「ねぇ、今日何かあるの?」
今日4月14日。カレンダーを見る限り普通の日。なのに女子の盛り上がりが尋常じゃない。
不思議に思って隣りの席の謙也に聞いてみれば謙也が驚いた表情で私の方を向いてきた。何で?
「自分、今日何の日か知らんの?」
「…知らないから聞いたんだけど…」
私、何かおかしい事聞いたんだろうか?謙也の表情がやたらに強張っている。だから何で…?
「自分、好きなやつの誕生日も知らんのか?」
「好き…え、嘘!?」
声を潜めて私に囁いた内容はかなり衝撃的な内容だった。
あれ?え、白石の誕生日…?
嘘!いや私知らないよ!あれ、白石って来月じゃ?あ?え?
「嘘やないって。白石んとこ見てみ」
くいっと親指を向けた先は白石の席。昼休みな今、じっとはあれだからそっと盗み見るようにして眺めていれば…あぁ本当だ。何だかバレンタインの時みたいに女子が白石の机の前に立ってそれはまた可愛い包みを渡してはいそいそと去っていた。
…ホントだよ…
「…ホントに今日白石の誕生日なんだ…」
有り得ない。好きな人に何も渡すものがないなんて。大体5月14日って誰の誕生日だよ…
「…最悪…」
本気で有り得ない。泣きそう。
何だか力が入らなくなった私は机に突っ伏すはめになった。白石の机の方なんて見たくない。
「…自分、おめでとうくらい言ったらどうや…?」
「…」
うなだれまくっている私を慰めるように謙也の声が上から掛かる。
…でも、でもさ…好きな人の誕生日間違えてて、プレゼントもなくて、しかもメールも何も入れてない。
私、マイナスばっかりじゃん…朝とか白石と話したのに…
「今更だよホント…」
うなだれたまま、呟く。確か今日の獅子座の恋愛運は……あぁハート二個だった気がする…でも私の恋愛運は割れたハートだろうな…
「あ、白石」
「え!?」
悶々と机に突っ伏していた私の思考を遮ったのは謙也の言葉。して、私は即座に反応して顔を上げてしまった。なんて単純、なんて現金なんだろう。
一瞬はめられたのかと思いはしたものの、本当に謙也の席に白石がいたから更に私は驚いた。
や、やっぱりおめでとうくらいは…言おう、かな…?
「あ、白石」
「?…どしたん?」
「誕生日おめでとう」
「ん、あぁわざわざありがとう」
うわ、笑顔がヤバい。空気的に明らかにお前忘れてたろ的な感じなのにその笑顔って犯罪的じゃない。ヤバいヤバい。でも何だか恥ずかしくなって目をそらしてしまった。視界の端に見える謙也は…くそ、笑っていやがる…
「朝何も言われへんかったから忘れられたかと思ったで」
「ごめん知らなかったの私」
言われた言葉はグサッと来たが、朝何も言っていないというのがやはりマイナスポイント。正直に告げてみれば白石は苦笑いをしていた。
あー…何か悪い事した気分。何でかは分からないけど。
「そだ、白石欲しいものある?お小遣いで買えそうなものなら希望聞くよ」
どきどきする、正直。でも白石は私のこんなどきどきは知らないだろうな。私と白石の関係って、端から見ればただの友達にしか見えてないだろうから。
…だから告白なんて出来ないんだよね。もし失敗したらこうして気軽に白石と話せなくなっちゃうもん。
もどかしいばかりの思いは胸にあるけれど、こうして白石と話せるだけで…幸せだもん私。
だからあくまで友達。友達同士の自然なやり取りとして出した質問。
白石は立ってるから机に座っている私は見上げる形。何を言われるだろうとじっと見ていれば白石が屈んで目線を合わせて来た。
な、何…?
「ホンマに俺の欲しいもんくれるんか?」
「え…あ、う、うん…」
白石は私の事をじっと見てくる。じっと…え、何この空気?
見られても目をそらすなんてしちゃいけない気がするから見てるけど…え、なにこの緊張感。
白石の欲しいものって、何だろ…?
「俺な」
「う、うん……っ!」
「俺、自分の愛が欲しいねん」
何か何かと待っていた私。焦らすように呟く白石。何を告げるかと思っていれば彼は軽く私の肩を叩き、小さく耳元に呟く。吐息が耳に掛かって倒れてしまいそう、だ…
だけどそれ以上に、白石の言葉に私は固まってしまった。
え、あの、私の耳がおかしくなければ…愛って…言った?ヤバい、混乱する。
夢か幻か幻聴か。白石に救いのようなものを求める視線を向けると、それが私の夢でも幻でも幻聴でもない事を裏付けるようにまた呟かれた。
「俺の事、愛してくれへんか?」
Love me!!Want you!!
(私の事も、愛して下さい)
真っ昼間、しかも教室。
耳元に呟いてて周りには聞こえてないだろうがこんな場所で何て発言するんだと思ったけど、そんなので良いんなら幾らでもあげるよと舞い上がってしまった私はこくこくと頷く形だけど同意した。
すげぇ遅れました。気付いたらもうジローの誕生日まで終わってるとか何事ですか(笑)
一応ガックンのバニラで思い付いたもの。あんまりハピバって無い感じがあるようなないような。
愛しても云々な台詞を言わせたかったので、その台詞に無理矢理合わせたシチュエーションになりました。きっと無理がある(笑)
白石誕生日おめでとう!
2012.5.6.Sun
kirika@No more
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