ゼロスはじっとロイドを見つめていた。

自分の行動は、ロイドを傷つけるだろう。
わかっていた、わかっていたけれど―――


衝動を止める理性の声を、ゼロスはあえて無視をした。




薄れゆく記憶





ちょっとした(?)不運によりタラコになった三人。

彼らは、出来るだけその事には触れずに日々を過ごしていた。
ちょっと服装がタラコなだけだ。死ぬわけではない。なのに何でこんなに死にたいんだろう。

タラコ衣装が脱げなくなった初日に、そこまで思いつめたロイド・クラトス・ゼロス。
灰になりかけた彼らを気遣って、他のパーティメンバーも極力タラコの事には触れない。
表向きは、あくまで今まで通りのパーティだ。

「って!なんで天使サマがまだいるわけ?!」

「・・・・この格好でクルシスに帰れと言うのか?」

あくまで平静を保ちつつ、しかし四大天使は隠し切れない哀愁を漂わせていた。
多分タラコ姿でクルシスに戻ったとして、ウィルガイアの天使達は動揺しないだろう。無表情でタラコに従う天使達。とても怖い。

「い、いいよ。元に戻るまで、此処に居ろよ!な?」

ロイドの提案に、ゼロスも頷く。
なんというか、哀れすぎる。クラトス自身と、そんな敵に立ち向かう自分達が。

「あ。そういやグミがないんだけどさー」

「!! ま、まさか・・・」

「ほら、あそこに女の人いるから!」

ニコっとゼロスの背を押すロイド。
ロイドが鬼に見えたのはあの時が初めてだと後にゼロスは語る。

「や、やぁ・・・ハニーvv」

各種グミが所持数MAXになるまで、ゼロスの引きつった笑顔は続く。








へろへろと消耗して、ロイド達の所に戻ったのは夕暮れが近づいてからだ。
宿の裏でロイドとクラトスが剣の稽古をしていた。
他のメンバーはもう部屋で休んでいるのだろう。姿は見えない。

タラコ姿なので、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら剣を振るロイド。

「・・・・・」

なんだろう、このキュンとくる感じ。
タラコ姿になっても、ヒラヒラと存在を主張する白い布を思わず引っ張ってみたくなる。

ゼロスは、可愛いものをからかってみたくなるタイプだった。

「いくぜ!魔人けっ――

ビタッ

"剣"の所でヒラヒラを引っ張られて、ロイドが地面にキスをする。
起き上がろうと、うぐうぐと頑張る姿(タラコだから起き上がりにくい)がまたゼロスのS心をくすぐる。

「ハニー。可愛い…!!」

「覚悟はいいかバカ神子」

魔人光臨。
背後の殺気に気付いた時は、もう手遅れだった。

(そうか、この親バカがいるんだった・・・!)

「聖なるタラ…鎖に抗ってみせろ…!」

言い直したにも関わらず、地面から鎖ではなくタラコが出現する。
しかしゼロスも動揺を抑え、すかさず秘奥義で対抗。

「ハッ 俺サマの本気、みせてやるよ…。くら…

ゼロスの目が出現したタラコに釘付けになる。
このタラコ、ロイドの顔をしている。

このバカ親!可愛い!攻撃出来るかよ!
一瞬で様々な言葉がゼロスの脳内を駆け巡る。もうダメだ。勝てる気がしない。


「我が剣、誰にも見切れはしない…」

カッコ良くキメ台詞を言ってから、息子を助け起こすクラトス。
その際自分もバランスを崩し、親子揃って起き上がろうと足掻いている。

そんな彼らをぼんやりと見ながら、ゼロスの意識は遠ざかっていった。










end







うごめくタラコ3人。
彼らに幸あれ…!


こそっとオチを差し替え(5/8)




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