相変わらず一人暴走気味の古泉一樹は今日も今日とて、よく分からないオタクっぷりを余すことなく俺に発揮してくれている。
えっと、何だっけ…確か今日は『制服の着方』だっけか?
「僕なりに考えてみたのですがやはり貴方は多少着崩した方が色気が出るんですよね。なので今の着方がベストなんですよ。これはフィギュアなどでは求められない萌えなので流石です、キョンくん!」
「へー、そうかい。じゃあこれからはお前みたくきっちり着る事にするわ。」
「それもまた魅力的なお誘いですね。ある種のペアルック的効果があるかもしれません。」
嫌味で言った筈の言葉を見事に真に受けた古泉は何やら一人脳内会議を開き始めたようで。
本気で第一ボタンまでとめる気なんてさらさら無いというのに。コイツの頭には『冗談』という文字は存在しないのだろうか。
っというか古泉、お前本気で悩み過ぎじゃないか?
何やら目の前にいる俺の存在を若干忘れつつある古泉に腹を立てた俺は自分の世界にトリップしている奴のネクタイを思いきり引っ張ってやった。
一瞬何が起こったのか分からないといったような表情をする古泉の反応が面白い。が、いい加減無駄な脳内会議はお開きにするべきではないか?なぁ、古泉。
「言っておくがどんなに真面目に考えてたって俺は今の着方から変えるつもりはないからな。」
「あっ、そうなんですか。」
「あぁそうだ。っというかお前が着崩してみたらどうだ?その色気とやらがお前にも出るかもしれんぞ。」
皮肉たっぷりにそう言いながら掴んでいた古泉のネクタイを指で引っ掛けて緩ませる。ただそれだけの事なのにどことなく雰囲気が変わるのは元々の容姿がいいからだろうか。
「あの…」
「何だ?」
古泉がおずおずと何か言いたそうにしている。
何を言いたいのかは知らんがその妙にモジモジとした動きは止めろ。物凄く気持ち悪いぞ、それ。
「もしかして…誘ってますか?」
「っ!!!!ばっ馬鹿かお前は!!」
何処をどう見たら誘っているように見えるのだろうか。古泉の脳内は中々のカオスなのだろうな、可哀想に。
顔が熱るのを感じる。
その気なんてなかったというのに…古泉のせいだ。間違いなく奴が悪い!
俺はネクタイを離しそっぽを向いてボソリと言葉を続けた。
「……1回だけだからな。」
古泉の反応なんて見なくても分かる。
きっと一瞬驚いた後に心底嬉しそうな顔をしてるに違いない。
「制服エッチなんて久しぶりですね。」
「おっお前はいちいち発言が変態じみてるんだよ!!!」
「でも制服は永遠のロマンですから。」
「あぁあもう、勝手に言ってろ!!」
あれだ、1回だろうが2回だろうが許してしまった俺が間違いだったんだよな。まぁ後悔しても仕方がないわけなのだが…。
いそいそと楽しそうに準備をする古泉を見て、俺はそっとため息を吐いた。
この後古泉が付けてきた首元のキスマークによって第一ボタンまできっちりとめ、古泉の言うペアルック的効果を実践させられる事になるのは、あと1時間後の話である。
END
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