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「ャっ、…セフィ……も、許し…っ!」






涙乍に訴えられた処で、
今更止めると思うか?







「言った筈だろうクラウド……此れは仕置きだ」






「っァ、あ……ゃア…――…ッ!」

























震える身体、切ない吐息



















発端は数時間前。


「此れは何だザックス」

部下の中でも非常にだらしない部類に入る黒髪の男の、此れもまただらしなく散らかったデスクの上に無造作に置かれた球体。



「んあ?見て解んね?コマンドマテリア」


「だから、何故此処にある」


相も変わらず此の男との会話は要領を得ない。
苛立ちを全面に推しだしながら二、三問い掛けた後。

「こないだ任務で行った洞窟の中に落ちてたんデスケド?オレ、こんなん要らないからアンタにやるよ」


面倒臭げに椅子に持たれ、足をデスクに乗せた儘。
ザックスは黄色く光る其のマテリアを俺に投げて寄越した。

再び一寝入りでもしようかと目論む猿。
うつらと瞳を閉じ掛けるそれに呆れの眼差しを遣りながら。



「何の、マテリアだ?」



俺が問い掛けると同時、ゆっくりと瞼を持ち上げザックスは嫌らしい笑みを此方に向けた。


「嗚呼、それ?実は………」
























「何考えてんのセフィロス?」


突然呼び掛けられた声。
正面から俺の顔を覗き込む空色の眼を持つ少年と視線が合い我に帰った。

自室、いつものソファに掛けながら少年を膝に抱き。
それはとても贅沢な事なのであろうが。



「嗚呼すまない……少し、な」


耳に掛かる金糸の束を掻き分けてやり其の儘耳元で囁いてやる。

しかし何時もならば此れだけの行為で甘く緩んだ瞳を向けるクラウドの、今日は少しばかり様子が違うらしい。



「……おれ以外の、人の事?」

見るからに不服そうな様子で眉間に深く皺を寄せ、哀しみとも苛立ちとも解釈出来る眼差しで。
クラウドは予想外の言葉を紡いだ。
僅かに震える身体は緊張の為か。



「莫迦な事を…。何故そう思う?」


「だって…はっきり答えて呉れないし………最近、おれと居てもよく考え事してる」



確かに物を考る頻度は以前より増したかもしれないが、それにしても一体何故其の方向に繋がるのか。


「莫迦な事を考えるな。俺が、お前以外に誰を思う?」


「嘘、おれなんかもう飽きたんだろ?子供だし、男だし……おれの代わりなんか幾らでもいるんだろ!?」


最早終わりの方は叫び声に近く成り。
どうも情緒が不安定な様子のクラウドは勢いに任せて膝の上から降り其の場へ立ち上がった。


「どうする気だ」


「………帰る」



一度言いだしたら聞かない。こうと決めたら曲げない強情な性格は如何にも時と場合を選ぶ。
潤んだ瞳で俺を見下ろし、一言呟くとクラウドは踵を返して扉へと歩み始めた。


「……待て」


少しは人の話を聞いたらどうだ。
溜め息を吐き、苛立ちと共に二の句を告げ様とした刹那。

後で外そうと、着けた儘に成っていた腕輪。
其処に黄色く光るマテリアが目についた。




「………クラウド」


魔が差した。
言い訳をすれば、たったの五文字。

しかし、お前が思っている以上に俺は気分を害したのだと。解らせてやる必要も在ったのが事実。



「何?もう放っておい………っ!?」


一度手に掛けたドアノブを離し乍、振り返り抗議の言葉を口にしようとしたクラウドだったが。


「……っァ、…な…に……っ?」



俺と視線を合わせた途端、一瞬びくりと身体を震わせた後、生気が抜けた様にカクンと其の場へ崩れ落ちた。

――此処まですんなりと効く物だとは、思わなかった――

身体に力が入らないらしく、弱々しく吐息を零しながら突如自分の身体に起きた異変を訝しがり不安の色を滲ませるクラウドは、愛玩動物にも似た愛おしさが有る。
簡単に、この手中に収まる脆弱さ。




「此れで話を聞く気に成ったか?」


糸の切れた人形の様にだらりと手足を投げ出した少年。如何にか瞳だけは動かせるらしく極度の不安からか彼方此方へ視線を遣りながら、そうして今度は震える唇が何事かを呟いた。



「な…に……した……の…?」



どうやら舌迄も動かし辛いか。
呂律の回らない口調で問い掛けるクラウドへ、笑みを向けて言い放って遣った。
そう、極上の笑みで。



「さあな?お前が余りに言う事を聞こうとしないからな………仕置きだ」



「………っっ!?」




驚愕に瞳を見開いたクラウド。
それと同刻に、腕のマテリアが妖しく光を放った。



「どうした?クラウド……」

具合でも悪いのか?
意地悪く笑ってみせながら扉の前で崩れるクラウドに歩み寄り、其の顎を捕らえ上向かせた。


「……せ…フィ…っ」


震える身体は恐怖によるものか。
切なげに吐息を零しながら、クラウドは何かに縋る様に俺の名を呼んだ。


しかし。


「…っ!!!?…ゃ、なに…っ…!?」


再び光るマテリア、合わせてクラウドの腕がゆっくりと持ち上がり己の上服に其の儘手を掛けた。

訳が解らないと言いたげに俺へ視線を向けるが、其の細い指先は意に反し勝手に己のシャツの釦を次々と外してゆく。



「何をしている?誘っているのかクラウド…?」


「ゃっ、ちが…!からだ……勝手、に…」



既に涙を一杯に溜めて、ハラリとシャツを脱いだクラウド。そして、次いで己のズボンのベルトに手を掛けた。

途端に喉の奥から引きつった声音が聞こえた。
訳が解らない感覚に支配される恐怖、クラウドはいよいよ涙を流し俺に助けを求め。



「ゃだ…っ、やだぁ……セフィ…ったすけ…て……」


言い乍も其の手は休む事無く己の衣服を段々と剥いでゆく。
カチャリと金属の音を鳴らし、抜き取られたベルト。
其の儘クラウドは下着ごと己のズボンを脱いだ。



「助けて…?可笑しな子だ。お前は、自分の意志でそうしているのだろう……?」


一糸纏わぬ姿を惜し気も無く曝け出すクラウドの、頬を伝う涙を舐め取りながら囁いた。
あまりの羞恥からか耳迄真っ赤に染め、自由の利かない身体を投げ出すクラウドは、俺の言葉に少なからず動揺を示した。



「…っく、…セフィごめ…なさ………っァ!?」


脅えた瞳を向けて謝罪の言葉を口にしようとしたクラウドであったが、瞬間其の瞳を見開き己の身体の異変を感じ取った。
大粒の涙の雫が一粒、眼から零れ。


俺は堪えきれずに噛み殺していた笑い声を漏らした。


続き


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