい、彼女だった。
クッションを放り投げ、そうして抱きついた腕の中は、やっぱりこの世で一番の、楽園だった。








≫久しぶりに書いたのが超短編ですみません^q^;
♀化好きすぎる〜〜////








あきゅろす。
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