※消失古泉→キョンで切なめなお話です。
↓
貴方のいなくなった世界なんて、どうにでもなればいいと、僕は心から思う。
勝手に現れて、勝手に僕の気持ちを攫っていって。
好きなんだと、貴方が欲しいと自覚した途端彼は元いた世界へと帰ってしまった。
こんな勝手なことなどあるのだろうか。僕だけ、こんなにも好きになってしまったというのに…。
まだ、好きだとも言えないまま終わってしまった僕の初恋はあっという間の恋で。今は恋しくて逢いたいと、ただそれだけを願うのだ。
何かがプッツリ切れたように、僕は今いる場所から背を向けて歩き出していた。
此処にいたくない。こんな所にいても彼には逢えないから。
「古泉君?ちょっと今から授業よ!何処行くのよ!?」
嗚呼、涼宮さんが僕を呼んでいる。
彼が来るまではあんなにも好きだと思っていた彼女が僕を呼んでいるというのに、僕はもう何も感じない、感じられない。
だからもう、僕にはそれすらもどうでもいいことで。
彼女の叫ぶ声にも耳を傾けずに背を向け続けて学校を後にした。
どこか、彼を忘れられる場所に行きたかったのだ。
漫画やドラマのように眠れない夜を過ごすのも、胸を締め付けられる思いをし続けるのも、もう嫌だった。
僕は、この想いから逃げ出したかったのだ。
せめて最後に彼女だけにでも「すみません」と言えばよかっただろうか…。
すみません、貴女より彼が好きなんだと気づいてしまいました。
すみません、僕にはもう彼しか見えないみたいです。
すみません、僕はもう、以前の僕には戻れないと思います。
『お前とも、初めましてになるのか』
あの日から僕の中で何かがゆっくり崩れ始めた。
栗色で綺麗なあの髪も。
無器用な優しさも。
真剣な眼差しすら、全部好きだったのだ。
彼さえいれば幸せだと、きっとそう思えたに違いない。
けれど、どんなに考えたって彼はこの世界の人間ではなかった。故に自分の世界に返るのは至極当然なことで僕にそれを止める権利はない…なかったのだ。
だから、今の僕が此処にいる。
数日前にいた彼は、もういない。
こんなにも、無気力になった僕を彼が見たらなんて言うのでしょうね。
向こうの世界の僕が羨ましい、僕が欲しいもの全てをきっと持っているに違いないから。
僕は…なにも、何も持ってはいないのに。
どうにでもなればいいのだ。
貴方のいない世界なら。
何だってするというのに。
貴方の側にいられるのなら。
「好きです…」
最後に呟いた声は風にかき消されて誰にも届くことはないだろう。
空を見上げれば雲ひとつない晴天で。どうしようもなく切なくなった。
嗚呼、そうなのだ。
僕はこんなにも、
泣きたくなる程に
貴方が好きなんです。
これからもずっと、変わらずに。
END
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