あれから一週間。
あの後、逃げるようにして帰っていった。(どこかまでは分からないけど)
逃げるな、って俺言ったつもりだったんだけど。
それから、連絡をしようにも連絡先知らないし。
つかそれを一番に聞けば良かったんだけど、それより身体が先に動いてしまったんだから仕方がない。
「あー、暇」
今は特にやる事もないし、でもじっとしてもいられないしで、ヒウンシティまで出向いてみた。
相変わらず人の多い所だ。何で都会の人はこんなに人を避けて歩くのが上手いんだか。
あまりにも人が多いからポケモンを出して歩くのも躊躇われるし。
選択を失敗したかなあ。
それでも、途中でヒウンアイスを買って、セントラルエリアでポケモンたちと休憩したりでそれなりに満喫した。
ただ、アイスを食べてるときも、ポケモンたちと遊んでいるときも、あいつはどうしてんのかなあなんて考えてしまって、何だかそれは腹が立つから考えるのは途中で止めた。
「そろそろ帰るかー。お前たち戻れー」
互いに遊んでいたポケモンたちをボールに戻す。
このままそらをとぶで戻っても良かったんだけど、何か、少し歩きたくなった。
また、あの人混みの中を歩いていく。
「……ん?」
誰かに呼ばれた様な気がした。
振り返ってみても、忙しそうに歩く人たちだけだったけど。
「…トウヤ君っ!」
「うわ、N?」
「ひ、ひっ、久し振り、だね!」
どこから走ってきたんだろう、Nは頬を赤くして息を整えるように区切り区切り話した。
「…久し振りってこの前急いで帰ったのはお前だろ」
「………う、」
「俺、逃げるな、って言ったよな?」
最大限の笑みでNに問う。あ、と言った表情の後、サーッと次第に顔色が青くなるのが分かった。
「っと、ここじゃ邪魔だな。場所移そう」
「え、あ。うん」
俺たちがいるのは道のど真ん中。みんな上手く避けてはくれるけど、邪魔なのには変わりないだろう。
Nの腕を掴んで来た道を戻る。
「で、今までどこにいたの」
ベンチに腰掛け、何とかNにも隣に座らせて質問する。
「…あ、えっと、どこって訳じゃなくて色々な所に行って、たよ」
初めて会うトモダチもたくさんいて、たまに人とバトルしたりとかもした。とNは楽しそうに話す。
その姿に、少なからず安心する。ポケモンだとか、人と関わることを止めていなかったことに。
「人間といるトモダチは、みんな嬉しそうで、楽しそうだった。いいなあ、って思った」
「……」
「きっと、ああいう子たちがほとんどなんだって思ったよ。でも、だからこそ。僕が今まで関わってきたようなトモダチたちを同じようになって欲しいって思って、」
色んな所を回ってきたんだ、と柔らかい笑顔で。
「で、色々道具とかの補充をしようと思ってここに立ち寄ったんだ。そしたらトウヤ君を見つけたから」
「…あのさ、この前の事、覚えてないの?」
「え?」
「さっきも言ったけど。逃げるなとかそこら辺」
「………っ!!」
あーあー。今気づきました、みたいな顔。
結構、ショックなんですけど。
あれを忘れられてたとかどんだけ充実した日を過ごしてたんだっつの。
「う、や。違、うよ?忘れてた訳じゃないんだけど…トウヤ君を見たら、何か嬉しくなっちゃって…」
「……っちょ、何それ…」
「後、は、恥ずかしくて、その内容にしたくなかった、と言うか…」
よほど恥ずかしいんだろう。
今まできらきらした顔で話していたNが今はみるみる顔を赤くして、耳まで真っ赤だ。
つーか、俺を見かけて嬉しくなって忘れてたとかどんな殺し文句だよ!
「トウヤ君…?」
「はー…」
「ど、どうした、の…?」
「しょうがないから、忘れてたのは許してやる。だから、」
「だから…?」
「連絡先、教えろよ」
それでチャラにしてやる。
次からは連絡しまくってやる。
会いに行きまくってやる。
逃げたい、なんて思えないくらいに、俺を覚えさせてやる。
「…っはは、」
「…何だよ?」
「ううん。僕も、知りたかったから」
ふわりと、花のように笑うとはこの事なんだろうか。
まあ男に使うもんじゃないとは思うけど、それでもそうとしか形容出来なかった。
「じゃ今度連絡する」
「うん、」
「ちゃんと出ろよ」
「うん」
「じゃなきゃ地の果てまで追っかけるからな」
「……っ、は、はい……」
次に会うときは、こんな偶然でないよう。
◎あとがき
ぴくしにあげたもの2。
何か続きます^^
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