寒いですね、なんて何とも平凡な会話をしていたはずだった。
そうだな、なんて相槌が返ってきて。嗚呼いつもと同じだと細やかな平穏に小さな幸せを感じていた矢先、彼から仕掛けてきたのだ。
細やかな平穏をわざわざ壊すように。
ニンマリと笑いながら。
気付いたら今までやっていたチェスの駒を投げられ、避けて彼を見れば机に乗っていて。
一体何がしたいのだろうか?
そもそも急にどうしたのか、分からないまま彼がジリジリとにじり寄って来る。
「あ、と…どうかしましたか?今日の貴方のその行動はいつもの貴方らしかぬ行動かと思うのですが。」
これはまさに迫られているのだろうかと冷静になりきれない頭で考えてみる。
だとしてもおかしい。
キスですら部室では許してくれなかった彼がこんな大胆な行動に移れるだろうか。
出来るとしても何故、今このタイミングなんだ?
答えが見付からず迫ってくる彼を受け入れる事も出来ずに戸惑ってしまう。
そんな僕の様子が面白いのか彼は妖艶な笑みを浮かべたまま僕の頬から首元へと手を滑らせていた。
「寒いから。」
「…はい?」
「寒いからって理由があれば充分だろ?」
もう分けが分からない。これは誘われているのだろう、間違いなく。これで押し倒した後に抵抗でもされたら僕は立ち直れないかもしれない。
少し潤んだ瞳で見つめられてしまえば理性より性欲が上回ってしまう。
彼の腕を引っ張っり自分の方へ引き寄せる。机に乗っていた彼も僕もバランスを崩し床に倒れこんだ。
頭と背中を強打したようでズキズキと痛む。
それでも今、自分の腕の中には確かに彼がいる事で痛みなんて然程気にはならなかった。
「今更嫌だ、なんて言わないで下さいね。」
「言うかバカ。…だから、お前はもう俺以外の奴と手なんて握るなよ…。」
「っ!!…見ていたのですか?」
「…たまたま、な。」
嗚呼だから彼はあんな行動をとったのかとようやく理解できた。
それは放課後、部室に行く前の事だ。
ある女子に告白され断わったがいいが最後のお願いだからと手を繋いでほしいと頼まれたのだ。
その時は手を繋ぐくらい別にいいかと思っていたが、それを彼が見て嫉妬していたなんて思いもしなかった。
嬉しい反面彼を不安にさせてしまった事による罪悪感が生まれてくる。
申し訳ないと謝れば彼は少し顔を赤くして僕の首元に噛み付いてきた。彼曰くコレでチャラらしい。チクリとした痛みすら彼から与えられたものだと思うと何故だか愛しく感じる。
「別にもういいって言ってるだろ。それより…早くしないとハルヒ達が帰ってくるから。」
少し恥らいながら僕を求めてくる彼は何とも言えない程に淫靡だ。鼻をくすぐる彼の髪の匂いも心地良い。
急かされるままに彼の鎖骨にキスを落としてネクタイを解いていくと徐々に露わになる肌が、どうしようもなく綺麗で一瞬息を飲んだ。
寒いのに脱がせ合うなんてなんか変だと彼は笑う。つられて僕も笑っては何度も何度もキスをした。
しっかりと、離さないように。手を握りあって…。
END
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嫉妬キョンと誘い受けキョンをミックスしてみました(笑)
やっぱり古→→←←←キョンはいいですねwwいつもの事ですがそういう結論に行き着きました(笑)
【恋結び】
恋愛の関係が切れないようにと、神に祈って紐などを結ぶ呪術。 (大辞林 第二版より)
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