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朝比奈さんは何だかんだ言って、なかなか侮れない人だと僕は思う。

別に彼女のキャラが作られたものだとか、そういう事が言いたいわけではなく、実は案外彼女は彼や僕の事を見ているのだなと焦りにも似た感情を抱いてしまうのだ。






「あっ!古泉くんこんにちは。キョンくんより早く来るなんて珍しいですね。」

本日部室に顔を出せば居たのは朝比奈さんと長門さんだけで、涼宮さんもキョンくんもまだ来てはいないようだ。

「今日は珍しくホームルームが早く終わったんですよ。」

いつもの定位置に移動し、鞄を机に置くと今日も律儀にメイド服を来ている朝比奈さんは温かいお茶を出してくれる。


「いつもいる筈のキョンくんがいないと寂しいですか?」

「……………はい?」


この人は突然何を聞いてくるのだろうか。

不覚にも目が点になった。


確かに僕は彼が部室にいない事に多少の落胆はしたかもしれない。だが、それは本当に些細な変化であって決して第三者がその変化に気付けるのかと言えばそこまで僕は表情豊かではないと自負しているつもりだ。

だったら何故朝比奈さんはそんな突拍子もない事を言い出したのだろうか。

戸惑う僕をよそに朝比奈さんはいつもの彼が好む笑顔から少し慌てたような表情に変わりどこか弁解するようにオロオロと言葉を続ける。

「あっ!違ってたらごめんなさい。ただ、なんていうか…古泉くんってキョンくんの事になると少し表情が豊かになるから…。」

「そう、ですか。」

そんなに僕はあからさまな表情をしていたのだろうか。それはマズイ。彼が知ったらスネてしまう。"朝比奈さんにバレたら別れてやる"などと言ってきてもおかしくない。

それは非常に嫌だ。
どうにか朝比奈さんに上手い言い訳を考えなくてはと思い思考を巡らせる。


「でもキョンくんも同じなんです。古泉くんが部室に来ると少し嬉しそうな顔になるんですよ。」

彼女はお構い無しに今度は何か思い出したような顔をしたかと思えば少し楽しそうにそう告げた。

呆気にとられる。今日は彼女の発言に振り回されっぱなしだな、と思いつつも意外な彼の情報を聞けた事はラッキーだ。


だがしかし、これが女の勘というものならばなかなか恐ろしいスキルではないだろうか。


「嬉しい情報ありがとうございます。朝比奈さん、どうせならこの話は彼には秘密にしませんか?きっと知ったら今以上に眉間にシワを寄せそうですから。」

「そうですね。怒った顔より笑ってる方がいいですもんね。でも少し羨ましいな、キョンくんがあんな表情するの古泉くんにだけなんですよ。…友情って凄いですね。」



実は友情ではなく愛情なんですけどね。
そう心の中で思いながら当たり障りのない笑みを向ける。


今日はいろいろな事が分かったのかもしれない。朝比奈さんの事、彼の事、そして自分自身の事も。

こんな日もたまにはあっていいのだろうと、そう思える程に僕は昔より変わっているのだ、彼のおかげで。確実に。


END

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古キョンというよりキョンが好きな古泉とみくるちゃんの井戸端会議の模様でした(笑)

さりげなくみくるちゃんは色々悟ってたらいいなという願望(爆)

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