sleeping cat
部屋に帰るとソファで猫が寝ていた。雑種だが、ひどく美しい毛皮を纏った金色の子猫。
起こしてしまわぬよう静かにソファの前の床に腰を下ろす。安らかな寝息を立てるその小さな生きものにそっと手を延ばし頭を撫でれば小さく呻いて擽ったそうな顔をした。
起きる気配は、まだない。
(にゃあ、とでも泣きそうだな)
目を覚まさないのを良いことに、普段はあまり触らせてくれない柔らかな髪を堪能する。長い前髪を緩く掻き上げれば滑らかな頬が晒された。
小造りな顔は子供の曲線を残し、顔と同じく小さな身体を丸めて寝入る様は、本物の猫の様で可愛らしい。いつもこうだと良いんだが。
髪やら顔やらをいじられるので、いい加減気付いたらしい猫がうっすらと瞼を上げた。惚けたような寝起きのけだるさを感じさせる瞳が空間を彷徨い、こちらを認めてふ、と緩んだ。
「……おかえり」
「ああ、さっき帰った」
「もしかして、見てた?」
「見ていた。珍しくこんな時間から居眠りしていたからな」
起こしてくれれば良いのに、と拗ねて文句を言うのもまた愛らしい。横になったままの状態から手が延ばされ、首に絡んだ。
「……まだ眠い。一緒に寝よう?」
「誘いか?」
「……んなわけあるか」
せがまれるまま、軽い身体を抱き上げて寝室へ向かう。その短い時間でさえ子猫はすでに夢の中に入りかけていた。さすがに寝ているところを襲えば怒るだろうなと思案を巡らせる。
外はまだ明るく、愛を語り合うには少々早いようだ。
生意気な子猫と昼寝でもするとしようか。
END
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