貴方が僕を必要だと言ってくれるのなら
僕は…。
空も暗くなった午後6時。
北風が強く吹き体を冷やしていく。
かじかんだ手で彼の手を取ってそっと温めると白い息を吐きながら貴方は少しハニカんで僕の手をそっと握り返してくれる。
「寒い…。」
「寒いですね…帰りたくなりましたか?」
少し意地の悪い質問をすると彼は拗ねたような顔をしながら首を横に振った。
「別に帰りたくはねぇよ。…お前は俺と一緒にいるのが嫌なのか?」
「そんな事はありませんよ。凄く幸せな気分です。」
「そうか。………なぁ、古泉。」
「何でしょう?」
「…お前、無茶だけはするなよ…俺は、閉鎖空間では無力だから何も出来ないけど……でも……」
貴方は、今にも泣き出しそうな顔をして…僕を心配してくれるのですね。
そんなにも僕を大事に想ってくれていると自惚れてもいいんでしょうか?
握っていた手に自然と力が入る。彼の、キョンくんの体温を感じる度に僕は今貴方と同じ時を、同じ場所で生きていると感じられたから。
震えるその手はあまりに小さく見えて。
そしてあまりに沢山のものを抱えているようで。
自分が傷つくとしても離すことを拒み続けて、そっとその手で守り続けるのでしょうね。
貴方は、あまりにも優しすぎるから…。
「安心してください。僕は貴方が僕を必要なんだと、想ってくださる限り閉鎖空間に行っても必ず生きて帰ってきますよ。無茶は多少するかもしれませんが。」
「信じてるからな…お前の事。」
「はい。」
この先、神人を倒し続けて世界を維持し続けたら、この些細なまでの幸せは護れるでしょうか?
僕の世界は、貴方が全てだから。
「キョンくん、僕は貴方が好きです。」
『好き』だと、そう言葉を口にすることはとても簡単で。
僕はその言葉に過信しているのかもしれない。
『好き』だと言えば貴方も僕を『好き』でいてくれると思えるから。
『愛してほしい』と素直に言えないから『好き』に様々な感情を僕は込めていた。
口から出た言葉が貴方に届く度、少し照れた様に笑うその表情を見ると嬉しく思える。
いつか貴方に『好き』ではなくて『愛してる』と伝えられるでしょうか?
もっともっと愛しても許される日が来ますか?
貴方さえ傍にいれば、僕は他に何もいらないから。
だから僕は
神人にも
涼宮ハルヒという神にも
負けない。
END
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