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大江山の鬼退治(酒呑童子)


ときは平安の代。西洛の大江山に酒呑童子という鬼が棲んでいた。酒呑童子は茨木童子らの手下と共に夜な夜な都に現れては、盗み・放火・暴行の限りを尽くしていた。

酒呑童子はその名のごとくいつも酒を飲み、真っ赤な顔で童子頭、身の丈は一丈もあると噂され、大江山の奥に棲んでいて人間には容易に近づくことは出来なかった。

このころは藤原氏が権力を握り、民の事など考えずに自分の利益のみを追求していた。旱魃や自然災害による不作により都には餓死者が溢れ、羅生門・朱雀門の修理も放り出され、まさに地獄のようなありさまであった。こんなときにに酒呑童子が登場するのも時代のなせる業であろう。

さて、あまりにも酒呑童子が悪行を働くので一条天皇は、武士の源頼光(みなもとのよりみつ)に酒呑童子退治の勅命を下す。頼光には四天王と呼ばれる強者の家来がいた。渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時、卜部季武(うらべ すえたけ)、碓井貞光(うすい さだみつ)の四人である。これに、頼光の甥である平井保昌(ひらい やすまさ)を加えた六人で酒呑童子退治にいくことになった。

一行は山伏姿に身をやつし、修行中を装って大江山に入ってゆく。山は非常に険しく、先も見えない。鬼たちが棲むという「鬼の岩屋」も何所にあるのか見当もつかないでいた。すると、一行の前に三人の老翁が現れた。彼らは神々の化身であり、それぞれ岩清水八幡、熊野権現、住吉明神の化身であった。彼らの案内で道なき道をどうにか踏破した頼光に、三翁は神便鬼毒酒(しんべんきどくしゅ)と呼ばれる神酒を授けこういった。

「この酒は人間が飲むと神の力が身につくが、鬼が飲むとその力を封じ込める事が 出来る。どうか役立てて下され。この先をまっすぐ行くと若い娘がおるから、その娘 に鬼の住処をたずねるとよい。」

と言って消えてしまった。

一行が進んでゆくとはたして、川のそばで年の頃十七・八ほどの娘が泣きながら帷子(かたびら)を洗っている。どうしたのかとたずねると娘は

「私は花園の中納言の姫です。今朝がた酒呑童子に囚われていた堀河の中納言の姫が鬼たちに食われてしまったので、その帷子を洗っているのです。」

とさめざめと泣きながら訴えるではないか。頼光一行は娘に鬼の岩屋の場所を聞くと娘に山を降りるように促した



途中、川が行き手を阻んでおり、これを渡らねば鬼の棲家に行けない。そこで、怪力の持ち主「坂田金時」が近くの木を抜き、その木を橋代わりにして一行を渡らせた。



鬼の岩屋にたどり着くと、そこには門番がいた。頼光が一晩宿を貸してもらえないかと聞くと、しばらくして岩屋の中に案内された。



やがて酒宴が開かれ奥から「どす!どす!」と大きな足音が聞こえてきた。頼光等は心中で”これが酒呑童子か?”と思いをはせた。

「おう!その方たちが修行中の山伏か。都では源頼光とかいう武士にこの 酒呑童子退治の勅命が下ったと、もっぱらの噂ゆえ鬼どもも警戒しておった。 今宵は酒など飲んでゆっくりくつろがれよ」

と大声で叫ぶ。髪は赤く、眼光は鋭い。鉄杖を片手に仁王立ちで頼光らを迎えたこの鬼こそ酒呑童子であった。酒呑童子はさらってきた娘たちに酌をさせ大いに飲みはじめた。そのうち料理が運ばれてきた。頼光らの目の前には人間の足が盆の上にのっている。ふるまわれる酒は血酒であった。

「この肉は今朝、おろしたばかりの肉じゃ!遠慮なく食ってくれ!」

そう言うと、酒呑童子は手下にその肉を小分けさせて、頼光らに振舞った。頼光らはさもうまそうに肉を食う演技をした。そして、頼光は酒呑童子の前に進み出て、神便鬼毒酒を手に

「このもてなしの、お礼にこの酒を献上致す。非常に美味ゆえ、ぜひ一献ためされよ」

といってまず自分が飲んでから、酒呑童子に酌をする。酒呑童子は何のためらいもなく神便鬼毒酒を美味そうに飲み干すと、あまりの美味さに驚き、まわりの鬼たちにもこの酒を勧めるのであった。




やがて、鬼たちは酒呑童子をはじめとしてみんな眠ってしまった。頼光らはここぞとばかりに皆に鎧兜に着替えるように指示した。まずは眠っている鬼たちを片付ける。頼光、四天王、保昌の手にかかって寝ているところを斬りつけられた鬼たちはバタバタやられていく。最後に残ったのは、いまだ事に気づかずに大いびきをたてて寝ている酒呑童子だけである。

頼光は酒呑童子の体を鎖できっつく縛り、「やっ!」とその首を掻き切った。その瞬間、酒呑童子は「かっ!」と目を開き、すかさず頼光の兜にくらいつき

「やはり、おまえたちが頼光一味だったのか。油断したわ。鬼は人を騙したりはしないのだがなぁー」

と叫び、なおも頼光の兜にくらいついて離れない。四天王たちも酒呑童子の気迫に度肝を抜かれている。やっとの事で足を踏み出し酒呑童子の首に向けて斬りつけた。さすがの酒呑童子も神便鬼毒酒にやられているのでこれ以上の反撃は出来ず、ついに息絶えた。

頼光一行は屋敷に囚われていた娘たちを引き連れて大江山を下り、都で人々の歓待を受けたという事である。



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