[携帯モード] [URL送信]



『ちぃ、僕ね、結婚するんだ』




小さな頃から大好きだった
ひとつ隣の政宗お兄ちゃん
背が高くて優しくて格好良い
大好きな政宗お兄ちゃん




『結婚するんだ』







「千晴ー!起きなさーい!出発するわよー!」



一階からお母さんの声が響いた
だるい身体を起こすと目に入ったのは普段は目にしない薄いピンクのふわふわしたパーティードレス

今日は大好きな政宗お兄ちゃんの結婚式

気が乗らないままドレスを身につけ、お母さんに軽くメイクをしてもらってお父さんの運転する車に乗り込んだ



あたしより8歳年上の政宗お兄ちゃんは母校でありあたしも通う清秀高校の国語の先生
2年と半年付き合った彼女の美晴さんと今日結婚する




わぁ、と一際大きな歓声があがった
教会の鐘が鳴り響く
ギィ、と重々しい扉が開かれて出てきた新しい夫婦はキラキラしていた



「政宗ー!おめでとー!!」



お兄ちゃんはシルバーのタキシードがよく似合っていてやっぱり格好良い
友達に祝福されて照れ臭そうに笑う



「美晴きれー!!」



お兄ちゃんの隣に立つ美晴さんは真っ白でふわふわしたウエディングドレスに身を包み嬉しそうに微笑んでいる


お兄ちゃんの隣に他の女のひとが立つところを見たくなかった
それは叶わないと知っていても






「この度はご出席いただきありがとうございます」



披露宴会場で決められた席に座っているとお兄ちゃんと美晴さんが挨拶に回ってきた
お色直しを済ませた二人はなんだかさっきと雰囲気が違って見えた



「政宗くんが結婚だなんて…」

「おばさん、これでも僕もう26ですよ」

「あら、まだ、26よ〜」



ハンカチ片手に話すお母さんにお兄ちゃんは目を細めて答える



「政宗、美晴さんのこと大事にするんだぞ」

「もちろんですよ、おじさん」

「美晴さん、政宗に泣かされたらいつでも家に来なさい」

「あらやだ、美晴さんは家のお嫁さんじゃありませんよ、お父さん」

「ありがとうございます」



少し酔っ払ったお父さんが笑いを取ってお母さんもお兄ちゃんも美晴さんもそれからあたしも笑った



「ちぃ」



お兄ちゃんに呼ばれて笑いを止めた
わざわざあたしの方に近寄って来てくれる



「…おめでと、お兄ちゃん」

「ありがとう、ちぃ」



昔と変わらない大きな手であたしの頭を撫でてくれる



「…美晴さんもおめでと」

「ありがとう、千晴ちゃん」



美晴さんの柔らかい笑顔が胸に突き刺さる
本当は認めたくないけど二人はお似合いだと思った



「子供はすぐ大人になってしまうなぁ」

「次は千晴かしらねぇ」

「千晴もお父さんを置いていくんだなぁ…」

「もう、泣かないでくださいよ、お父さん!」



お兄ちゃんと美晴さんが次の席へ移動した後お父さんとお母さんがそんなことをぼやいていた

ここから見えるお兄ちゃんと美晴さんは本当に幸せそうで
それでもやっぱり心から祝福出来ない自分がいる



(大好き…だった、よ…政宗お兄ちゃん…)



お兄ちゃんの幸せそうな笑顔があたしの初恋にピリオドを打った



,


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!