注:ＥＤ後、観覧車イベントネタバレあり
「う、わ…久しぶりだな」
大きくはないけれど、小さくもない園内、きらきらした建物、その一番奥に。
「観覧車、」
あれから、トウヤ君と連絡を取るようになった。
大したことのない用だったり、ポケモンの情報だったり。
今日は、久し振りに会うことになった。
ライブキャスターで互いの顔は見れるとは言っても、やっぱり直接となると緊張はする訳で。
場所が場所で、カップルや家族連れが多い。
みんな、楽しそう。
もう少しで、僕もそうなれると思うと、ドキドキした。
そろそろ待ち合わせの観覧車の前に着く、という所で何だか賑やかな様子が。
「あれ、トウヤ君……と、」
知らない女の子だ。
どうやらポケモンバトルをしてたみたい。
「わー！トウヤ君ってポケモン強いんだねー！」
「…まあね」
あ、トウヤ君が勝った、のかな？
「そんな頼れるトレーナーのトウヤ君に、もうひとつお願いなんだけどさ……」
「……何？」
「今からさ、私と一緒に観覧車乗りましょ！」
「へ？い、いや俺、待ち合わせしてんだけど」
「女の子のお願いだもん！いいよね！さ！乗ろーっ」
「うわ、ちょ！引っ張んなって…！」
あの細い腕で、いくらトウヤ君が細身でもああもズルズルと引っ張っていけるなんて、女の子ってすごい。
「…じゃなくて！」
と、トウヤ君連れて行かれちゃった…！どうしよう！
…、まあ待ってればいいか。いずれ終わるわけだし。
「…今、二人きりかあ」
二人乗り専用なのだから当たり前なんだけど。
何を話してるんだろう。
そんな事を考えたら、何だかもやもや、する。心臓の辺りがちりちりと痛い、感じ。
可愛い感じの子だったと思う。
トウヤ君より小さくて、女の子らしい。
「………何か、嫌だな」
よく分からないこんな気持ちも、どうしてこんな気持ちになるのかも、全然分からない。
ただ、変な、嫌な感じがする。
こんな風に思った事、今までなかったのに。
分からないのが、気持ち悪い。
ダメだ、こんな状態のままじゃトウヤ君と会っても嫌な思いさせちゃうだけだ。
…帰ろう。後でトウヤ君には体調が悪くなったとか言って謝ろう。
そう決めて、一歩出口の方へ足を踏み出そうとした時。
トウヤ君が観覧車から出てきたみたいだ。
僕は思わず近くの植木の影に隠れた。
…何で隠れてるんだろう、僕。
「ごめんね、付き合わせちゃって。」
「本当だよ。俺、用事あるって言ったじゃん」
「あ、冷たいなー。ま、ちょっと…楽しかったよ。よかったらまた二人で乗ろ！じゃあねー」
女の子はにこにこと笑顔で走っていった。
あ、どうしよう。早くしないとトウヤ君に見つかっちゃう。
………。ここに隠れていればその内帰ってくれるかな。
…せっかく会おう、って言ってくれたのに怒っちゃうかな。でも、今は会いたくない…。
「Ｎ、こんな所に隠れて何してんの」
「…っ、トウヤ、君…」
「………何、泣きそうな顔して。何か嫌なことあった？」
「…いやな、こと……？」
嫌なことと言えば、トウヤ君とあの女の子を見て、よく分からない気持ちになった事。
なんで、どうして、分からないのが嫌だ。
思い出すとまたちくちく、心臓の辺りが痛くなる。
観覧車で、何を話したんだろうとか、僕といるより楽しかったんじゃないかとか、もう僕と一緒にいてくれないんじゃないか、とか。
「………ぼ、僕といて、楽しい…？」
「な、なに急に…」
「……あの子といるより楽しい？」
「誰、あの子って」
「…さっき、観覧車に一緒に乗ってた子…」
「………見てた？」
「え？…う、うん」
僕がそう肯定すると、トウヤ君は急に黙りこくってしまった。
な、何か変なこと言ったかな…？
「もしかしてさ、それで泣きそうだった…？」
「…え、泣きそうだったかは分からないけど…何か、心臓の辺りがちくちくして、嫌だった…」
「そっか」
「…どうしたの？」
「いや？あ、今更だけど遅くなってごめん」
「あ、ううん。大丈夫だよ」
何だろう。トウヤ君、嬉しそう。
少し、顔も赤いし。
「よし。じゃあ行くか。観覧車」
「え、良いの？さっき乗ってきたじゃない」
「俺はＮと乗りたいの。ほら、行くよ」
トウヤ君は手を差し出してきた。
繋いで、いいのかな。
迷っていたら、トウヤ君の方から僕の手を掴んできた。
いつの間にか、ちくちくする痛みは消えていた。
(Ｎでも、ヤキモチ妬くんだ！ヤバい、かなり嬉しい)
◎あとがき
春の観覧車イベント見たらこれは主♂Ｎ妄想するしかないな、と！後、トウヤ君に良い思いをさせたくて…^///^
セリフとか諸々は少し変えてます。話を回しやすくしたくて。
でも結局Ｎはヤキモチについて分かることはなく。
ここまで来たらどうせならちゃんとくっつくまで書きたい！
もう少しお付き合い下さいませ^^
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