俺は『古泉一樹』が嫌いだ。
アイツの頭の中にはいつだって『世界』とか『ハルヒ』が占めていて、俺の入る隙間なんてありはしない。
別にそれでもよかった。
普通の友達としてバカな事が出来たり、他愛のない話で笑い合えればよかったのだ。
なのにアイツは俺の隙間に平然と入り込んできた。友達としてでも、ましてや部活仲間としてではない。別の…何とも言えない距離で唐突に侵入してきたのだ。
俺の意思なんて関係無しに。一方的に、だ。
━━━…
それはいつもの放課後。
俺はハルヒに頼まれて古泉を待っていた日のことだ。
古泉は何時ものようにヘラヘラと笑いながら実に2時間の遅刻の末に部室にやって来た。
「おや、涼宮さん達はもうお帰りになられましたか?」
「お前が委員会で遅くなるからって戸締まりは俺に任せてさっさと帰ったよ。」
やはりというか、アイツの口からまず出るのはハルヒの事で。いい加減イライラする。
「…そうですか。それは貴方に申し訳ない事をしましたね。お待たせしてすいません。」
「別に。お陰でゆっくり寝れたし構わねえよ。」
俺の役目は戸締まりをする事である。したがって古泉が来た時点で部室を出れば俺の役目は終わる。なので早く帰ろうとうつ伏せていた身体を起こせば急に寒気に襲われた。
今日は比較的暖かい日になるとかニュースで言っていたからブレザーは家に置いてきたというのに、流石に夕方は冷える。
身震いしながらさっさと帰って暖まろうと考えながら帰り支度をしているとふと背中から何かを被せられた。
振り向けば古泉。
背中には古泉のブレザー。
おい…そういうのは女の子にやるもんだぞ。正にハルヒにでもやってやればいい、俺にするな。
「何考えてるんだよ。」
「別に何も。ただ貴方が寒そうだったのでブレザーをお貸ししただけですよ。僕は寒くないので使って下さい。」
「おまっ、別に」
別に俺には必要ない。
そう言おうとした矢先、古泉の携帯が鳴った。いつもの『閉鎖空間』だろう。古泉の意識は一瞬にして俺から別のものへ移っていったのだ。
「すいません。どうやら小規模ですが閉鎖空間が発生したようなので僕は先に失礼します。ブレザー、使って下さいね。」
言うだけ言って古泉はさっさと部室を出て行った。
それを俺はボンヤリと見送る。
別に『行くな』とかそういう事が言いたいわけじゃない。
古泉が閉鎖空間にかりだされる事なんて日常茶飯事ではないか。気にする必要なんてないだろ、俺。
そういい聞かせている筈なのにどうにも心臓がキリキリと痛い。
部室に取り残された俺はどうにもやりきれなくて古泉のブレザーを必死に抱き締めた。
ブレザーから微かに古泉の匂いがする。
求めたくもないのに求めて、いつの間にか古泉の1番でありたいと、ハルヒでも世界でもない俺を、もう少しだけ見てほしいとそう思うようになった俺は一人勝手に傷付いて泣くのだ。
何故こんなにもいない奴の事を考えなければいけないのか。
俺だけ好きでいる事がどうにも悲しくなるのに、奴はその気もないくせに期待するような事を平気でやる。…だから嫌いなのだ、古泉一樹という奴が。
俺はもう、これ以上好きになんてなりたくないのに。
END
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古泉のことは好きなのに自分だけ必死になるのが嫌なキョンの話。ようは古泉のこと凄く好きなんだねって事でした(笑)
この話の古泉は思わせぶりな態度を取る割には実はノンケくんです(爆)そんな古←キョンも個人的に大好きなのでしたww
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