※古泉とキョンが機関の人間設定。
灰色の見慣れた空間。
存在するのは神が作り出した"神人"と、それと戦う"機関の人間"だけで。
精神を集中させ神人に対抗する為に赤いオーラを放てばふわりと身体が浮き上がる。
さてこれから一仕事しようという時に、何とタイミングが良いというのか、はたまた悪いのか。彼が僕の腕を掴んで離してはくれなかった。
僕が神人に立ち向かわなくてはならないのは既に当たり前の事であってそれをサポートするのが彼の役目でだ。数えるのも馬鹿らしくなる程に僕らは神人と戦って来たのだ。今更不安そうな瞳で此方を見るのは反則ではないのか。
彼の真意が分からない以上下手に腕を振り払うことも出来ない。仲間は今も必死に戦っているのだ。ここで立ち往生していたら上の人間に何を言われるか分かったものではないというのに。
「あの、どうしたんですか?」
きっと彼の精神は不安定なのだろうと推測した僕はなるべく優しく問いかけてみたが彼の反応は見られず腕を掴んだままで。
目を凝らして彼を伺ってみても分かる事なんて少なくて。どうしていいか分からずに僕は苦笑いを見せるしかなかった。
前方では神人の腕が切り取られ、切口からはサラサラと血と表現するには青過ぎる何かが流れている。それでも今日の神人はいつもより狂暴で、腕を切られてもお構いなしといった感じで破壊行動を繰り返している。
「キョンくん、僕も早くいかなければいけません。手を、離してくれませんか?」
「……な、ないか?」
「え?」
彼の小さな声が上手く聞き取れない。震える唇は何かを懸命に伝えようとしていて、彼は今にも泣きそうな表情だった。
「死なないって、怪我しないって…誓えよ。」
「キョンくん…」
「夢…で、お前が神人にやられて、血がすげぇ流れてた…それでもお前は笑ってて……っ嫌なんだ、もうあんなもん、見たくない。」
一瞬、ほんの一瞬世界が止まって見えた。正確には僕の思考が止まったのだが。
それでも彼が僕の事を本気で心配してくれていたのが堪らなく嬉しくて。そっと彼の髪の毛に指を絡ませながら額に口付ければ、彼はビクリ身体を強張らせて"そんな事してもらいたか言ったんじゃない"と怒りだしてしまった。
怒らせたかったわけではないのにな、と思いながら彼を思いきり抱き締める。
苦しいとか離せとか聞こえるがこの際無視させてもらおう。
「僕の心臓の音、聞こえますか?」
「…聞こえる。」
「僕は生きてます。大丈夫です、僕には貴方がいる。貴方のサポートで僕を守って下さい。」
「……。」
「約束します。僕は貴方を残して死にはしませんよ。」
だから心配しなくていいのだ。
僕はそこまで弱くはない。
知ってました?
実は僕、実力からしたらかなりトップの方なんですよ。
だから行かせて下さい。
僕は戦わなくてはならない。
世界の為にも。
そして彼の為にもだ。
「怪我して帰ってきたら別れるからな。」
「それは手厳しいですが、了解しました。ではサポートの方よろしくお願いします。」
「ああ。」
彼が微笑んだのを確認して僕は再度赤いオーラを放ち身体を浮かせた。
ゆっくりと彼の手が離れる。
彼はもう大丈夫だろう。
一気に気を放出して神人に向かえば早速脳内に彼の声が響く。西の方角にもう1体出現とは神もやってくれる。
それでも僕は倒すだけだ。
終わった時に彼が僕を見て安堵してくれるように。
『おかえり』とぶっきらぼうに言ってくれる事だけを楽しみにしながら…。
END
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久しぶりに書いた機関パロはキョンが何とも古泉に依存している感じになりました。腕を掴んで離さないキョンは絶対可愛いと思います…。
お粗末さまでした。
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