午前3時過ぎ。ふいに枕元に置いてあった携帯が振動した。
目が覚めたのは奇跡に等しいくらいの偶然で。ただそれでも何故か気になって携帯を見れば『古泉』と表示される画面。
こんな夜中に何をやっているんだアイツは。
再び夢の世界へダイブしようとも一瞬考えたがやめた。っというか考えるより先に自分の手が通話ボタンを押していたのだ。
『……………。』
一瞬驚いたような空気が伝わる。言葉を発したいのに発せられないのか、古泉はただ黙っているだけだった。
そりゃ驚くだろうな。こんな夜中に電話をかけたら出ないと思ってた相手が出ちまったんだ。
だがな古泉。かけてきたのは、キッカケを作ったのはお前だ。伸ばしかけた手をすぐに引っ込めようとするのは良くないと思うぞ。
「………おい。」
眠い目を擦りながら呼んでも返事がない。これで只の屍にでもなってたらかなり面白い冗談になるんだがな。残念ながら電話の向こうの相手は未だに状況を把握しようと頭をフル回転でもさせていて無言だったさ。
「お前、寝れないのか?」
『いえ…寝てたんですが、変な夢を見て起きてしまいました。』
変な夢って、どうせお前はしょうもない事を考えていたんだろ。しかも俺に電話するぐらいだ、確実に俺絡みなのだろう。
"そうか"と軽く応えるしか出来ない。古泉何を心配し、何に不安を感じてるか俺には分からないからな。
コイツは話さないから分かるはずもない。俺は読心術があるわけじゃないんだ。伝えたいことがあるなら最低限言葉にしろ。そうしたら聞いてやらんこともないのだから。
『僕は、貴方の声が聞きたかったんです。すみません、こんな夜中に。』
ホントにな。
俺の声なんて毎日毎日聞いてるだろ。そんな寝る時間を割いてでも聞きたくなるような超絶な美声なんか持ち合わせた覚えはないぞ。
「嫌でも毎日俺の声なんて聞けるだろ。…とりあえず、満足したならもう寝ろ。」
俺はそろそろ限界だ。夢の国から手招きされてる。お前だって学校があるんだから少しでも寝といて損はないぞ。
『はい、おやすみなさい。…また明日。』
「おやすみ。」
時間にして5分もかからなかった電話は静かに終わった。
古泉は最後どこか安心したような声だったから大丈夫であろう。
何があったかなんて聞かない。
話す話さないはアイツ次第だ。
絶対本人には言ってやらないが俺は古泉を見捨てる気はない。
お前が戸惑いながらも手を伸ばすなら俺はちゃんと掴むから。
どうしたら少しでも古泉に伝わるものかと考えながら俺は再び眠りへとついた。
俺の気持ちも知らないで不安になるなんてな、無意味なんだよ。
END
━━━━━……
結局は古→←キョンだったというオチ(笑)
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