いつもの部室にいるのは俺と古泉の二人だけ。 最近良くあるこの組み合わせ。 ハルヒ、長門、朝比奈さんは今日もどこかへ出かけている。 そこについて行こうとは思わない。ただ古泉と二人きりというのが厄介なのだ。 はっきり言おう、俺は古泉が好きだ。もちろん友達としてとかなら良かったのだが恋愛対象として好きになってしまっていた。 古泉には伝えてない、伝えられるわけがない。 だけど日々弄ぶこの感情をどうにかしたくていっそ伝えてしまおうかとも衝動的に思うことも度々あった。 そんなこんなで本日はアナログなゲームはしないで各々好きなように放課後のこの時間を過ごしている。 俺は読み飽きた雑誌を眺め、古泉は小難しい本を熱心に読んでいた。 古泉の指がゆっくりと本のページをめくる。 そんな行動1つ1つを無意識に俺は魅入っていた。 男にしては長い指も、無駄にいい匂いがする髪も、俺が間違いなく欲しいのはコイツなんだと嫌でも思い知らされる。 "もしもあの手で抱きしめられたら"と思い小さくため息を吐き、くだらない考えを捨てるように視線を雑誌に戻した。 どんなに求めたって無駄なことだ。諦めろ俺! そう、何度自分に言い聞かせてきたか分からない。 触れたいと思う、触れられたいとも思う。理性とは裏腹に確実に欲求は募るばかりだ。 「気づいてますか?」 「…何をだ?」 古泉はいつもの笑みで俺を見る。 不意の呼びかけに内心驚きながらも無関心のフリをした。 「貴方がよく僕を見ているということですよ。」 「……。」 思わず言葉を失う。 気づかれていた?いつから?どうして? 上手く誤魔化せばいいのに、俺は目を逸らすので精一杯だった。 「僕の思い過ごしかとは思いましたが…違う見たいですね。」 「…な、んで」 「結構あからさまでしたよ。まぁ僕は全然構いませんが。」 古泉の声が良く聞こえない。それほど気が動転しているのだろう。 どうしたらいい?バレるわけにはいかなかったのに。 手も足も震える。どうしていいかなんて考え付くはずがなかった。 「その、すまんっ!」 ガタンと勢いよく立ち上がり座っていたイスを倒して逃げるように部室を後にしようとした。 気持ち悪いとか、やめろとか言われたらきっと立ち直れない自身がある。 ならばどんなに格好悪くても今はこの場から逃げ出したかった。 ドアを開けようと早足で向かうが古泉が俺の左手を掴んできて逃げることは叶わなかった。 こんな非常事態なのに手を掴まれただけで不覚にもトキメクあたり馬鹿だ、俺。 「…離せよ。」 「嫌です。何故逃げるのですか?」 「何でもいいだろ!…離してくれ。」 「よくないです。僕の話はまだ終わっていませんよ。僕は貴方の視線が自分に向けられている事が嬉しかった。もしかしたら貴方は僕の事を好いてくれているんではないかと自惚れました。意味分かりますか?僕は、貴方が好きなんです。」 「う、そだ。そんなわけがない。」 そんな夢みたいな事があるなんて信じられなかった。 だってそうだろ?俺が言うのも変だが同姓相手だぞ。 「嘘でこんなこと言えるほど僕は出来てませんよ。だから貴方が逃げる必要なんてないじゃないですか。」 古泉は俺を引き寄せ抱きしめてきた。 予想外の反応。予想外の展開。 付いていけずに唖然とするしかなかった。 求めていた体温を感じる。 こんな時どうしたらいいのだろうか。 俺はただただ自然と流れてくる涙を止められずに、恐る恐る古泉の背中に腕を回した。 「何度でも言ったって構いません、僕は貴方が好きです。」 優しい声で、まるで甘やかされているみたいに囁かれる。 涙も嗚咽も止まらない俺は古泉の胸でコクリと頷くのがやっとだったが、きっと古泉は察してくれるだろう。 叶わないと思っていたのに。 今までの関係で我慢すればいいと言い聞かせていたのに。 どうしよう。 不覚にも幸せだ。 END 戻る [管理] |